Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

冨樫 義博 『HUNTER×HUNTER』

 連載と休載を繰り返すことで知られる、「少年ジャンプ」掲載の伝説のストーリー漫画。先週発売された2011年35・36合併号で1年ぶりに連載再開、併せて単行本29巻が発売された。

 少年ゴンが父親のような一流の「ハンター」になることを目指し旅を続けるストーリー、といってしまえば一行で済むが、ハンター試験編、ゾルディック家編、天空闘技場編、ヨークシン/幻影旅団編、グリード・アイランド編、キメラ・アント編と、独特な舞台設定と個性豊かな登場人物が入れ替わり立ち代わり現れ、長期連載にあっても読者を全く飽きさせない。前作の『幽遊白書』後半の仙水編以降、特殊な能力やルールの応酬を交えた敵とのバトルは冨樫氏の十八番になっており、高い画力・構成力と合わさって、本作はストーリー漫画として日本でもトップレベルの域にあると思うが、扱うテーマがシリアス(ときにグロテスク)になってゆくに従い、老若男女が楽しめる純粋なエンターテイメントとしての領域からは徐々に遠ざかっているような気もする。
 現在進行中のキメラ・アント編では、冒頭で蟻勢力の弱肉強食・残虐ぶりを強調する一方、クライマックスに突入した28巻以降は、彼らを駆除するためにはどんな卑怯な手段も厭わない人間の「悪意」にも焦点が当てられてきている。現在の「少年ジャンプ」の押しも押されぬエース『ONE PIECE』でも、権力の横暴や腐敗、差別や暴力といったテーマが暗示的に扱われることが多い(単なる勧善懲悪ではない)が、よりシュールで近代的な世界観の影響もあってか、本作ではこうした人間の闇を扱う、ときに悲観的な側面が、より直截的に表れているように思う。

 ・・・などと色々と書いてみたが 笑、要するに「少年ジャンプ」への本作の復帰は(特に『幽遊白書』を知る時代の)漫画ファンとしてはとにかく朗報であり、毎週の楽しみがひとつ増えるのは純粋に喜ばしいことである。

集英社、2011年8月時点で29巻まで発行)

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