Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

2011-01-01から1年間の記事一覧

赤松 明彦 『楼蘭王国 ロプ・ノール湖畔の四千年』

歴史学者の赤松氏による、楼蘭に関する最新の研究成果を紹介する新書。 地名としての「楼蘭」は、ロプ・ノール湖の西、タリム盆地の東の入り口に位置したオアシス都市とその地域一帯のことを指す。紀元前2世紀には「楼蘭王国」の名が『史記』に登場する。同…

西堀 榮三郎 『技士道十五ヶ条 ものづくりを極める術』

多彩な経歴で知られた研究者・技術者・登山家の、西堀氏による技術論・経営論。 恥ずかしながら本書を読むまで、西堀氏が日本における品質管理手法の第一人者だとはついぞ知らなかった。分業と監督に重点を置くアメリカ流のテーラー・システムは労働者を「物…

蓮池 透 『奪還 引き裂かれた二十四年』

「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」の元副代表・蓮池透氏が、実弟の拉致被害者・薫氏の拉致から帰国までの24年間にわたる苦闘を綴った手記。 本書によれば、警察庁や外務省は各失踪事案が発生した直後から北朝鮮による拉致を確信していたようだが、外交事…

ウォルター・アイザックソン 『スティーブ・ジョブズ』

アップル社創業者で前CEO、スティーブ・ジョブズ氏を描いた伝記。著者はアインシュタインやキッシンジャーの伝記で知られるアイザックソン氏。 本書は、ジョブズ氏の生涯を、同氏からの依頼の下、本人を含む100人以上を超える関係者への聞き取りを通じて、内…

アラン・グリーンスパン 『波乱の時代』

1987年から2006年まで史上最多の5期に渡ってFRB議長を努めたグリーンスパン氏の回顧録。上巻は、グリーンスパン氏の生い立ちからFRB議長を5期務めるまでの文字通りの回顧録であり、下巻は、こうした経験をもとに国際経済上や主要課題や今後の見通しに対する…

NHK取材班 『マネー資本主義 暴走から崩壊への真相』

同名の「NHKスペシャル」(2009年)で放映された内容を、取材の経緯や関係者インタビューの詳細を含める形で書籍化したもの。 ①金融危機の主役となった投資銀行の関係者、②「超金余り」を演出した政策立案者、③ハイリスク商品に手を出した機関投資家、④証券…

ディビッド・スティルマン、ロニ・ゴードン 『The Ultimate French Review and Practice』

米国において一般的に用いられている仏語文法の教材。昨年末から少しずつ進めていたが、この週末にようやく最後までたどり着いた。 B5判の350ページ強に、仏文法の解説と付随する練習問題(例えば接続法だけで約500問)がびっしり詰まって、かなりやり応えが…

照屋 華子、岡田 恵子 『ロジカル・シンキング 論理的な思考と構成のスキル』

マッキンゼー社でエディティングに携わる照屋氏、岡田氏が、論理的なコミュニケーションの手法についてまとめた本。重版に重版を重ね、この分野では半ば古典の域に達している。 実はこの本、学生時代に一度読んだのだが、豊富な具体例で示される各業界の組織…

エド・ブラドー 『交渉のブートキャンプ 12回特訓プログラム』

米国のビジネス界で長く実務や経営に携わり、その経験を元に、「交渉術のコーチ」としてマイクロソフトやGS、IBM、国防総省など1000社以上を対象にセミナーを開催してきたブラドー氏によるノウハウ本。 一時はやった「ブートキャンプ」を引いた一見奇抜なタ…

小宮 良之 『ロスタイムに奇跡を 日本代表選手たちの真実』

スポーツライターの小宮氏による、サッカー日本代表選手たち8名を描いたルポルタージュ。「角川文庫スポーツ部」の第2弾として2011年9月発行。 取り上げられているのは岡崎、本田、長友、森本、大久保、家永、中村俊、長谷部の8選手だが、全体として200ペー…

ジャック・アタリ 『国家債務危機 ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』

『21世紀の歴史(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/19050159.html )』等で知られるアタリ氏が、過去の歴史を紐解きながら、世界の公的債務問題に対する現状と対策をまとめた単行本。原著は2010年5月発行。 『21世紀の歴史』で見られた、関連する過去の歴史…

司馬 遼太郎 『燃えよ剣』

新撰組副長にして後の幕臣、齢35にして函館で命を散らした豪傑・土方歳三の生涯を描いた長編小説。 本書で描かれる土方の生涯はまさに激烈で、「豪傑」を地で行くかの如くである。もともと新撰組は攘夷を掲げて発足したにも関わらず攘夷志士を切りまくったと…

高野 和明 『ジェノサイド』

進化した人類の出現に対して現行人類がどう相対するか、人類の限界と希望を対比させて描いたSF仕立てのミステリー小説。 コンゴに突然現れたたった一人の進化した人類を抹殺する米政府の作戦立案者がつぶやいた言葉を引いて、本作のタイトルは『ジェノサイ…

V・E・フランクル 『夜と霧』

ユダヤ人の精神学者であるフランクル氏が、戦時中にドイツの強制収容所に収監された体験を綴った体験記。 収容時の消毒室で、学術書の原稿の保持を侮蔑とともに却下されたときに「それまでの人生をなかったことに」する心理的反応を自らが示したエピソードに…

三島 憲一 『現代ドイツ 統一後の知的軌跡』

ドイツ思想史を専門とする三島氏が、統一ドイツの知的・文化的論争の系譜をたどった新書。 本書は、ドイツ統一が与えた衝撃と人々の苦悩を紹介するところから始まる:「文化の相違ははっきりしていた。能率と迅速さと正確さを尊び、なによりも論争を好む西側…

坂井 榮八郎 『ドイツ史10講』

ドイツ近代史を専門とする坂井氏が、ローマ帝国時代以降のドイツ史を、10章の講義形式でまとめた新書。 個人的にドイツ史の中で昔から釈然としなかったのが、神聖ローマ帝国(862~1806)の位置づけで、特に中世のドイツは領邦制が主軸にあったとされる一方…

原 英史 『「規制」を変えれば電気も足りる 日本をダメにする役所の「バカなルール」総覧』

2009年7月まで公務員制度改革に事務方として関与した政策コンサルタント・原氏による「規制」についての解説本。少なくともここ数十年、日本における「規制改革」の必要性は謳われ続けてきたが、とかく総論が先行しがちなこの分野について、具体的に各論を見…

髙村 薫 『神の火』

過去ソ連に情報を流し続けていた元原子力研究員・島田が、原爆開発の機密情報をめぐる各国の諜報部門の争いに再度巻き込まれ、自らの人生にケリを付けるべく、原子炉圧力容器の蓋を開けるという原発テロを敢行するまでを描いた小説。 髙村氏の初期作品の一つ…

レフ・トルストイ 『アンナ・カレーニナ』

これまで読もうと思っていて読めなかった長編古典小説を読んでみようシリーズその2。 身も蓋もなく一言で言ってしまえば「壮大な不倫小説」なのだが、トマス・マンが「少しも無駄のない、全体の構図も、細部の仕上げも、一点の非の打ち所のない作品」と語っ…

白井 さゆり 『欧州激震』

前著『欧州迷走』から1年後、世界経済危機とギリシャ粉飾決算をきっかけとして顕在化した欧州諸国の財政危機についての現状をまとめた単行本。 2008年の世界経済危機に伴い各国政府が財政出動を行った結果、(もともと赤字基調だった国は特に)財政状態が悪…

白井 さゆり 『欧州迷走』

米国の住宅バブルに端を発した2008年の金融危機が、欧州にどのような影響を及ぼしたか、研究者の白井氏が主要各国の背景と当時の現状をまとめた単行本。白井氏は当時パリに滞在しており、欧州の「迷走」を実地で目撃した。けっして学術書の類ではないが、当…

前田 充浩 『金融植民地を奪取せよ ジリ貧日本を救う「投資パラダイス」の発想』

前著『国益奪還』で日本のタイド円借款が国際規制の対象となっていった過程を明らかにした前田氏が、現代の新興国のインフラ整備のための日本の開発ファイナンスのあり方を論じた本。 本書の議論の前提は、開発ファイナンスと投資の「ハイパー・サイクル」に…

前田 充浩 『国益奪還』

研究者の前田氏が、OECD(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/34934144.html )において日本のタイド円借款が全面的に規制されるに至った経緯を詳細に綴り、国際的なレジーム形成における日本のあり方を論じる新書。 同氏が、日本では「特に敗北の場合、その…

天木 直人 『さらば外務省! 私は小泉首相と売国官僚を許さない』

元レバノン大使の天木氏が、古巣の外務省と小泉政権を徹底的に告発した本。発行当時に相当話題になっていたのを覚えているが、今になってなぜかパリで手に取る機会があったので読んでみた。 本書は、天木氏がイラク戦争勃発にあたり本省に宛てた、国連決議な…

田丸 公美子 『シモネッタのドラゴン姥桜』

イタリア語通訳の田丸氏が自身の子育て体験を赤裸々?に綴った体験記。ご子息が放任主義ながら開成→東大→弁護士のエリート街道を驀進されたとのことだが、友人関係・恋愛関係まで恐らくすべて実話の情報がこれでもかというほど暴露されており 苦笑、思わず息…

田丸 公美子 『シモネッタの本能三昧イタリア紀行』

今夏にイタリア旅行を計画していたこともあって、イタリアを70回以上も訪れたという日本屈指のイタリア語通訳・田丸氏のイタリア旅行記を手にとってみた。 まず「シモネッタ」の通り名どおり、イタリア人の恋愛とセックスにまつわるエピソードが満載。1981年…

佐藤 優 『交渉術』

元外交官の佐藤氏が、自身の経験を紐解きつつ、人間の欲望とそれに拠った交渉の技法を明らかにした本。 自身の外交官時代の経験を紹介しつつ、ハニートラップや賄賂、酔い潰しといった「戦術」のあるべき使い方について考えを述べるが、現役外交官ならまだし…

山崎 朋子 『サンダカン八番娼館』

1972年初版の後ベストセラーとして現在も版を重ねる『サンダカン八番娼館』の文庫新装版。山崎氏が天草で出会った元からゆきさんから聞き取った記録『サンダカン八番娼館』、彼女らの足跡を東南アジアにたどった続編『サンダカンの墓』の両方を収録。重いテ…

ビル・エモット、ピーター・タスカ 『日本の選択』

元「Economist」誌東京支局長のエモット氏、日本在住の市場アナリスト・タスカ氏による、日本の進路についての対談集。どちらも英国人というバックグラウンドを反映してか、対談における両者の指摘は、基本的に自由主義と市場主義の思想に沿った、当事者であ…

松井 謙一郎 『パリクラブ 公的債務リスケ交渉の最前線で』

パリクラブは、公的債務(債権者が公的機関)のリスケに関する条件交渉を行う非公式会合で、仏財務省が主催、リスケの方法論などを検討する一般問題会合、個別債務国にかかる情報交換・対応方針決定を行う一般概観会合に加え、債務国からの要請に応じて個別…