2014-01-01から1年間の記事一覧
古代イスラエル人・ユダヤ人に伝わった神話や思想がまとめられた、言わずと知れたユダヤ教・キリスト教の正典。その一部はイスラム教の啓典にもなっている。 旧約聖書は、大まかに以下のような構成からなっている(今回読んだ新改訳に沿って分類した。ユダヤ…
探検家の角幡氏が、二度に渡ってツアンポー峡谷に挑んだ記録を描いたノンフィクション。 ツアンポー峡谷は、ツアンポー川がチベット高原を東に流れ、ヒマラヤ山脈の東端で南に旋回する場所に位置する、最大深度6000メートル以上、世界でもっとも険しいといわ…
東京外国語大教授の伊勢崎氏が、自身の経験をもとに、国連や国際協力ボランティアといった日本人に馴染みの深い国際貢献のあり方を問い直す本。 著者の伊勢崎氏は、インド留学中にスラム住民組織を立ち上げて当局と闘い、その後も大手の国際NGOや国連で紛争…
東京外国語大教授の伊勢崎氏が、東ティモールでPKOを指揮、またシエラレオネやアフガニスタンで武装解除を指揮した経験をもとに、自衛隊による国際貢献のあり方を考える本。 1990年代に入ってから自衛隊の海外派遣に関する議論が高まり、すでにイラクなどで…
内戦下のルワンダで国連PKO部隊司令官を務めたダレール氏が出演したNHK番組「未来への提言」を書籍化したもの。平和構築の分野で多くの実務経験を持つ東京外大教授の伊勢崎氏との対談、同教授による解説も付いている。 ダレール氏は現在、国会議員を務めつつ…
ジャーナリストのハッツフェルド氏が、ルワンダのジェノサイドに加害者として関わった人々の証言を集め、再構成した本。 数多刊行されているルワンダのジェノサイド本の中でも、本書は出色。類書ではほとんどカバーされていない加害者側の証言を、丹念に拾っ…
英国の歴史学者・ポンティング氏が、文明の起こりから現代に至る人類史を、自然環境や資源エネルギーの利用など「環境」の視点から解説する本。 本書は、かつて高度な祭祀文明を築きながら森林破壊によって衰退したイースター島についての挿話から始まる。お…
文明の「発展」要因を紐解いた『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』で知られるダイアモンド氏が、今度は文明の「滅亡」要因を分析する本。 ダイアモンド氏は、過去に起こった文明崩壊の要因として、①保有する自然環境・資源の脆弱性、②気候変動に…
生理学と進化生物学、生物地理学を研究するUCLAのダイアモンド教授が、人類史の発展が大陸間で異なる経路をたどってきた理由を分析する本。 ダイアモンド氏は、冒頭の命題に対する答えを、民族間の生物学的差異に帰する通説ではなく、あくまで地理環境的な要…
立教大学教授(当時)の粟屋氏らのグループが、異なる経緯を辿った日本とドイツが、それぞれ戦争責任をどう自覚し果たしてきたか、被害者への謝罪や補償をどう行ってきたか、両者の比較を通じて検証する本。 アジア諸国に対する日本の戦争責任は、もっぱら(…
大東文化大学の永野教授らの研究グループが、日本のアジア諸国への戦後賠償がどのように行われたか、賠償を含む経済協力がどのようにこれらの国々の経済発展に貢献したか、被賠償国ごとの事例を分析する本。 戦後日本の連合国に対する初期の賠償は、在外資産…
小説家の長塚氏が、自身の体験を元に、明治期のある貧農の厳しい暮らしを写実的に描いた小説。 学生時代にいちど読んだことがあるが、先日『日本の農業150年』という本を読んだのがきっかけで、再度読み直してみた。 茨城県は鬼怒川のほとり、文字通り地べた…
元太平洋セメント専務取締役、資源・環境ジャーナリストの谷口氏が、資源を見る上でのポイントや各鉱物資源の特徴、地球環境問題との関係等について概説した本。 冒頭で、資源問題を考える際のポイントを、①資源の枯渇性(掘ればなくなる)、②資源の地政学的…
ジャーナリストの門田氏が、東日本大震災の被害を受けて福島第一原発の吉田所長とそのチームがどう行動したのか、当時の様子を追ったルポルタージュ。 冒頭で断りが入るように、本書は原発の是非について論じるものではなく、「考えられうる最悪の事態の中で…
開発援助の専門家として林業やコミュニティ開発に携わる野田氏が、フィールドで働く開発ワーカーとしての心構えをまとめた本。 冒頭で、途上国における開発ワーカーの特徴として、①異なった社会背景の中に入る、②圧倒的な力を持つ、③他人の変化を望んでいる…
ジャーナリストの大原氏が、「余っている食べ物を、困っている人に」届けるフードバンクの試みについて、米国・日本での取材をもとに紹介する本。 製造や流通の過程で一般小売店には卸せないと判断された食品(中身は問題ないが、梱包していた段ボールの一部…
世界の珍妙な国・地域を紹介するウェブサイト「世界飛び地領土研究会」で知られるジャーナリストの吉田氏が、世界の珍妙な国・地域を紹介する本。 本書では、バチカン市国やナウルといった小国から、アトス山やソマリランドといった常識では判断しづない地域…
ハーバード大学の歴史学教授・ファーガソン氏が、金融制度の発達の歴史を、種の進化になぞらえて解説した本。 本書は、信用制度(通貨と信用)、債券市場、株式市場、保険、不動産市場、国債金融市場から成る6章から成っている。それぞれの金融制度がどのよ…
理論物理学者のインフェルト氏が、激動期のフランスで僅か20歳で命を散らした革命家にして、「ガロア理論」で知られる天才数学者、エヴァリスト・ガロアの生涯を描いた伝記。 伝記とはいえ、本人にまつわる記録が限られていることもあって、インフェルト氏が…
投資銀行、コンサル、資産運用会社、プライベート・エクイティと多様な職種を経験したキム氏が、世界のエリートの働き方の極意をまとめた本。 東洋経済オンラインの人気コラム「グローバルエリートは見た!の書籍化。2013年末をもって連載は終わってしまった…
かつてリン鉱石輸出によって栄えながら、その枯渇と放漫な財政運営によって破綻した南太平洋の島国・ナウルの歴史を描いたノンフィクション。 ナウルに初めて外国人がやってきたのは1798年。1896年にリン鉱石が見つかり、イギリス・ドイツ資本によって1907年…
英「The Economist」誌の編集者たちが、人口、経済、技術、科学といったそれぞれの担当分野について2050年の世界を予測する本。 この手の予測本はかなりの数が発行されていて普段は手にも取らないのだが、同誌のクオリティを知る読者の一人としてついつい購…
大阪府立大学教授(当時)の中尾氏が、世界の主な作物品種の起源とその栽培、加工や食法についてコンパクトに概説した新書。 農耕文化というと、農地制度や農耕儀礼など多くの要素を包含するが、本書は「種から胃の中まで」、純粋に作物と農業に関連する部分…
元農水官僚の山下氏が、既存の農政の問題点を指摘、減反廃止や一定規模の主業農家支援を軸とした構造改革の方向性を示した本。 本書の主張は、冒頭に記載されているこの一文に集約される: 「減反(生産調整)を段階的に廃止して米価を下げれば、コストの高…
丸紅経済研究所の柴田氏が、コメの大増産、そのための農政の転換の必要性を訴える本。 同氏は、主に逼迫する世界の穀物需給、コメ農家の後継者不足、耕作放棄地の増加などを背景として、食糧自給率の増加、つまりコメの「大増産」は、待ったなしの課題である…
経済ジャーナリストの財部氏が、生産・流通の先進事例への取材を通じ、日本農業のポテンシャルとあるべき方向性を論じた本。 同氏は本書で、消費者の視点をもって優れた農業ビジネスを展開している経営者や主業農家に着目、彼らがより容易に農地を借りられる…
農業経済学者の暉峻氏をはじめとする学識者グループが、日本の過去150年の農業史を概説した本。 本書に沿って、各々の時代の農業の特徴を大まかに要約すると、以下のようになる。 1 明治初期:租改正と秩禄処分を通じた旧領主階級の解体、その後の松方デフ…
ジャーナリストの石川氏による、青森県の農家・木村秋則氏が無農薬・無施肥でのリンゴ栽培に成功するまでの半生を描いたノンフィクション。 この本を最初に読んだのは今から5年ほど前だが、今回ふとした機会に改めて読んでみた。いまや木村氏とそのリンゴの…
『ルワンダ中央銀行総裁日記』で知られる元ルワンダ中央銀行総裁、元世界銀行副総裁の服部氏による、アフリカや開発援助についての論考集。 本書は、服部氏の没後に有志が散逸した同氏の論考をまとめたものであり、各編どうしのつながりがやや弱く、個別の主…
池上氏が日経BP社・JICAの企画でアフリカ諸国を往訪、取材した際の記録。 「アフリカビジネス入門」と銘打ってはいるが、じつは大半がJICA事業の紹介。とはいえ主に経済面でのアフリカの現状を分かりやすく知るうえで優れた入門書にもなっている。池上氏の語…