Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

フィクション

アレクサンドル・ソルジェニーツィン 『イワン・デニーソヴィチの一日』

スターリン体制下のソ連強制収容所での一日を描写した、文豪ソルジェニーツィンの処女作。 主人公のシューホフ(イワン・デニーソヴィチ)は、ドイツ軍の捕虜になった咎で強制収容所(ラーゲリ)での生活を余儀なくされる。収容所での生活は著者の実際の経験…

逢坂 冬馬 『同志少女よ、敵を撃て』

第二次大戦中の独ソ戦を舞台に、家族を奪われ復讐心に燃える女性狙撃兵セラフィマの成長と葛藤を描く。 ドイツ兵に家族と古郷を奪われたセラフィマは、狙撃手の過酷な訓練に耐え、戦場で仲間の死を乗り越えながら戦果を重ねる。ソ連軍もドイツ軍と同じように…

深田 祐介 『神鷲商人』

戦後の対インドネシア賠償利権をめぐって画策する商社と、それに巻き込まれた女性(デヴィ夫人がモデル)の数奇な半生を描いた小説。 巻末の対談集によれば、著者の深田氏の幼友達が商社でインドネシア賠償に深く関わっていたことをきっかけに、本書の執筆が…

浅田 次郎 『蒼穹の昴』

中国の清朝末期を舞台として、自らの天命に抗って生きた義兄弟の半生を描いた、浅田次郎氏のベストセラー小説。 学生時代に一度読んだが、懐かしくなって再度手にとってみた。浅田氏は巷で「平成の泣かせ屋」と呼ばれているらしいが、たしかに名場面の数々で…

高杉 良 『勇者たちの撤退 バンダルの塔』

1970年代にイランの石油化学プラント事業に賭けた、日本企業の男たちの戦いと葛藤を描いた小説。 小説ではあるが、関係者への取材をもとに事実にきわめて近い形で描かれており、高度成長期にイランへの投資事業に熱意を投じた登場人物たちの熱がそのまま伝わ…

杉森 久英 『天皇の料理番』

大正から昭和時代にかけて宮内庁の主厨長を務めた秋山徳蔵氏をモデルとして、「天皇の料理番」の生涯を描いた小説。 先ごろ佐藤健主演でドラマ化され、思わず毎週見てしまったので、原作も読んでみた。何をやっても続かないかんしゃく持ちの主人公・篤蔵は、…

フョードル・M・ドストエフスキー 『カラマーゾフの兄弟』

気質も思想も異なるカラマーゾフ家の3兄弟が織りなす人間模様のなかに、神と信仰、家族と愛、様々な問題を織り込んで描いたドストエフスキーの代表作。 物語の中心となるのは、情熱的で豪放磊落なドミートリィ、知性派の無神論者のイワン、純粋無垢の修道者…

長塚 節 『土』

小説家の長塚氏が、自身の体験を元に、明治期のある貧農の厳しい暮らしを写実的に描いた小説。 学生時代にいちど読んだことがあるが、先日『日本の農業150年』という本を読んだのがきっかけで、再度読み直してみた。 茨城県は鬼怒川のほとり、文字通り地べた…

チママンダ・N・アディーチェ 『半分のぼった黄色い太陽』

新進気鋭のナイジェリア人作家による、ビアフラ戦争期の同国南東部(旧ビアフラ共和国)を舞台に、三人の主人公の恋愛や葛藤、喪失を描いた小説。 三人の主人公の顔ぶれは、大学教員の家に務めるハウスボーイ(召使いの少年。田舎から町の裕福な家庭に出てき…

真山 仁 『コラプティオ』

『ハゲタカ』や『ベイジン』で知られる真山氏による、震災後の架空の日本政治とカリスマ宰相のリーダーシップ、その虚構と腐敗を描いた小説。 震災後の日本で、ビジョンと巧みな弁舌によって立て続けに復興政策を立案し、圧倒的な国民的支持を受けて総理に上…

行成 薫 『名も無き世界のエンドロール』

小学校時代からの腐れ縁、ドッキリが生き甲斐のマコトと、それにやられてばかりの城田が、ある秘密の意図をもって史上最大の「プロポーズ大作戦」を仕掛けていく様子を描いた小説。小説すばる新人賞受賞作。 2013年初めに出たばかりの本で、当方全然知らなか…

有川 浩 『県庁おもてなし課』

『図書館戦争』などで知られる有川氏が、実在する高知県庁おもてなし課を舞台に、地元の観光振興に奔走する若手県庁職員の奮闘と恋を描いた小説。 当方の地元の高知県が舞台ということで、同僚から進められて読んでみた。著者の有川氏も高知県出身ということ…

米原 万里 『オリガ・モリソヴナの反語法』

米原氏が、自身のソビエト学校時代の経験を下敷きに綴った、自身初のフィクション。主人公である元ダンサーの志摩が、ソ連崩壊後のモスクワで、プラハのソビエト学校時代に教わった舞踊教師オリガ・モリソヴナのルーツを辿っていく。 エンターテイメントであ…

百田 尚樹 『永遠の0』

来春の映画公開も決まっている、百田氏のデビュー作にしてミリオンセラー。本書の名前だけは知っていたが、友人に貸してもらって読んだところ、あっという間に引き込まれて読了。 主人公である司法試験浪人生が、亡くなった祖母の前夫(血のつながった自分の…

東野 圭吾 『聖女の救済』

東野氏の「ガリレオ」シリーズ、『容疑者Xの献身』(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/30784376.html )に次ぐ2作目の長編。文庫化されたのを機に買ってみた。 一旦は迷宮入りかと思われた事件が、湯川のギリギリとした論理的な推理と草薙の地道な足取り捜…

司馬 遼太郎 『燃えよ剣』

新撰組副長にして後の幕臣、齢35にして函館で命を散らした豪傑・土方歳三の生涯を描いた長編小説。 本書で描かれる土方の生涯はまさに激烈で、「豪傑」を地で行くかの如くである。もともと新撰組は攘夷を掲げて発足したにも関わらず攘夷志士を切りまくったと…

高野 和明 『ジェノサイド』

進化した人類の出現に対して現行人類がどう相対するか、人類の限界と希望を対比させて描いたSF仕立てのミステリー小説。 コンゴに突然現れたたった一人の進化した人類を抹殺する米政府の作戦立案者がつぶやいた言葉を引いて、本作のタイトルは『ジェノサイ…

髙村 薫 『神の火』

過去ソ連に情報を流し続けていた元原子力研究員・島田が、原爆開発の機密情報をめぐる各国の諜報部門の争いに再度巻き込まれ、自らの人生にケリを付けるべく、原子炉圧力容器の蓋を開けるという原発テロを敢行するまでを描いた小説。 髙村氏の初期作品の一つ…

レフ・トルストイ 『アンナ・カレーニナ』

これまで読もうと思っていて読めなかった長編古典小説を読んでみようシリーズその2。 身も蓋もなく一言で言ってしまえば「壮大な不倫小説」なのだが、トマス・マンが「少しも無駄のない、全体の構図も、細部の仕上げも、一点の非の打ち所のない作品」と語っ…

宮部 みゆき 『火車』

ベストセラー作家・宮部氏による、消費者ローン社会の闇を描いた長編ミステリー。 これまで宮部みゆきを全く読んだことなかったので、傑作と名高い本書からまず手に取ってみた。さわりだけ読もうと思って就寝前の午後12時から読み始めたものの、気づいてみれ…

髙村 薫 『リヴィエラを撃て』

髙村薫の4作目にあたる長編小説。謎のコードネーム「リヴィエラ」を巡る元IRAのテロリストと各国情報機関の死闘を描く。 物語の主軸となるのは、元IRAのテロリスト・ジャック・モーガン、警視庁外事課の手島修一、MI6のエージェントで世界的なピアニスト・ノ…

フョードル・ドストエフスキー 『罪と罰』

これまで読もうと思っていて読めなかった長編古典小説を読んでみようシリーズその1。歴史に名を残す文豪の代表作ながら、難解そうな印象が一人歩きして今まで手をつけなかったが、一念発起して読んでみた。 読み始めてみると、主人公ラスコーリニコフの身勝…

髙村 薫 『レディ・ジョーカー』

1997年に刊行され文壇に大きな衝撃を与えた社会小説『レディ・ジョーカー』の文庫版が、昨年ようやく刊行された。1997年当時は敷居が高くて途中で挫折してしまったが、社会人になった今読んで見ると、この小説がもつ広さと奥深さに改めて圧倒される。 1980年…

ジョセフ・コンラッド 『闇の奥』

あまりにも有名なイギリス文学の古典。以前から読もう読もうと思っていたものの時機を逸し、今に至ってようやく時間が取れたもの。 かの「地獄の黙示録」のモチーフになった作品ということでとても期待して読んだものの、貿易会社の出張所長として現地で原住…

アマドゥ・クルマ 『アラーの神にいわれはない ある西アフリカ少年兵の物語』

西アフリカを代表する作家・クルマ氏が、リベリアとシエラレオネの内戦を題材に、架空の少年兵・ビライマの従軍経験を通じて両国の惨劇の様子を語らせるフィクション。 終始スラング口調で読みにくいが、西アフリカの「語り」のリズムをある程度リアルに反映…

チヌア・アチェベ 『Things Fall Apart』

19世紀後半、白人の植民地支配に抗うナイジェリア・イボ族の男の生きざまを描いた、「アフリカ文学の父」アチェベの代表作。学生時代の英語の授業の課題図書として読んで以来8年ぶりに手にとってみた。 主人公は、冒頭「His fame rested on solid personal a…

真山 仁 『マグマ 小説国際エネルギー戦争』

真山氏の小説を最近ずっと読んでいる。本作、「国際エネルギー戦争」は少々大げさだと思うが、原子力や水力の陰に隠れて陽のあたることが少ない地熱発電のメカニズムや電源としての可能性に正面から切り込んでおり、なかなか読み応えがあった。 とある地熱発…

真山 仁 『レッドゾーン』

『ハゲタカ』『ハゲタカII』に続く第3弾。主人公・鷲津のかつての右腕・アランの死の謎が、ようやく明らかになる。 今回、鷲津のバイアウトの対象になるのは、自動車業界の雄・アカマ自動車。日本産業界の象徴であるこの大企業に対し、中・米の投資ファンド…

真山 仁 『ハゲタカ II』

最近読んだ『ハゲタカ』がかなり面白かったので、続編の『ハゲタカ II』を思わず買ってしまった。聞くところによれば、『ハゲタカ』と『ハゲタカ II』はもともとひとつの長編で、真山氏が書きたかったテーマは『ハゲタカ II』で完結する、という。 今回、主…

真山 仁 『ハゲタカ』

1990年代末の日本を舞台に、外資系投資ファンド社長の鷲津が、バブル崩壊以後の苦境にあえぐ金融機関・地方企業を相手に企業買収・再生を仕掛けていく経済小説。『ベイジン』が面白かったので、真山氏の代表作といえる本作を出張先に持っていって、帰りの機…