Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

東野 圭吾 『聖女の救済』

 東野氏の「ガリレオ」シリーズ、『容疑者Xの献身』(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/30784376.html
)に次ぐ2作目の長編。文庫化されたのを機に買ってみた。

 一旦は迷宮入りかと思われた事件が、湯川のギリギリとした論理的な推理と草薙の地道な足取り捜査から、徐々に真実に近づいて行く展開からは目が離せない。も終盤で明らかになるトリックは、湯川曰く「虚数解(理論上はあり得ても現実にはあり得ない)」。しかしこのトリックがなければ、「おそらく君たちは負ける。僕も勝てないだろう。これは完全犯罪だ」。湯川のこの決め台詞があるからこそ、このトリックが実際に明かされる終盤で、読者の感じるカタルシスは倍増される。容疑者である綾音の人物描写も秀逸で、読み進めるうちに、この人物であればこの「虚数解」をなし得る、といつの間にか納得させられる。
 ただ、『容疑者Xの献身』がものすごく良かっただけに、読み進める中でどうしても粗捜しをしてしまうところはある。トリックの仕掛けが序盤では明確に描写されず、中盤に入ってようやく読者に十分な手がかりが与えられるのは東野作品では良くあることらしいが、本作でも、トリックの主役である浄水器がそもそもどんな浄水器なのか、ちょっと分かりづらい。最初、水道蛇口にそのまま取り付けるタイプのことを言ってるのかと思ったが、どうやら別の箱で濾過し水道蛇口とは別のところから水が出るタイプのことらしく、途中でページを手繰る手を止めて思わずインターネットで「浄水器」を画像検索してしまった。作中では結局判然としないが、もしこんなどでーんとした浄水器だったら(http://www.pinet.co.jp/text/lc_mw.html
)、湯川に相談するまでもなく、警察の誰もが「これは怪しい!」と思ってしまいそうだが・・・。
 しかしエンターテイメントとしてはやっぱり一級品。あと、どうしても福山雅治柴咲コウを思い浮かべてにやにやしながら読んでしまうので 笑、この際『容疑者Xの献身』と同じく映像化を希望。

(2012年、文春文庫)

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