Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

2011-01-01から1年間の記事一覧

柴田 三千雄 『フランス史10講』

フランス近代史の研究者・柴田氏によるフランス史の概観。ガリア、フランク王国の時代から、絶対王政、革命、ナポレオン戦争、ド・ゴールを経て現代に至るまで。高校時代に世界史を習ったことのある人であればすんなり読める。 中世フランスにおいて、シャル…

軍司 泰史 『シラクのフランス』

1995年から1999年にかけて共同通信記者としてパリに駐在した軍司氏による現代フランスの政治・経済・社会を描いたルポルタージュ。欧州統合の試練と大規模スト、核武装と独自外交、エリート達の「一元思考」、コアンビタシオン、移民問題と極右政党、アメリ…

冨樫 義博 『HUNTER×HUNTER』

連載と休載を繰り返すことで知られる、「少年ジャンプ」掲載の伝説のストーリー漫画。先週発売された2011年35・36合併号で1年ぶりに連載再開、併せて単行本29巻が発売された。 少年ゴンが父親のような一流の「ハンター」になることを目指し旅を続けるストー…

田中 嘉文 『シニアに優しい旅のコツ 海外旅行の実践講座』

旅行業界で多くのシニア向け旅行をプロデュースしてきた田中氏による、シニア向け旅行のノウハウをまとめた新書。計画時や旅先での動き方の注意点、あると便利な持ち物リストまで、海外旅行初心者にとっては至れり尽くせりな内容。旅行を計画している方にと…

田丸 公美子 『パーネ・アモーレ イタリア語通訳奮闘記』

米原万理氏いわく「押しも押されもせぬ大横綱」、日本最強のイタリア語通訳である田丸氏が、通訳としての波乱万丈の体験を綴ったエッセイ。 米原氏の著作(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/21610045.html )の中で壮絶な下ネタ使いとして登場する田丸氏。…

長友 佑都 『日本男児』

日本代表不動の左サイドバック、所属元のインテルでもレギュラーに定着した感のある長友選手が自身の半生を記したエッセイ。 唐突だが、海外サッカーに詳しくない方はピンとこないかもしれないが、インテルのレギュラーを張るということはとてつもないことで…

ポール・コリアー 『Wars, Guns, and Votes: Democracy in Dangerous Places』

前著『The Bottom Billion』の2年後に、コリアー氏が同地域における政治的暴力の問題に焦点を絞って世に出したのが本書。前著の内容でいうと、「紛争の罠」とそれを解決するための「軍事介入」「法と憲章」をより詳しく掘り下げた印象がある。 同氏はまず、…

ポール・コリアー 『The Bottom Billion: Why the Poorest Countries Are Failing and What Can Be Done About It』

オックスフォード大の政治経済学者・コリアー教授が「The bottom billion(最底辺の10億人)」の現状と対応策をまとめた本。以前ぱら読みして放っておいたのを、少し時間が出来たのでもう一度じっくり読んでみた。 本書は、現代世界の貧困や紛争を考える上で…

藤井 良弘 『EUの知識 第15版』

上智大学教授の藤井氏によるEUについての基礎知識をコンパクトにまとめた文庫、2009年に発効したリスボン条約にかかるアップデートを含む最新版。 最近仕事でEUの対外政策について調べ物をしているのだが、つい最近まで閣僚理事会と欧州委員会の区別も付いて…

戸部 良一 ほか 『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』

戸部防衛大学校教授ら戦史・組織論の研究者グループによる、先の大戦で示された日本軍の組織特性についての共同研究。タイトルが示すとおり、戦史上の失敗から、現代日本の組織一般にも通じる教訓を導き出す内容。 本書で取り上げられているのは、ノモンハン…

共同通信社社会部編 『沈黙のファイル 「瀬島龍三」とは何だったのか』

山崎豊子『不毛地帯』のモデルとも言われる元大本営作戦参謀・瀬島龍三氏の半生を切り口として、太平洋戦争、シベリア抑留、戦後賠償など戦後日本史の暗部を抉った共同通信社社会部のチームによるルポルタージュ。 戦中の大本営陸軍部作戦部作戦課は、同情報…

保阪 正康 『陸軍省軍務局と日米開戦』

戦前・戦中の陸軍省において国防政策立案・議会交渉・国防思想普及を担った同省軍務局幹部を中心に、開戦前2ヶ月の政府・軍中枢の動向を追った、ノンフィクション作家の保阪氏によるドキュメント。 開戦にあたって、当時の陸海軍が、明確な根拠や冷静な判断…

堀 栄三 『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』

1943年10月から終戦まで大本営陸軍部情報部に勤務、米軍のルソン島上陸や本土決戦計画を的中させるなど名情報参謀として知られた堀氏が、戦後40年経って初めて自身の参謀としての体験を述べた回顧録。 堀氏の経歴も情報参謀の仕事も良く知らないまま読んだ本…

宮部 みゆき 『火車』

ベストセラー作家・宮部氏による、消費者ローン社会の闇を描いた長編ミステリー。 これまで宮部みゆきを全く読んだことなかったので、傑作と名高い本書からまず手に取ってみた。さわりだけ読もうと思って就寝前の午後12時から読み始めたものの、気づいてみれ…

古賀 茂明 『日本中枢の崩壊』

先月の発売以来ベストセラーになっている、公務員制度改革を推し進めた異色の経産官僚・古賀氏による回想録と提言の書。元財務省の高橋洋一氏(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/10325662.html )、元外務省の佐藤優氏(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/1…

国連教育科学文化機関 『World Heritage Sites: A Complete Guide to 911 UNESCO World Heritage Sites』

ひょんなことから入手した、ユネスコ発行の世界遺産ガイド。重たい紙質で856ページ、持ち運ぶのは難儀だが、中身はとてもいい。2010年までに登録された911の世界遺産すべてを、それぞれ半ページ~2ページを割いて概説、主なものには写真が付いている。写真を…

G・ブルース・ネクト 『銀むつクライシス 「カネを生む魚」の乱獲と壊れゆく海』

2003年に実際に起きたマゼランアイナメ(銀むつ)密漁船とオーストラリアの巡視船による壮絶なデッドヒートを芯に据え、人々が如何にこの魚に殺到し乱獲していったかを、サスペンス小説さながらの構成とスピーディな筆致で描いた、ウォール・ストリート・ジ…

サーシャ・アイゼンバーグ 『スシ エコノミー』

アメリカ人ジャーナリストのアイゼンバーグ氏による、14カ国での取材を通じた、寿司ビジネスとそこから見えるグローバル経済の姿を綴ったノンフィクション。 当方が住んでいるパリにも沢山の寿司屋があり、自宅近くには回転寿司屋まである。といっても、回っ…

ポール・クルーグマン 『クルーグマン教授の経済入門』

1994年に第1版が発行された、当時MIT教授のクルーグマン氏による、アメリカ経済の諸問題の解説書。生産性、所得分配、雇用と失業、貿易赤字、インフレ、ヘルスケア、財政赤字、金融政策、ドル、貿易、日本問題。既に第1版発行から15年以上が経過したが、米国…

村田 良平 『OECD(経済協力開発機構) 世界最大のシンクタンク』

外務省の高官としてOECDに長く関わった村田氏が、OECDの生い立ちや業務についてコンパクトにまとめた新書。 日本でも報道や政府統計などで頻繁に名前を目にするOECDだが、そのメカニズムを包括的に知っている方は案外少ないのではないか。「金持ちのサロン」…

米原 万理 『ガセネッタ&シモネッタ』

こちらは、米原氏が通訳としての仕事をされる中で体験したエピソードを中心に綴ったエッセイ。かつて一緒に仕事をさせていただいた露語通訳の方は「米原さんが露語通訳の業界をメジャーにした」と仰っていたが、本書を読んでその正しさを改めて実感した。 通…

米原 万理 『旅行者の朝食』

今更ながら、しかも何故かパリで、米原万理にはまっている。本書は、大変なグルメでも知られる同氏の、世界各地の料理についてのエッセイをまとめた文庫。 米原氏が古今東西で出会った美味・珍味の数々は、読んでいて思わず涎が出そうになるほどおいしそうで…

セルジュ・ミッシェルほか 『アフリカを食い荒らす中国』

『ルモンド』紙のミッシェル氏、『レブド』誌のブーレ氏らによる、現代の中国・アフリカ関係を抉るルポルタージュ。目まぐるしく移り変わる舞台の隅々まで理解するには予備知識のない読者は少々厳しいかもしれないが、単なる情勢報告に留まらず変化する中国…

白戸 圭一 『日本人のためのアフリカ入門』

『ルポ 資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/33575979.html )』で知られる毎日新聞記者の白戸氏による新刊。 アフリカを知るための入門書という触れ込みで世に出る新刊は、最近とみに増えている。今回白戸氏が同様の…

読売新聞中国取材団 『メガチャイナ 翻弄される世界、内なる矛盾』

現代中国の膨張と矛盾、その世界各地での影響をルポした読売新聞の連載をまとめた新書。 現代中国の爆発的なエネルギーについては今更語るまでもないが、本書を読んで改めてほうと思ったエピソード; ・中国企業はテロのリスクを承知で、アフガニスタンでも…

塩野 七生 『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年』

高校のときに読んだ世界史の教科書には、やたらヴェネツィア共和国の名前が登場した。現在でこそ運河と観光業で有名な一都市に過ぎない小国のヴェネツィアが、なぜ中世の地中海史において卓越した存在感を発揮できたのか、経済にも歴史にも疎かった当時は理…

魚住 昭 『渡邉恒雄 メディアと権力』

日本のマスコミ業界に君臨する、現読売新聞グループ本社代表取締役会長兼主筆の渡邉氏の半生を描いた評伝。 日本のマスコミは伝統的に権力に近い場所に位置して来、またその権勢の大きさから、行政・立法・司法に次ぐ「第四の権力」などと称されてきた。渡邉…

魚住 昭 『野中広務 差別と権力』

ノンフィクション作家の魚住氏による、一時「影の総理」とまで言われた野中元官房長官の半生を描いたルポルタージュ。2006年に文庫化されたばかりだが、既に古典の域に達していると言っていい。 唐突だが、高村薫の『レディ・ジョーカー(http://blogs.yahoo…

鎌田 慧 『日本の原発危険地帯』

ジャーナリストの鎌田氏が、原発地帯を直に歩き、住民や自治体が原発を受け入れていった経緯を明らかにする。初版発行は1982年だが、今回の福島原発事故を機に緊急改版されたもの。 これまで何となく知っていた国・事業会社による原発推進攻勢の実態を本書で…

内田 樹 『下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち』

哲学者の内田氏による、昨今の子どもたちの学びからの逃避、若者たちの労働からの逃避について、自身の考えをまとめた本。2005年に三浦展氏が『下流社会』という新書を出してベストセラーになったが、本書はタイトルからしてより刺激的。単に「下流」に転落…