Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

開発

栗田 匡相 ほか 編著 『日本の国際開発援助事業』

日本の国際開発援助(ODA)事業の現状と展望について、研究者による複数の論考をまとめた本。2012年まで行われた関西学院大学産業研究所の共同研究の成果をまとめたもの。 1.理論・背景(全体、アジア、アフリカ)、2.ハード・インフラ(エネルギー、水…

永野 慎一郎、近藤 正臣 『日本の戦後賠償 アジア経済協力の出発』

大東文化大学の永野教授らの研究グループが、日本のアジア諸国への戦後賠償がどのように行われたか、賠償を含む経済協力がどのようにこれらの国々の経済発展に貢献したか、被賠償国ごとの事例を分析する本。 戦後日本の連合国に対する初期の賠償は、在外資産…

野田 直人 『開発フィールドワーカー』

開発援助の専門家として林業やコミュニティ開発に携わる野田氏が、フィールドで働く開発ワーカーとしての心構えをまとめた本。 冒頭で、途上国における開発ワーカーの特徴として、①異なった社会背景の中に入る、②圧倒的な力を持つ、③他人の変化を望んでいる…

服部 正也 『援助する国される国:アフリカが成長するために』

『ルワンダ中央銀行総裁日記』で知られる元ルワンダ中央銀行総裁、元世界銀行副総裁の服部氏による、アフリカや開発援助についての論考集。 本書は、服部氏の没後に有志が散逸した同氏の論考をまとめたものであり、各編どうしのつながりがやや弱く、個別の主…

ジャクリーン・ノヴォグラッツ 『ブルー・セーター』

社会起業家への投資を通じて貧困問題に取り組むアキュメン・ファンドの創立者で現CEOのノヴォグラッツ氏が、「市場と慈善の中間」という現在のアプローチに至るまでの半生を綴った自伝。 アキュメン・ファンドは、公衆衛生、農業、給水といった分野において…

A・V・バナジー、E・デュフロ 『貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える』

MIT教授のバナジー氏とデュフロ氏が、ランダム化比較実験(RCT)と呼ばれる研究手法をもとに、貧困者の生活行動やインセンティブの観点から、貧困削減についての新たな処方箋を提示しようとする本。 本書の主張は、「開発援助か市場メカニズムか」といったサ…

ウィリアム・イースタリー 『The White Man's Burden』

『エコノミスト南の貧困と闘う』で知られるニューヨーク大学のイースタリー氏が、過去の途上国への開発援助を批判し、開発における個人や市場インセンティブの重要性、今後の援助のあるべき姿について語った本。 開発援助から安直な「資金ギャップ・アプロー…

前田 充浩 『金融植民地を奪取せよ ジリ貧日本を救う「投資パラダイス」の発想』

前著『国益奪還』で日本のタイド円借款が国際規制の対象となっていった過程を明らかにした前田氏が、現代の新興国のインフラ整備のための日本の開発ファイナンスのあり方を論じた本。 本書の議論の前提は、開発ファイナンスと投資の「ハイパー・サイクル」に…

松井 謙一郎 『パリクラブ 公的債務リスケ交渉の最前線で』

パリクラブは、公的債務(債権者が公的機関)のリスケに関する条件交渉を行う非公式会合で、仏財務省が主催、リスケの方法論などを検討する一般問題会合、個別債務国にかかる情報交換・対応方針決定を行う一般概観会合に加え、債務国からの要請に応じて個別…

ポール・コリアー 『Wars, Guns, and Votes: Democracy in Dangerous Places』

前著『The Bottom Billion』の2年後に、コリアー氏が同地域における政治的暴力の問題に焦点を絞って世に出したのが本書。前著の内容でいうと、「紛争の罠」とそれを解決するための「軍事介入」「法と憲章」をより詳しく掘り下げた印象がある。 同氏はまず、…

ポール・コリアー 『The Bottom Billion: Why the Poorest Countries Are Failing and What Can Be Done About It』

オックスフォード大の政治経済学者・コリアー教授が「The bottom billion(最底辺の10億人)」の現状と対応策をまとめた本。以前ぱら読みして放っておいたのを、少し時間が出来たのでもう一度じっくり読んでみた。 本書は、現代世界の貧困や紛争を考える上で…

原 雅裕 『西アフリカの教育を変えた日本発の技術協力』

ニジェールで2004~2006年にかけて実施された日本の技術協力「みんなの学校プロジェクト(住民参加型学校運営改善計画)(http://www.jica.go.jp/project/niger/6331038E0/ )」のチーフアドバイザー・原氏の記録。 2003年にニジェール政府と世界銀行によっ…

世界銀行 『World Development Report 2008: Agriculture for Development』

世界銀行が毎年発行している世界開発報告(World Development Report)の2008年版、テーマは「開発のための農業」。開発のうえで農業がもつポテンシャルをデータで示した上で、貿易・価格・補助金政策、農業の市場化、自作農の競争力強化、科学技術の適用、…

西水 美恵子 『国をつくるという仕事』

元世界銀行副総裁の西水氏が、借入国の指導者や市井の人々とのやり取りを中心に、在職中の経験を綴ったエッセイ。「国づくりは人づくり。その人づくりの要は、人間誰にでもあるリーダーシップ精神を引き出し、開花することに尽きる」と言っている。 西水氏の…

白井 早由里 『マクロ開発経済学 対外援助の新潮流』

もとIMFの慶大教授・白井氏が、近年の研究や対外援助の潮流を踏まえ、マクロ経済学上の開発の問題について論点をまとめた本。この分野における近年の研究者や世界の援助機関の考え方について手っ取り早く勉強しようと思えば、日本語の文献の中ではこの本が最…

西川 潤 『人間のための経済学』

①本の紹介 従属理論で知られる開発経済学者・西川氏が1990年代の開発経済学の変遷について論じた論文を12本集めた。 ②印象に残ったパート 第3章、従来の近代化論と内発的発展論の対抗関係を4点にまとめる。「(1)近代化論の根本に経済成長論という経済一元…

絵所 秀紀 『開発の政治経済学』

①本の紹介 構造主義→新古典派→新制度派ら新しいアプローチ、と開発経済学が戦後誕生間もないころから辿ってきた変遷を丁寧に追った解説書。 ②印象に残ったパート 2ページ目の図「開発経済学の変遷」、本書の概要がざっくりひとつの表にまとめられている。 14…

ダンビサ・モヨ 『Dead Aid』

①本の紹介 ハーバードとオックスフォードで経済学を学んだ気鋭のエコノミスト・モヨ氏による開発論。政府にアカウンタビリティの欠如と腐敗をもたらず既存の開発援助は不要、債券発行やFDIを通じた内外の金融市場からの資金調達によって代替されるべき、…

ウィリアム・イースタリー 『エコノミスト 南の貧困と闘う』

元世界銀行エコノミストのニューヨーク大学教授、イースタリー氏が従来の開発経済学の理論と欧米の開発援助手法の限界について記した本。彼の主張は明快で、「人はインセンティブに反応する」という人間の本性・経済学の基本原理を活かすような開発政策を展…

小野 節子 『女ひとり世界に翔ぶ 内側から見た世界銀行28年』

元・世界銀行シニアアドバイザーの小野氏が、自身の世界銀行での半生を自伝形式で振り返ったエッセイ。世界銀行という組織がどのような仕事を行っているのか、通常日本で暮らしているだけではなかなか見えてこない。博士号取得後に入行し、生え抜きの職員と…

中田 豊一 『人間性未来論 原型共同体で築きなおす社会』

近代化がもたらす「人間性の喪失と共同体の衰退」について、途上国の共同体が持つ「豊かな人間性」と対比させながら論じるエッセイ。著者は、途上国での開発支援を担うNGO・シャプラニールの代表理事などを務める中田氏。 「援助者の側がまず克服しなくては…

林 俊行 編 『国際協力専門員 技術と人々を結ぶファシリテータたちの軌跡』

JICA(国際協力機構)に所属する海外技術協力の専門家「国際協力専門員」12名によるエッセイ集。彼らが仕事を始めるに至ったきっかけ、技術協力の現場での仕事の内容、同業者に伝えたい「心がけ」について、濃いメッセージが350ページにわたって記されていま…

ジョン・パーキンス 『エコノミック・ヒットマン』

1970年代に米国コンサルタント会社・メーン社に勤めたパーキンス氏によるノンフィクション。世界銀行やUSAID(米国援助開発庁)が実施する調査・融資案件に携わった経験をもとに、電力・道路・通信などの分不相応なインフラ案件を途上国政府から米国企業に発…

大野 健一、大野 泉 『世界銀行と IMF  内側からみた開発金融機関 』

元IMF(国際通貨基金)エコノミストの大野健一氏と元世界銀行オフィサーの大野泉氏氏による、両機関の組織文化やオペレーションについて「内側」の視点から書かれた数少ない日本語の本。学生時代から時折パラパラ読んでいたものをこのたび読了。 経済金融の…

和氣 邦夫 『ユニセフではたらこう』

ユニセフに長年勤めた国際公務員・和氣氏の回顧録。世界の現状やユニセフのオペレーションについてのテクニカルな事項は少なく、同氏の日常業務や海外での家族同伴生活の気苦労などについて、平易な言葉で描かれています。それはそのまま、「次世代の日本人…

原 洋之介 『開発経済論』

東大農学部出身で、以降アジア地域をメインに農業経済・開発経済の研究を続けてこられた東大教授・原先生による開発経済学の入門書。家の本棚に眠っていたものを読了。 既に確立した学問領域として成り立っているミクロ経済学やマクロ経済学と違い、研究者に…

奥田 英信、生島 靖久、三重野 文晴 『開発金融論』

会社の前任者に強く推薦されて購入。途上国の金融部門についての主だったトピックが、マクロ経済との連関、企業金融、マイクロファイナンス、インフラファイナンスに至るまで、幅広く取り上げられています。一般向けの本というよりは学術書ですが・・・。 そ…

草野 厚 『日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか』

タイトルに釣られてついつい買ってしまいました。新書のネーミングって大事ですね~ 草野さんは、日本戦後外交や政策過程論が本職の政治学者。最近はODAがらみの著書も多く、開発援助業界に関する力学についてはかなりお詳しい方。と思われます。自分はお会…