小林 多喜二 『蟹工船/一九二八・三・一五』
劣悪な環境に押し込まれ、来る日も来る日も極寒の海で蟹を取り、缶詰を作り続ける労働者。病気による死者も出るが、本社の「監督」は容赦なく労働者をこき使う。
たまりかねて労働者はストライキを起こすが、帝国海軍の駆逐艦が横付けされ、運動の首謀者は逮捕されてしまう。小林多喜二が後年述懐するように、ここに「帝国軍隊-財閥-国際関係-労働者」という当時の関係が象徴的に浮き彫りにされる。
たまりかねて労働者はストライキを起こすが、帝国海軍の駆逐艦が横付けされ、運動の首謀者は逮捕されてしまう。小林多喜二が後年述懐するように、ここに「帝国軍隊-財閥-国際関係-労働者」という当時の関係が象徴的に浮き彫りにされる。
一方の『一九二八・三・一五』は、自分もはじめて知りましたが、当時の内務省直下の特高警察による残虐な拷問の実態をはじめて公に知らしめた小説だったようです。いわゆる「三・一五事件」、共産党事件における小樽での実話を題材にしていますが、身も凍る拷問の描写が淡々とつづられていきます。
この小説を書いたとき、小林多喜二はわずか24歳。それから5年後、彼はまさにその特高に手によって命を落とすことになります。
この小説を書いたとき、小林多喜二はわずか24歳。それから5年後、彼はまさにその特高に手によって命を落とすことになります。
プロレタリア文学の「古典」として半ば忘れ去られようとしていた小林多喜二の作品群。
これらが今ふたたび注目を集めているという事実の背景には、暴走する資本市場経済と拡がる経済格差に対する社会の人々の憤りがあると思います。
ソ連邦崩壊後、マルクス思想・社会主義思想は世界中で下火になりましたが、マルクスの思い描いた資本主義社会の次のパラダイムは、案外21世紀になって再び息を吹き返すことになるのかもしれません。
これらが今ふたたび注目を集めているという事実の背景には、暴走する資本市場経済と拡がる経済格差に対する社会の人々の憤りがあると思います。
ソ連邦崩壊後、マルクス思想・社会主義思想は世界中で下火になりましたが、マルクスの思い描いた資本主義社会の次のパラダイムは、案外21世紀になって再び息を吹き返すことになるのかもしれません。
(岩波文庫、1951年発行)