Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

2009-01-01から1年間の記事一覧

東野 圭吾 『容疑者Xの献身』

①本の紹介 ドラマ・映画でも知られる東野氏の「ガリレオ」シリーズ、3冊目にして初の長編。直木賞受賞作。かつての友人である天才数学者・石神が仕掛けた完全犯罪の謎に、主人公の物理学者・湯川が挑む。 ②印象に残ったパート 石神が思いを寄せるアパートの…

西川 潤 『人間のための経済学』

①本の紹介 従属理論で知られる開発経済学者・西川氏が1990年代の開発経済学の変遷について論じた論文を12本集めた。 ②印象に残ったパート 第3章、従来の近代化論と内発的発展論の対抗関係を4点にまとめる。「(1)近代化論の根本に経済成長論という経済一元…

絵所 秀紀 『開発の政治経済学』

①本の紹介 構造主義→新古典派→新制度派ら新しいアプローチ、と開発経済学が戦後誕生間もないころから辿ってきた変遷を丁寧に追った解説書。 ②印象に残ったパート 2ページ目の図「開発経済学の変遷」、本書の概要がざっくりひとつの表にまとめられている。 14…

城山 三郎 『官僚たちの夏』

①本の紹介 1960年代、海外から「Notorious MITI」と揶揄された通産省を舞台に、異色の大物官僚・佐橋滋氏をモデルとした主人公「ミスター通産省」風越と、政策をめぐる政財界との争い、省内人事の攻防を描く。 ②印象に残ったパート 物語の冒頭で、主人公・風…

ジャック・ケッチャム 『隣の家の少女』

①本の紹介 米国ホラー界の奇才が、実在した事件をもとにつづるサスペンス小説。主人公ディヴィッドの隣のチャンドラー家に引き取られてきた少女メグが、チャンドラー親子によって虐待・死に追い込まれていくさまを、傍観者としての視点から精緻に綴っていく…

山形 浩生 『訳者解説 新教養主義宣言リターンズ』

1.本の紹介 クルーグマンやロンボルグの翻訳で知られる山形氏の訳本に付された「訳者解説」を14冊分集めた本。山形氏の翻訳に対する姿勢や考え方が透けて見える。 2.印象的なパート 冒頭でいきなり山形節が炸裂する。「新聞雑誌で書評と称するものを書い…

三ツ谷 誠 『少年ジャンプ資本主義』

①本の紹介 かつて週間誌売上最多記録(約650万部)を記録したマンガ雑誌・「少年ジャンプ」。その掲載作品を、戦後日本経済の移ろいと重ね合わせて論考する。著者は企業・経済動態コラムニストの三ツ谷氏。 ②印象的なパート 少年ジャンプが創刊以来採用し続…

羽海野 チカ 『ハチミツとクローバー』

①本の紹介 恋愛あり、コメディあり、自分探しあり、美大に通う5人の男女が織り成す群像劇。アニメも映画にもなった、押しも押されぬ2000年代の大ヒット・コミック。 ②印象に残ったパート 第6巻、真山がなかなか脱ぎ捨てられない「青春スーツ」。設計事務所の…

満田 拓也 『MAJOR』

①本の紹介 「週刊少年サンデー」最長連載記録更新中、現代野球漫画の金字塔。悲劇のプロ野球選手を父親に持つ少年・茂野吾郎が、リトルや中学・高校、メジャーで活躍していく様子を描き出す。 ②印象に残ったパート 宿敵・ギブソンとの壮絶な投げ合いを終えて…

山際 淳司 『スローカーブを、もう一球』

①本の紹介 1995年に惜しまれつつ没した名ノンフィクション作家・山際氏のデビュー作。野球ファンの中ではあまりにも有名な、1979年日本シリーズ最終戦の攻防を描いた「江夏の21球」(「Number」誌創刊号に掲載)を所収。 ②印象に残ったパート 本書には書名と…

米原 万里 『打ちのめされるようなすごい本』

①本の紹介 2006年に惜しまれながら没したロシア語通訳・エッセイストの米原氏による最初で最後の書評録。同氏の広範なジャンルにわたる多読ぶりと、ストレートな書評の数々に思わず「打ちのめされる」本。 ②印象に残ったパート 本書で紹介されている本のうち…

ダンビサ・モヨ 『Dead Aid』

①本の紹介 ハーバードとオックスフォードで経済学を学んだ気鋭のエコノミスト・モヨ氏による開発論。政府にアカウンタビリティの欠如と腐敗をもたらず既存の開発援助は不要、債券発行やFDIを通じた内外の金融市場からの資金調達によって代替されるべき、…

平野 克己 『アフリカ問題 開発と援助の世界史』

1. 本の紹介 『図説アフリカ経済』等で知られるアジア経済研究所の平野氏による新刊。開発経済学、政治学の視点から、2009年現在のアフリカ問題の深層と、あるべき開発援助事業の姿について提言する。 2. 印象に残ったパート 第3章「アフリカ農業とリカード…

石 弘之 『キリマンジャロの雪が消えていく アフリカ環境報告』

読んだままブログで紹介し切れていない本が100冊近くになってしまいました・・・どうしてもブログを書く時間がなかなか取れないのが悩みです。スピードアップを図るために、試行的に当面の間、①本の概要、②印象に残ったパート、③読後の感想、に絞って書い…

ワリス・ディリー 『Desert Flower』

FGM(女性器切除)の廃絶に向けた運動を続けている元スーパー・モデル、ワリス・ディリー氏の自伝。事実は小説より奇なり。日本人には絶対に書けない文章です。初めて手に取ったのはアジアを旅行中の学生時代、タイの本屋で。当時は英語の文章を読むのが今よ…

カレル・ヴァン・ウォルフレン 『日本/権力構造の謎』

社会人になってから、「学生時代にこそ読んでおけばよかった」と思わされる本に出会うことが、しばしばあります。この本もそのうちの一つ。ある特定の集団の社会や政治について議論するとき、えてして外部者のほうが本質を突く主張を展開するもの。文庫本裏…

ウィリアム・イースタリー 『エコノミスト 南の貧困と闘う』

元世界銀行エコノミストのニューヨーク大学教授、イースタリー氏が従来の開発経済学の理論と欧米の開発援助手法の限界について記した本。彼の主張は明快で、「人はインセンティブに反応する」という人間の本性・経済学の基本原理を活かすような開発政策を展…

伊勢崎 賢治 『武装解除 紛争屋が見た世界』

シエラレオネやアフガニスタンで兵士の武装解除オペレーションを指揮した経験を持つ自称「紛争屋」伊勢崎氏が、自身の経験や、紛争介入・復興支援・開発協力に対する考えをまとめた新書。近年の紛争後地域でのオペレーションで重責を担った当事者による言葉…

ジャン=ピエール・ボリス 『コーヒー、カカオ、コメ、綿花、コショウの暗黒物語』

われわれが普段何気なく口にするコーヒーやチョコレート。その原料となるコーヒー豆やカカオ豆がどのように生産・取引されているのか。グローバリゼーションの陰で生産者がどのような苦痛を被ってきたのか。利益が一部の多国籍企業や投資ファンドに集中する…

本田 直之 『レバレッジ時間術』

経営コンサルタント・本田氏による「レバレッジ」シリーズの時間編。同氏が冒頭で述べているとおり、全ての資源のなかで一番重要なものは「時間」に他ならない。その時間をいかに「消費」から「投資」に変えるか、心構え・ノウハウを述べた本。 2007年に購入…

森村 泰昌 『超・美術鑑賞術/お金をめぐる芸術の話』

セルフ・ポートレイトで知られる美術家・森村氏の近著。もともとNHK『人間講座』のテキストとして書かれた『超・美術鑑賞術』と、2008年2月に森美術館で行った講演会の内容をまとめた『お金をめぐる芸術の話』の二編から成る。 特に面白かったのは前者の『超…

ヤン・ソギル 『闇の子供たち』

タイを舞台に幼児売春や臓器売買の実態を描くフィクション。本作を原作とする映画が2008年9月のバンコク国際映画祭での上映を中止されるなど、その衝撃的な内容が話題となった作品。 全編を通じて登場するタイ山岳地帯に住む少数民族の姉妹が、本作の主題を…

小野 節子 『女ひとり世界に翔ぶ 内側から見た世界銀行28年』

元・世界銀行シニアアドバイザーの小野氏が、自身の世界銀行での半生を自伝形式で振り返ったエッセイ。世界銀行という組織がどのような仕事を行っているのか、通常日本で暮らしているだけではなかなか見えてこない。博士号取得後に入行し、生え抜きの職員と…

浦沢 直樹 『20世紀少年/21世紀少年』

『MONSTER』や『PLUTO』で知られる浦沢氏が、自伝的要素も絡めつつ、1970年代に主人公の少年たちが作った「よげんの書」どおりに翻弄される世界と混乱に立ち向かう主人公たちを描いたサスペンス長編。『MONSTER』よりは現実性が薄れ、カリスマ宗教指導者「と…

浦沢 直樹 『MONSTER』

現代漫画界の巨匠・浦沢氏が世に放ったスリラー・サスペンス。西ドイツ・チェコなどを舞台に、かつて命を救った連続殺人鬼・ヨハンのルーツを、日本人の天才外科医・天馬が暴いていく様子を描いた長編。 雑誌掲載時にリアルタイムで読んでいたものの、今回再…

堀田 力 『堀田力の「おごるな上司!」人事と組織の管理学』

もと法務省大臣官房人事課長、官房長などを歴任した弁護士・堀田氏による企業・官庁の管理職向けの警句集。発行は1994年だが、内容はまったく古びていない。いつの世も上司にとっての部下マネジメントは悩ましい課題であることを、教えてくれる本。 1.「作…

帚木 蓬生 『アフリカの瞳』

職場の異動でドタバタし、ずいぶん長いことご無沙汰してしまいました。読んだままこちらに記事をアップしていない本がたくさんあります・・・徐々に更新していきます。 さて、南アフリカ共和国のエイズ渦を題材に、日本人医師・作田が、政府が喧伝する国産抗…

東京大学教養学部英語部会 編著 『東大英単』

東京大学教養学部の教授陣が280の英単語を選び、豊富な例文・活用例・練習問題とともに収めた英単語帳。日常的に英語に触れる必要のある職業の方や大学生を主な対象として、読み書きのための語彙力を身につけるために編集された本で、冒頭でも「受験参考書で…

白川 正明 『現代の金融政策 理論と実際』

現日本銀行総裁の白川氏が京大教授時代に著した中央銀行の金融政策についてのテキスト。単行本で445ページと分厚さがありますが、各章の記述は明快。 「そもそも中央銀行とは何か」から、今後の中央銀行の役割についての展望まで。これ一冊に目を通せば、金…

ジェラルド・カーティス 『政治と秋刀魚 日本と暮らして45年』

日本の政治・外交、日米関係を専門とするコロンビア大学教授カーティス氏による新著。同氏初の日本語での著作。40年以上に及ぶ日本との関わりを通じて、同氏が日本の政治や外交について考えたことがコンパクトに盛り込まれた単行本。 ある個人や集団が第三者…