Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

フィクション

佐藤 優 『外務省ハレンチ物語』

新入職員を省内で手にかける首席事務官や公費を使って家事補助員を囲う公使など、外務省職員の呆れる生態を暴露した一応「フィクション」。帯のキャッチコピーも「個人名除いてほぼ実話」。読んでみると、登場するキャリア外交官の呆れる性癖には思わず失笑…

真山 仁 『ベイジン』

日本の原発プラントメーカーから派遣された主人公・田嶋が、中国大連市の世界最大級原発建設の技術顧問として派遣され、同国共産党の権力闘争や技術力の制約と戦いながら運転開始を目指すエンタテイメント・フィクション。 党中央規律検査委員会から原発運転…

東野 圭吾 『白夜行』

飛行機に乗り込む前の成田空港の売店でふと眼にした分厚い文庫。昨年末に読んだ『容疑者Xの献身』で思わず「やられた!」と思わされた東野氏の作品ではないか。しかも以前、綾瀬はるかが主演していたドラマ(最終回の最後10分だけ見た)の原作本ではないか…

山崎 豊子 『不毛地帯』

①本の紹介 『白い巨塔』や『沈まぬ太陽』などで知られる山崎氏の長編小説。シベリア抑留地や戦後の総合商社を舞台に、旧日本陸軍作戦参謀・壱岐の苛烈な生き様を描く。 ②印象に残ったパート 終戦直後、関東軍に停戦を伝える大本営命令を帯びて壱岐は満州に飛…

東野 圭吾 『容疑者Xの献身』

①本の紹介 ドラマ・映画でも知られる東野氏の「ガリレオ」シリーズ、3冊目にして初の長編。直木賞受賞作。かつての友人である天才数学者・石神が仕掛けた完全犯罪の謎に、主人公の物理学者・湯川が挑む。 ②印象に残ったパート 石神が思いを寄せるアパートの…

城山 三郎 『官僚たちの夏』

①本の紹介 1960年代、海外から「Notorious MITI」と揶揄された通産省を舞台に、異色の大物官僚・佐橋滋氏をモデルとした主人公「ミスター通産省」風越と、政策をめぐる政財界との争い、省内人事の攻防を描く。 ②印象に残ったパート 物語の冒頭で、主人公・風…

ジャック・ケッチャム 『隣の家の少女』

①本の紹介 米国ホラー界の奇才が、実在した事件をもとにつづるサスペンス小説。主人公ディヴィッドの隣のチャンドラー家に引き取られてきた少女メグが、チャンドラー親子によって虐待・死に追い込まれていくさまを、傍観者としての視点から精緻に綴っていく…

ヤン・ソギル 『闇の子供たち』

タイを舞台に幼児売春や臓器売買の実態を描くフィクション。本作を原作とする映画が2008年9月のバンコク国際映画祭での上映を中止されるなど、その衝撃的な内容が話題となった作品。 全編を通じて登場するタイ山岳地帯に住む少数民族の姉妹が、本作の主題を…

帚木 蓬生 『アフリカの瞳』

職場の異動でドタバタし、ずいぶん長いことご無沙汰してしまいました。読んだままこちらに記事をアップしていない本がたくさんあります・・・徐々に更新していきます。 さて、南アフリカ共和国のエイズ渦を題材に、日本人医師・作田が、政府が喧伝する国産抗…

ヴィカス・スワラップ 『ぼくと1ルピーの神様』

2008年アカデミー賞受賞『スラムドッグ$ミリオネア』の原作小説。インドの外交官スワラップ氏の処女作で、現在までに37カ国語に翻訳されているとのこと。映画を見に行く時間がなかなか取れなさそうなので原作の小説を買って週末に読んでしまいました。さす…

アーネスト・ヘミングウェイ 『誰がために鐘は鳴る』

20世紀アメリカ文学の巨匠・ヘミングウェイの長編小説。買ったまま未読だったものを休日中に読破。 舞台は1930年代のスペイン内戦。アメリカから来た共和政側の義勇兵・ロバートが、爆破工作の協力者であるゲリラの隠れ家にかくまわれていた女性・マリアと恋…

アルバート・カミュ 『ペスト』

フランスのノーベル文学賞受賞作家・カミュの長編小説。学生の時代に購入しておきっぱなしにしていたものを読破。 ペストに襲われた架空の北アフリカの町を舞台に、主人公の医師リウーをはじめとする町の人々が隔絶された町の中でいかに不条理の象徴たるペス…

小林 多喜二 『蟹工船/一九二八・三・一五』

いま『蟹工船』が再度ブームになっているらしい。ニュースによれば、新潮文庫版は2008年上半期になんと40万部を増刷。「言われてみれば、まだちゃんと読んでないなあ」と思い岩波文庫版を購入。 劣悪な環境に押し込まれ、来る日も来る日も極寒の海で蟹を取り…

横山 秀夫 『半落ち』

映画化もされた横山秀夫さんのベストセラー小説。 本屋でふと手に取り、さくっと読了。 アルツハイマーの妻を手にかけた嘱託殺人の犯人、梶聡一郎。殺害方法や動機については「落ち」た ものの、事件後に自首にいたるまでの空白の「2日間」が謎に包まれた「…

伊集院 静 『アフリカの王』

ケニア南西・マサイマラ国立保護区の丘の上に、ホテルを建てる― 実在のホテル「ムパタ・サファリ・クラブ」 http://www.mpata.com/japanese/index.html と、それを建てた一人の日本人を題材にした伊集院さんの小説。 ケニア在住歴のある会社の先輩に借りて読…

遠藤 周作 『深い河』

遠藤周作氏のベストセラー小説。人間の死を淡々と受け入れるガンジス河のほとり・ヒンズー教の聖地ヴァラナシを舞台に、それぞれの過去を背負った日本人の思いが交錯します。 いちばん印象的なのは、ミッション系の大学に通いキリスト教を信仰しながら、その…

井上 靖 『氷壁』

史実である北アルプス・穂高連峰の屏風岩で起こった1955年「ナイロンザイル切断事件」を題材にした井上靖の新聞小説。おととしもNHKでドラマ化されるなど、依然版を重ねている井上靖の代表作のひとつ。 先週末に穂高に登ったときに、涸沢小屋の本棚にあった…

司馬 遼太郎 『竜馬がゆく』

去年途中まで読んでほったらかしにしていた『竜馬がゆく』、文春文庫全8巻。今週末ごろごろしていた間に一気に読了。 世間一般に形作られた坂本竜馬のイメージは、1960年代に司馬遼太郎が世に出したこの小説がおおむね基になっています。 司馬遼太郎は、彼…

吉村 昭 『高熱隧道』

最近、吉村文学に文字通りはまっています。明治~昭和期の想像を絶する男達の生き様に、時間を忘れて一気に読み進んでしまいます。 この本は、昭和11年~15年の黒部第三発電所建設のための難工事を題材にしたフィクションです。当時の富山で一般人の立ち入り…

吉村 昭 『破獄』

先週末に北海道のドライブ中に、とある道の駅で見かけた「網走監獄」のパンフレット。結局網走には行かなかったのですが、東京に戻ってきた後に読んだのがこの小説。読み始めると止まらず、一気に最後まで読み進んでしまいました。 「昭和の脱獄王」と呼ばれ…

井上 靖 『蒼き狼』

井上靖の小説を最近読み始めました。 今回読んだ『蒼き狼』。冗長な情景や心理描写はなく、主人公であるチンギス・ハーンの行動と思考の変遷を淡々と並べる構成。小気味よいテンポで、13世紀のモンゴル高原が生んだ世紀の英雄/征服者の生涯を描きます。 ま…

J・K・ローリング 『Harry Potter and the Deathly Hallows』

あまりにも有名なシリーズの最終巻。ようやく読み終えました。半年前に半分くらい読んでほったらかしにしていたのを、週末二日酔いでごろごろしている間に一気に読了。率直な感想↓ 1.登場人物死にすぎ。 2.エピローグのハリーの子供のネーミングが絶妙。…

吉村 昭 『熊嵐』

一昨年に没した大作家・吉村さんが、大正4年に北海道手塩山麓の開拓村を恐怖の渦に巻き込んだ「日本獣害史上最大の惨事」を元に描き、1977年に発表したドキュメンタリー小説。 230ページほどの文庫本で、短時間で読めます。アマゾンの紹介コーナーで…

森 絵都 『風に舞い上がるビニールシート』

直木賞作家・森さんの短編集。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の東京事務所を舞台にした小説が入っているので、それを目当てに読んでみました。他の5編をあわせて、全6編。 お目当てのUNHCRの編は、本のタイトルにもなっている「風に舞い上が…

横山 秀夫 『クライマーズ・ハイ』

ふだんはあまり小説は読まないのですが、まわりの人たち(友達とか)の評判があまりにも良かったので、ついつい買ってしまいました。横山さんの小説は概して評判が良いらしいですが、そのなかでもこの本は傑作との由。 舞台は架空の地方新聞社、北関東新聞の…