箭内 昇 『メガバンクの誤算 銀行復活は可能か』
もと長銀(日本長期信用銀行)の役員・箭内さんによって書かれた、2002年当時の日本の大手銀行のウィークポイントについて分析した新書。
タイトルにあるメガバンクのみならず、批判の対象は銀行業界の対異質そのものにも向かいます。2002年から現在までの6年間の間に日本の金融業界も様変わりしましたが、当時の銀行業界の内幕に改めて光を当てるという意味で、今回この本を読んでさまざまな発見がありました。
タイトルにあるメガバンクのみならず、批判の対象は銀行業界の対異質そのものにも向かいます。2002年から現在までの6年間の間に日本の金融業界も様変わりしましたが、当時の銀行業界の内幕に改めて光を当てるという意味で、今回この本を読んでさまざまな発見がありました。
とりわけ、ともに「愚かなる80年代」を経たのち、90年代にいかに米銀が復活し、邦銀が没落したか、米銀と邦銀の対比に切り込んだ弟3章・弟4章はとても興味深く読めました。邦銀と米銀の違いは;
1.金融技術やAlMなどの財務戦略に代表される「チャレンジ精神」
2.顧客サービスの差
3.リスクの勉強:「変動の時代」は「リスクの時代」
4.金融界のなかでの相互補完
5.金融工学の発展
6.激しい競争と企業淘汰
1.金融技術やAlMなどの財務戦略に代表される「チャレンジ精神」
2.顧客サービスの差
3.リスクの勉強:「変動の時代」は「リスクの時代」
4.金融界のなかでの相互補完
5.金融工学の発展
6.激しい競争と企業淘汰
加えて90年代、日本のバブル問題の処理が長引いた事実は、銀行経営者と金融当局の能力と意識、モラルといった内面的要素に起因する、と喝破します。
第5章「自壊の風土」では、日本の大手銀にある三つの「ない」風土、すなわち「危機感の欠如」、「サービスの欠如」、「競争回避とカルテル志向」を明らかにします。
弟6章のタイトルは「突き詰めれば人事」。銀行員の体質そのものに警鐘をならします。ここでも3点、「一流意識」、「隠蔽癖」、「モラルハザード」。
第5章「自壊の風土」では、日本の大手銀にある三つの「ない」風土、すなわち「危機感の欠如」、「サービスの欠如」、「競争回避とカルテル志向」を明らかにします。
弟6章のタイトルは「突き詰めれば人事」。銀行員の体質そのものに警鐘をならします。ここでも3点、「一流意識」、「隠蔽癖」、「モラルハザード」。
不良債権処理が進みメガバンクが軒並み最高益をたたき出している現在、日本の銀行は、本書のテーマであった「信頼回復」と「企業風土の改革」を達成したのでしょうか。
経営に単一の最適解がないように、銀行のみならず他の企業・組織においてもこれらは重大な課題といえますが、金融業界の場合はあまりにも戦後護送船団方式の時代のツケが大きすぎました。
経営に単一の最適解がないように、銀行のみならず他の企業・組織においてもこれらは重大な課題といえますが、金融業界の場合はあまりにも戦後護送船団方式の時代のツケが大きすぎました。
さて、アメリカでは今週日曜に証券4位・リーマンブラザーズが破産申請、銀行2位バンクオブアメリカが証券3位・メリルリンチを買収。昨今の金融業界の移り変わりの速さは、1990年代のそれを明らかに上回っています。
人類は(というのは誇大し過ぎかもしれませんが)、一体いつまで、自らが生み出した金融システムと増えすぎたマネーの「負」の連鎖に、振り回され続けることになるのでしょうか。
(中公新書、2002年発行)