Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

2013-01-01から1年間の記事一覧

真山 仁 『コラプティオ』

『ハゲタカ』や『ベイジン』で知られる真山氏による、震災後の架空の日本政治とカリスマ宰相のリーダーシップ、その虚構と腐敗を描いた小説。 震災後の日本で、ビジョンと巧みな弁舌によって立て続けに復興政策を立案し、圧倒的な国民的支持を受けて総理に上…

平野 克己 『経済大陸アフリカ 資源、食糧問題から開発政策まで』

『アフリカ問題 開発と援助の世界史』などで知られるアジア経済研究所の平野氏が、現在のアフリカ経済の概況について分かり易くまとめた新書。 アフリカに対する世界からのポジティブな視線は近年とみに顕著であり、2013年に入って英エコノミスト誌は「希望…

緒方 貞子 『紛争と難民 緒方貞子の回想』

1991年から2002年まで国連難民高等弁務官を務めた緒方氏による在任当時の回顧録。イラク北部、バルカン、アフリカ大湖地域、アフガンの4地域に焦点をあて、人道問題の課題と展望を分析する。 冷戦終結後、世界各地で数多く勃発した人道危機に対応すべく、緒…

ジャクリーン・ノヴォグラッツ 『ブルー・セーター』

社会起業家への投資を通じて貧困問題に取り組むアキュメン・ファンドの創立者で現CEOのノヴォグラッツ氏が、「市場と慈善の中間」という現在のアプローチに至るまでの半生を綴った自伝。 アキュメン・ファンドは、公衆衛生、農業、給水といった分野において…

A・V・バナジー、E・デュフロ 『貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える』

MIT教授のバナジー氏とデュフロ氏が、ランダム化比較実験(RCT)と呼ばれる研究手法をもとに、貧困者の生活行動やインセンティブの観点から、貧困削減についての新たな処方箋を提示しようとする本。 本書の主張は、「開発援助か市場メカニズムか」といったサ…

カトゥリ・メリカリオ 『平和構築の仕事 アハティサーリとアチェ和平交渉』

フィンランド人ジャーナリストのメリカリオ氏が、2005年合意に至るまでのアチェ和平交渉と、その中で仲介役のアハティサーリ・前フィンランド大統領が果たした役割を描いたノンフィクション。 1976年の創設以来、自由アチェ運動(GAM)は30年近くに渡って独…

鈴木 裕之 『ストリートの歌 現代アフリカの若者文化』

文化人類学者の鈴木氏が、コートジボワール・アビジャンのストリートで見られる若者文化について、自ら現地で体験し、調査した結果をまとめた本。 本書のユニークな点は、鈴木氏自身が「あとがき」で「学術的データと個人的体験の双方を、あるいは両者の中間…

行成 薫 『名も無き世界のエンドロール』

小学校時代からの腐れ縁、ドッキリが生き甲斐のマコトと、それにやられてばかりの城田が、ある秘密の意図をもって史上最大の「プロポーズ大作戦」を仕掛けていく様子を描いた小説。小説すばる新人賞受賞作。 2013年初めに出たばかりの本で、当方全然知らなか…

有川 浩 『県庁おもてなし課』

『図書館戦争』などで知られる有川氏が、実在する高知県庁おもてなし課を舞台に、地元の観光振興に奔走する若手県庁職員の奮闘と恋を描いた小説。 当方の地元の高知県が舞台ということで、同僚から進められて読んでみた。著者の有川氏も高知県出身ということ…

高野 秀行 『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』

『ワセダ三畳青春記』などで知られる作家の高野氏が、ソマリランド、プントランド、そして南部ソマリアで取材した内容を綴ったルポルタージュ。 「これ以上面白いノンフィクションはもう二度と読めない」という帯のキャッチコピーどおり、ソマリアに単身乗り…

加賀 隆一 編著 『プロジェクトファイナンスの実務』

国際協力銀行のプロジェクトファイナンス部長(当時)である加賀氏を中心に、実際に同業務に携わる実務者たちが、その概要と実務上のポイントについて解説した本。 当方は実際にプロジェクトファイナンスの組成や、そうしたプロジェクトに直接関わったことは…

椎名 軽穂 『君に届け』

陰気な見かけだが頑張り屋の爽子と、爽やかで明るいが奥手な風早が、不器用ながらも互いの気持ちを通わせて行く様子を描いた、北海道の高校を舞台にした恋愛コミック。 しばらく離れている間に日本では大ヒットになって映画化までされているらしく、あまりに…

玉真 俊彦 『水ビジネスの教科書 水サービスを発展させる官民協働と業務改善の進め方』

NJS経営工学研究所などで上下水道の技術・経営に長く関わってきた玉真氏が、世界の水問題や国内外の水ビジネスの現状と展望を、一般向けに平易に解説した本。 上下水道の分野では、長年にわたって地方自治体が大きな存在感を見せているが、近年国内でも民営…

P・クリスフリ、A・レドモンド 『Rwanda Inc.』

「アフリカの奇跡」と形容されるジェノサイド以降のルワンダの経済発展と、それを成したカガメ現大統領のリーダーシップについて描いたノンフィクション。 著者は米国人ジャーナリストと経営コンサルタントだけあって、偏ったイデオロギーやややこしい経済理…

ジェフリー・サックス 『地球全体を幸福にする経済学 過密化する世界とグローバル・ゴール』

国連顧問のコロンビア大学教授であるサックス氏が、前著『貧困の終焉』からより一歩進んで、貧困のみならず環境、人口、そしてそれを可能にするグローバルな協調体制といった世界の問題について包括的な処方箋を示そうと試みた本。 前著『貧困の終焉』で同氏…

ウィリアム・イースタリー 『The White Man's Burden』

『エコノミスト南の貧困と闘う』で知られるニューヨーク大学のイースタリー氏が、過去の途上国への開発援助を批判し、開発における個人や市場インセンティブの重要性、今後の援助のあるべき姿について語った本。 開発援助から安直な「資金ギャップ・アプロー…

川島 良彰 『コーヒーハンター 幻のブルボン・ポワントゥ復活』

世界各地のおいしいコーヒーを追い求めるコーヒーハンターとして知られる川島氏が、レユニオン島の幻のコーヒー「ブルボン・ポワントゥ」を復活させた経験を中心に、自らの半生を描いた本。 川島氏の略歴の詳細は上記のリンクを見てもらえば良いが、高校卒業…

友成 晋也 『アフリカと白球』

アフリカ野球友の会の代表である友成氏が、1996年から99年にかけてガーナのナショナル野球チームを監督として率いた経験を描いた本。 同氏がガーナに駐在員として赴任したのが1996年、青年海外協力隊との親善試合で出会った自称ガーナナショナルチームを、ひ…

オーギュスト・エスコフィエ 『エスコフィエ自伝 フランス料理の完成者』

近代フランス料理を確立した名料理人、オーギュスト・エスコフィエ氏の自伝。 19世紀から20世紀に至る激動のフランスにあって、今日のフランス料理の基礎を形作るさまざまなレシピを考案したほか、フランス料理の興隆につとめ、英国王や独皇帝からも愛された…

ジョエル・ロブション 『ロブション自伝』

現代フランス料理の旗手、史上最短でミシュラン三ツ星に輝いたジョエル・ロブション氏の自伝。 1980年以降のフランス料理は、ヌーベル・キュイジーヌの後を受け、素材の味を活かしながらも、古典への回帰と最新の調理技術を特徴とした、いわゆる「キュイジー…

河辺 一郎 『国連と日本』

国連問題と日本外交を研究してきた愛知大学の河辺氏による、主に国連での投票活動実績から、日本の国連外交を批判的に分析した新書。 1994年発行という本書の発行時期を差し引いて捉える必要はあるが、河辺氏によれば、国連における日本の投票活動から見えて…

明石 康 『国際連合 軌跡と展望』

元国連事務次長の明石氏が、国連の歴史や機構、活動について分かりやすく解説した新書。 何度も改訂が重ねられているロングセラーとあって、国連を知るための基礎知識がまんべんなく網羅されており、読みやすい。それはそれで残念な部分でもあるが、明石氏個…

最上 敏樹 『国連とアメリカ』

ロングセラー『人道的介入』で知られる最上氏が、国連とアメリカの関係を国際連盟創設期までさかのぼり、両者の相克、今後の展望をまとめた新書。 最上氏の問題意識は、ブッシュ政権下のアメリカの国連への敵対的な姿勢、より概念的に言えば「帝国」と「多国…

最上 敏樹 『人道的介入 正義の武力行使はあるか』

国際法と国際機構論を専門とする最上氏が、人道的理由をもって個別国家が武力行使を行う「人道的介入」について、過去の経緯や、現状の論点についてまとめた新書。 個別国家が人道上の理由によって独断で(当事国の同意なしに)他国に軍事介入した事例は、そ…

イマキュレー・イリバギザ 『生かされて。』

ルワンダのジェノサイドを、隣人のトイレで100日間に隠れ生き延びた、ツチ族の少女による手記。 イリバギザ氏は、ルワンダ西部のムタバ村で、地元のツチ族有力者の元に生まれ育ち、1994年のジェノサイドを学生時代に迎えた。虐殺勃発後、兄の機転により、近…

レヴェリアン・ルラングァ 『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』

1994年のルワンダのジェノサイドで、家族全員を殺され、自身も瀕死の重傷を負って生き延びた青年による、自身の半生を描いた手記。 ルラングァ氏は、首都キガリの南方・ムギナの丘で生まれ育ち、15歳の時にジェノサイドに遭遇した。家族親戚とともに小屋の中…

ロメオ・ダレール 『なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか PKO司令官の手記』

1994年のジェノサイド当時にルワンダに駐留していたPKOの司令官・ダレール氏による当時の詳細な回顧録。 当時の国連とPKOのルワンダのジェノサイドへの対応については、関係者の間では否定的な見方がもはや定説となっている。当時ホテル・ミル・コリンの支配…

青山 潤 『アフリカにょろり旅』

東大海洋研究所でウナギの生態を研究する青山氏が、アフリカでラビアータ種の採集を行ったときの様子を描いたエッセイ。 アフリカにウナギを採集しに行く、と言ってしまえばそれまでだが、その実際たるや、凄まじい。世界に冠たる東大のウナギ研究者チーム…

牛山 隆信 『もっと秘境駅へ行こう!』

牛山氏『秘境駅へ行こう!』の続編として、前著で紹介しきれなかった秘境駅を、海に近い駅、渓谷美を楽しめる駅、古い駅舎のある駅など、幾つかのテーマ毎に分けて紹介した文庫。 前著でも、室蘭本線の張碓駅に冬山登山ばりのラッセルをしながら徒歩で到達す…

牛山 隆信 『秘境駅へ行こう!』

秘境駅訪問家の牛山氏が、同氏が運営するウェブサイト「秘境駅へ行こう!」の内容を元に、日本全国の主な秘境駅をコンパクトに紹介した文庫。 それなりの経緯あって駅が設置されたものの、僻地のため利用者が殆どおらず廃墟同然のようになっている駅、そもそ…