Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

井出 穣治 『フィリピン 急成長する若き「大国」』

元IMF職員としてフィリピンに関わった日本銀行の井出氏が、フィリピンの近年の経済・社会について包括的に紹介する新書。 近年(少なくともCOVID-19の発生前まで)アジアの中でも急激な経済発展を遂げていた、かつての「アジアの病人」フィリピン。他のアジ…

大木 毅 『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』

戦史・軍事史事著述家の大木氏が、最新の史料に基づいて第二次大戦中の独ソ戦を解説した新書。 独ソ戦は、スターリンの錯誤、ヒトラーとドイツ軍の楽観により始まった。当初ドイツの電撃戦は成功に見えたが、ソ連軍の抵抗と補給路の延伸より、ドイツ軍は徐々…

アレクサンドル・ソルジェニーツィン 『イワン・デニーソヴィチの一日』

スターリン体制下のソ連強制収容所での一日を描写した、文豪ソルジェニーツィンの処女作。 主人公のシューホフ(イワン・デニーソヴィチ)は、ドイツ軍の捕虜になった咎で強制収容所(ラーゲリ)での生活を余儀なくされる。収容所での生活は著者の実際の経験…

逢坂 冬馬 『同志少女よ、敵を撃て』

第二次大戦中の独ソ戦を舞台に、家族を奪われ復讐心に燃える女性狙撃兵セラフィマの成長と葛藤を描く。 ドイツ兵に家族と古郷を奪われたセラフィマは、狙撃手の過酷な訓練に耐え、戦場で仲間の死を乗り越えながら戦果を重ねる。ソ連軍もドイツ軍と同じように…

ニーアル・ファーガソン 『憎悪の世紀 なぜ20世紀は世界的殺戮の場となったのか』

『マネーの進化史』で知られるハーバード大学の歴史学者・ファーガソン氏が、「憎悪」をキーワードとして20世紀の戦争・紛争・暴力の歴史を描いた本。 ファーガソン氏は、20世紀、特に1940年代の初期に特定の地域(中部・東部ヨーロッパ、満州や韓国)で集中…

ブラッドレー・マーティン 『北朝鮮「偉大な愛」の幻』

米国人ジャーナリストのマーティン氏が、文献調査や現地取材、亡命者からの聞き取りによって、北朝鮮の内実を解き明かす本。 時系列でいうと、金日成の生い立ちからから建国、金正日への権限委譲、金正日によって軍事独裁国家になるまでの北朝鮮を描く。執筆…

イアン・エアーズ 『その数学が戦略を決める』

計量経済学者のエアーズ氏(イェール大学)が、「絶対計算」(ビッグデータの分析)が現実社会の意思決定にもたらしつつある影響を分かりやすく解説した本。 本書は2つのまとまりに大きく分かれており、前半は回帰分析と無作為抽出テストの手法の解説、それ…

伊藤 公一朗 『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』

計量経済学者の伊藤氏(シカゴ大学)が、ランダム化比較実験等のデータ分析手法を解説した新書。 最近、仕事の中でデータを集めたり分析したりすることが多かったので、書店で目に入ったときに思わず購入。平易でわかりやすく、事例も豊富な良書。著者のご年…

深田 祐介 『神鷲商人』

戦後の対インドネシア賠償利権をめぐって画策する商社と、それに巻き込まれた女性(デヴィ夫人がモデル)の数奇な半生を描いた小説。 巻末の対談集によれば、著者の深田氏の幼友達が商社でインドネシア賠償に深く関わっていたことをきっかけに、本書の執筆が…

浅田 次郎 『蒼穹の昴』

中国の清朝末期を舞台として、自らの天命に抗って生きた義兄弟の半生を描いた、浅田次郎氏のベストセラー小説。 学生時代に一度読んだが、懐かしくなって再度手にとってみた。浅田氏は巷で「平成の泣かせ屋」と呼ばれているらしいが、たしかに名場面の数々で…

濱田 健司 『農福連携の「里マチ」づくり』

JA共済総合研究所の濱田氏が、「農福連携」の仕組みと事例を解説した本。 とある地方部の自治体の方から「農福連携」という言葉を聞いて、調べてみようと思って手にとったのがこの本。写真や図表も多数入っていて、分かりやすい構成になっている。 「農福連…

藻谷 浩介、NHK広島取材班 『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』

NHK広島取材班と『デフレの正体』の藻谷氏が、マネー資本主義に替わる処方箋の提示を試みた新書。 「里山資本主義」は、NHK広島取材班が編み出した造語。取材班の井上氏は、以前本ブログでも紹介した「マネー資本主義」の番組を手がけており、金融が実体経済…

加藤 洋輝・桜井 駿 『決定版 FinTech 金融革命の全貌』

NTTデータ研究所の加藤氏・桜井氏が、IT技術を駆使した新たな金融サービス(フィンテック)を概説した本。 フィンテックの入門書はこの本以外にもたくさん出ているが、構成が分かりやすそうなだったので手にとってみた。読んだのは少し前だが、備忘録として…

栗田 匡相 ほか 編著 『日本の国際開発援助事業』

日本の国際開発援助(ODA)事業の現状と展望について、研究者による複数の論考をまとめた本。2012年まで行われた関西学院大学産業研究所の共同研究の成果をまとめたもの。 1.理論・背景(全体、アジア、アフリカ)、2.ハード・インフラ(エネルギー、水…

池上直己、J.C.キャンベル 『日本の医療 統制とバランス感覚』

日米の医療政策の研究者が、日本の医療制度と政策過程を解説した新書。 日本の社会インフラについて勉強している関係で、会社の同僚から薦められて読了。当時の米国で、医療改革の参考として日本の医療制度を紹介するために企画されたプロジェクトの成果との…

高杉 良 『勇者たちの撤退 バンダルの塔』

1970年代にイランの石油化学プラント事業に賭けた、日本企業の男たちの戦いと葛藤を描いた小説。 小説ではあるが、関係者への取材をもとに事実にきわめて近い形で描かれており、高度成長期にイランへの投資事業に熱意を投じた登場人物たちの熱がそのまま伝わ…

清水 義次 『リノベーションまちづくり 不動産事業で街を再生する方法』

「都市再生プロデューサー」として現代版家守によるまちづくりに取り組んでいる清水氏が、リノベーションまちづくりの方法を豊富な具体例をもとに紹介する本。 「リノベーションまちづくり」は、遊休化した建物や公共施設、地域の人材をといった潜在資源を活…

マイケル・ルイス 『ライアーズ・ポーカー』

元ソロモン・ブラザーズの債券セールスマン・ルイス氏が、同銀行に勤務した経験とモーゲージ債の勃興を描いたノンフィクション。 ルイス氏の『世紀の空売り』があまりにも面白かったので、同氏の処女作である本書も手に取ってみた。かつて「ウォール街の帝王…

マイケル・ルイス 『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』

元投資銀行員のライター・ルイス氏が、サブプライムローンの破綻に賭けた男たちを描いたノンフィクション。 以前から評判を知っていたが読んでおらず、債券を勉強していた最近になって読んでみた。読み始めてすぐに、もっと早く読まなかったことを後悔。巻末…

ユヴァル・ノア・ハラリ 『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』

歴史学者のハラリ氏が、現生人類ホモ・サピエンスの誕生から現代までを描いた通史。 本書によれば、20万年前に東アフリカで生まれたホモ・サピエンスは、7万年前の認知革命により決定的な優位をもち、1万3000年前までにネアンデルタール人など他のヒト属を…

マハティール・ビン・モハマド 『マハティールの履歴書 ルック・イースト政策から30年』

マレーシア元首相・マハティール氏の自伝の一部に、日経「私の履歴書」の同氏連載を合わせて一冊にした本。 自伝の原著は分厚い本だが、出版社の都合により、邦訳は一部を抜粋した形にならざるを得なかったとのこと。それでも主要な章を抜き出し、同氏の生い…

根本 祐二 『朽ちるインフラ』

元政策投資銀行・東洋大学教授の根本氏が、日本の老朽化しつつあるインフラの現状と課題、その対策をまとめた本。 ここ最近、老朽化する公共施設やインフラ(道路、橋梁、上下水道等)の問題がマスコミでも指摘されている。中央自動車道の笹子トンネル天井版…

網野 善彦 『「日本」とは何か』

歴史学者の網野氏が、講談社「日本の歴史」シリーズの第一弾として、これまでの学術的成果をもとに、日本という国のルーツを論じた本。 網野氏は本書を通じて、いわゆる進歩史観的な従来の日本の捉え方に絶えず疑問を投げかける。第二章では、日本列島がいわ…

佐藤 智恵 『世界最高MBAの授業』

世界トップのビジネススクールで教えられている授業の内容を、各スクール卒業生の日本人が振り返るダイジェスト形式で紹介する本。 本書によれば、ビジネススクールのカリキュラムは、ハードスキル(会計や財務等の専門知識)、ソフトスキル(リーダーシップ…

杉森 久英 『天皇の料理番』

大正から昭和時代にかけて宮内庁の主厨長を務めた秋山徳蔵氏をモデルとして、「天皇の料理番」の生涯を描いた小説。 先ごろ佐藤健主演でドラマ化され、思わず毎週見てしまったので、原作も読んでみた。何をやっても続かないかんしゃく持ちの主人公・篤蔵は、…

フョードル・M・ドストエフスキー 『カラマーゾフの兄弟』

気質も思想も異なるカラマーゾフ家の3兄弟が織りなす人間模様のなかに、神と信仰、家族と愛、様々な問題を織り込んで描いたドストエフスキーの代表作。 物語の中心となるのは、情熱的で豪放磊落なドミートリィ、知性派の無神論者のイワン、純粋無垢の修道者…

シルビア・レーケン 『内向型人間のための人生戦略大全』

ドイツのコミュニケションコーチ・セミナー講師のレーケン氏が、「内向型人間」が生活や仕事をうまく乗り切って行くための実践的な方法を紹介する本。 レーケン氏は「内向的人間」を、他人との接触からエネルギーを得る外向型人間とは対照的に、他人と接触す…

ジェラール・プルニエ 『From Genocide to Continental War』

フランスの歴史家プルニエ氏が、ルワンダのジェノサイドに端を発するアフリカ大湖地域の動乱の推移と展望を論じた本。 同氏は、一連のコンゴ戦争を、冷戦終結に伴う新たなアフリカ史の始まりとして位置づける。それまでアフリカ諸国の戦争は冷戦下のイデオロ…

ジェラール・プルニエ 『The Rwanda Crisis: History of a Genocide』

フランスの歴史家プルニエ氏が、ルワンダのジェノサイド直後の時期に、その背景と経過、その後の展望を分析した本。 ルワンダのジェノサイドについて書かれた本は数多あるが、その中でも本書はその背景と経過をもっとも初期に分析した本。この分野では必読の…

ジェイソン・スターンズ 『Dancing in the Glory of Monsters』

アフリカ大湖地域の専門家であるスターンズ氏が、関係者インタビューや現地取材を通じ、二度にわたったコンゴ戦争の経過を読み解くノンフィクション。 1990年代のコンゴ民主共和国(DRC、旧ザイール)はまさに激動。30年以上に渡り圧政を強いて来たモブツが…