Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

2010-01-01から1年間の記事一覧

佐々木 俊尚 『グーグル Google 既存のビジネスを破壊する』

IT業界の報道で有名なジャーナリスト・佐々木氏によるグーグル社についての報告。これも本棚を整理していて出てきた本で、初版は2006年だが、同社のコアビジネスの概要を的確に捉えており参考になる。 163ページの図「グーグルのビジネス構造」はとても分か…

藤原 正彦 『国家の品格』

近年日本でも幅を利かせる欧米型の「論理と合理」にかえて、日本古来の「情緒(懐かしさ、もののあわれ)」や「形(武士道精神)」の価値観を取り戻すべき、と説く数学者の藤原氏による2005年発売のベストセラー。昔の本棚の整理していて出て来たもので、再…

チャールズ・R・C・シェパード 『サンゴ礁の自然誌』

サンゴ礁とサンゴを含む生態系について、サンゴ礁学(生物学と地質学がベース)からの一般向け解説。原著発行が1983年と古いが、サンゴ礁について包括的に概説した類書はあまりない。(白黒が多いのが残念だが)写真がたくさん収録されている点もお勧め。 「…

大江 正章 『地域の力―食・農・まちづくり』

ジャーナリストの大江氏による、農林業や公共交通、商店街の活性化など、全国各地の市民と自治体行政の取り組みを紹介する新書。 大江氏の主張は、冒頭の「はじめに」に集約される:「そもそも公共サービスは、行政が独占して担うものではない。また、あらゆ…

大泰司 紀之、本間 浩昭 『カラー版 知床・北方四島―流氷が育む自然遺産』

知床半島・北方四島の自然研究/取材の第一人者によって描かれた、同地域の自然と生態系についての報告。写真も多数収録されており、ページをめくっているだけで楽しい。 当方も本書に収録されている地図をまじまじと眺めて改めて認識したが、「北半球で最も…

立花 隆 『解読「地獄の黙示録」』

学生時代に「地獄の黙示録」の完全版(2002年に封切られたもの)を観て、他の分かりやすいアメリカ映画に比べて、「なんて分かりづらくて冗長な映画だろう」と思ったことを覚えている。一方で、再度観返したくなる映画はあまりないが、その分かりづらさ故か…

ジョセフ・コンラッド 『闇の奥』

あまりにも有名なイギリス文学の古典。以前から読もう読もうと思っていたものの時機を逸し、今に至ってようやく時間が取れたもの。 かの「地獄の黙示録」のモチーフになった作品ということでとても期待して読んだものの、貿易会社の出張所長として現地で原住…

斉藤 里恵 『筆談ホステス』

1歳で聴力を失いながら、筆談を駆使して銀座のホステスとして活躍する斉藤氏の自伝+コミュニケーション術。 (あまり一般化しすぎるのも良くないと思うが、)視覚や聴覚を失い特定の分野に才を発揮する方は多いと聞くが、斉藤氏もその一人のような気がする…

朽木 ゆり子 『マティーニを探偵する』

「カクテルの王様」と呼ばれるマティーニ(http://apl.suntory.co.jp/wnb/cocktail/recipe/martini/index.html )。その起源や変遷、アメリカ文化での位置づけを丁寧に追ったのが本書。 マティーニじたいはジンとベルモット(フレーバーワインの一種)を混ぜ…

ジャック・マイヨール 『イルカと、海に環る日』

映画『グラン・ブルー』のモデルとしてあまりにも有名なフリーダイビング界の巨人・マイヨール氏(http://www.jacques-mayol.net/index.html )の自伝的エッセイ。同氏の潜水シーンを収めた貴重な写真も多数収録されている。 同氏は、潜水記録を次々に塗り替…

マーシャ・ガッセン 『完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者』

100万ドルの賞金が掛けられた難問・ポアンカレ予想を解き世界中の注目を集めながら、フィールズ賞の受賞を拒否、世間との交流を断ったユダヤ人数学者・ペレルマン氏の半生を追ったルポルタージュ。同氏は一切メディアからの取材に応じずその素性は謎に包まれ…

スティーヴン・ホーキング 『ホーキング、未来を語る』

ブラックホールの特異点定理や蒸発理論で知られる理論物理学者・ホーキング氏による宇宙研究の解説書。ベストセラー『ホーキング、宇宙を語る』の続編にあたる。CGを利用した図表や平易な解説が多く、前著に比べても読みやすい。9年前に発行された本ではある…

谷口 義明 『カラー版 宇宙を読む』

天文学者の谷口氏が、天文学の超入門書として、天体や観測施設のカラー写真を添えて執筆したのが本書。主な天体についての基礎知識、天文学に欠かせないさまざまな電磁波、星や宇宙の歴史についての解説など、中高生でも十分理解できる平易な内容。豊富なカ…

村山 斉 『宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎』

東大数物連携宇宙研究機構(http://www.ipmu.jp/ja )の機構長・村山氏による、素粒子物理学と宇宙研究の最先端を紹介する新書。好評というので買ってみたが、とにかく面白い。2010年に読んだ本の中で一番面白いかもしれない。 当方は高校で物理を習わなかっ…

ヴィジャイ・マハジャン 『アフリカ 動き出す9億人市場』

経営学者のマハジャン氏が、消費市場としてのアフリカ大陸の現状と展望についてまとめた本。 アフリカ大陸全体を一つの国とみなせば、その経済規模(GDP総計)はインドを超えてカナダやイタリアに迫る。とくに、爆発的に増えつつある「セグメント2(推定約3…

斎藤 貴男 『経済学は人間を幸せにできるのか』

小泉改革批判で知られるジャーナリストの斎藤氏が、経済と経済学の課題について、中谷巌、佐和隆光、八代尚弘、井村喜代子、伊藤隆敏、金子勝の各氏にインタビューした結果をまとめた本。各氏の思想的背景や経済の実際問題についての率直な意見が語られてい…

山本 敏晴 『世界で一番いのちの短い国 シエラレオネの国境なき医師団』

MSF(国境なき医師団)で活躍され、近年は自ら立ち上げたNGO「宇宙船地球号」(http://www.ets-org.jp/ )で活動する山本敏晴氏による、シエラレオネでのMSF派遣経験(2001年~2002年)をつづった本。 同氏は国際協力についての多数の本を出版しておられるが…

白戸 圭一 『ルポ 資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄』

毎日新聞の白戸氏が、ヨハネスブルク駐在時代の4年間で取材したアフリカ各国のうち、「グローバリズム」と「暴力」をキーワードに、ソマリア、コンゴ民主共和国、ダルフール、ナイジェリアなどでの取材経験を報告する。 欧米のジャーナリストによる優れたア…

アマドゥ・クルマ 『アラーの神にいわれはない ある西アフリカ少年兵の物語』

西アフリカを代表する作家・クルマ氏が、リベリアとシエラレオネの内戦を題材に、架空の少年兵・ビライマの従軍経験を通じて両国の惨劇の様子を語らせるフィクション。 終始スラング口調で読みにくいが、西アフリカの「語り」のリズムをある程度リアルに反映…

リヒャルト・カプシチンスキー 『黒檀』

今まで知らなかったが、カプシチンスキー氏は一時期「ルポルタージュの皇帝」と呼ばれていたらしい。ノーベル文学賞の受賞候補に名前が幾度も挙がった、とも。 自らの取材に基づいた具体的で圧倒的な文章の中に、問題の核心や全体像を的確に織り込ませる。文…

リヒャルト・カプシチンスキー 『皇帝ハイレ・セラシエ エチオピア帝国最後の日々』

先日エチオピアを訪れた際、ハイレ・セラシエ1世が住んでいた宮殿を見学した。「皇帝のトイレが見れる」と聞いて期待して行ったのだが、大して大きくもなく、すごい装飾があるわけでもなく、普通の陶器製の小さな便座だったのが印象的であった。 さて本書は…

岡倉 登志 編著 『エチオピアを知るための50章』

先日、エチオピアに出張する機会に恵まれた。雨季の終わりで、今季は稀に見る降雨量の多さによって、豊作が期待されるとの由。地方の大地は緑に覆われ、首都は建設ラッシュで不動産ブームに沸き、観戦道路も中国の投資によって整備され、まさに経済成長の息…

マーク・ピーターセン 『日本人の英語』

日本在住歴の長い米国生まれの大学教授・ピーターセン氏が、ネイティブの視点から、日本人の英語に対する誤った認識を正す。 さまざまな英語本にお目にかかってきたが、ここまで目からウロコが落ちた本も稀である。同氏は、日本人が書いた一般向けの英語の文…

高橋 洋一 『日本経済のウソ』

日本経済の低迷はデフレによるものであり、その元凶は日銀にある、と明快に説明する本。 「実は日本の景気が悪いのは、サブプライムローン破綻の余波というより、2006-07年の金融引き締めが原因です」と言い切る。日銀がよくデフレの原因としてあげる低成長…

E・H・カー 『危機の二十年 1919-1939』

外交官・歴史家のカー氏が1939年に世に問うた話題作、1981年版の邦訳。第二次大戦前の国際関係を題材としながらも、現代においてもなお、原著の副題にあるとおり国際関係論を学ぶ人々にとって欠かせない古典となっている。 「われわれは、健全な政治的思考の…

E・H・カー 『歴史とは何か』

外交官・歴史家のカー氏が1961年にケンブリッジ大学で行った講演録。 「歴史とは何か」という大きな問いに、冒頭から明確な答えが出されている:「歴史とは(事実の取捨選択を行う)歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽き…

リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー 『新版 荒れ野の40年 ヴァイツゼッカー大統領ドイツ終戦40周年記念演説』

1985年に当時の西ドイツ大統領ヴァイツゼッカー氏が国会で行った終戦40周年記念演説の全訳。 ドイツと日本の戦後処理の違いは学生時代からの疑問なのだが、改めてこの有名な原稿を読んでみると、歴史と真摯に向き合う「覚悟」の違いに、改めて驚かされる。日…

広河 隆一 『パレスチナ』

ジャーナリストの広河氏がパレスチナ問題の実像を伝えたルポルタージュ。家の本棚に眠っていたもの(1987年版)を取り出してきて読了。 既に新版が出ているが、建国以来のイスラエルとパレスチナの軌跡を知り、パレスチナ問題の本質を掴むうえでは、旧版でも…

川井 かおる 『知識は捨てる!』

民間企業を経て郵政大学校の教官を務めた川井氏が、情報過多、知識過多の現代における生き方を提案する。 「『情報断食』がすべてのひとに、社会のあらゆる場面に、求められるのです」という帯のメッセージにひかれて購入。川井氏の言う「『無言の日』を設定…

宮本 正興、松田 素二 編 『新書アフリカ史』

サブ・サハラアフリカの歴史について日本語の文献を手に取るなら、まずこの本。新書とは思えない600ページの分厚さだが、冗長な記述はほとんどなく、すらすら読める。 「アフリカ社会は、ヨーロッパがイメージした『閉鎖社会』などではなく、地域内部あるい…