Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

川井 かおる 『知識は捨てる!』

 民間企業を経て郵政大学校の教官を務めた川井氏が、情報過多、知識過多の現代における生き方を提案する。

 「『情報断食』がすべてのひとに、社会のあらゆる場面に、求められるのです」という帯のメッセージにひかれて購入。川井氏の言う「『無言の日』を設定し、その日は、一日中、誰とも会わず、話しません。テレビを見ない、パソコンに触れない」というところまで徹底することは難しいが 笑、意識的に外部の情報から離れ、自分自身と向き合って対話するための時間を作ることは、確かに重要である。川井氏が言うように、できれば定期的に座禅を組むことが一番良いのだろう。
 座禅が難しくとも、何も考えずに「意識して呼吸する」ことに集中する時間を少し作ってみるだけで、だいぶ落ち着きが違うと思う。最近仕事でテンパるときに、職場でこっそり半座禅モード(吐く息を意識してゆっくり深呼吸するだけ)に入ることがあるのだが、余計な雑念を捨てて案外しっかり目の前の仕事に集中できたり、広い視野で見て仕事の優先順位を付けたり段取りを付けたりできたりする。深呼吸という行為自体、おそらく科学的に、人間の神経を落ち着かせる効果があるのだろう。

 本書では、「今すぐ捨てたい知識」として、ほかにも「執着」「相対評価」「数値崇拝」「先入観」「見栄」「否定語」などが挙げられている。共通するのは、「あるがままの自分の心に耳を傾けよ」というメッセージではないかと思う。社会に出ると、人間誰しもが有象無象に心を囚われるようになる。収入、ポスト、他者からの評価、自尊心、経験からくる思い込み。「こうありたい」と思う理想の自分が高いほど、実際の自分とのギャップに直面したときのストレスも大きい。1日15分でも、深呼吸して、余計な事を忘れて、自分の内なる声に耳を傾けてみる。情報過多のスパイラルを抜け出す鍵は、こうした身近な習慣づくりにある、と最近とみに感じている。

日経BP社、2009年)

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