Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

経済

井出 穣治 『フィリピン 急成長する若き「大国」』

元IMF職員としてフィリピンに関わった日本銀行の井出氏が、フィリピンの近年の経済・社会について包括的に紹介する新書。 近年(少なくともCOVID-19の発生前まで)アジアの中でも急激な経済発展を遂げていた、かつての「アジアの病人」フィリピン。他のアジ…

イアン・エアーズ 『その数学が戦略を決める』

計量経済学者のエアーズ氏(イェール大学)が、「絶対計算」(ビッグデータの分析)が現実社会の意思決定にもたらしつつある影響を分かりやすく解説した本。 本書は2つのまとまりに大きく分かれており、前半は回帰分析と無作為抽出テストの手法の解説、それ…

伊藤 公一朗 『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』

計量経済学者の伊藤氏(シカゴ大学)が、ランダム化比較実験等のデータ分析手法を解説した新書。 最近、仕事の中でデータを集めたり分析したりすることが多かったので、書店で目に入ったときに思わず購入。平易でわかりやすく、事例も豊富な良書。著者のご年…

藻谷 浩介、NHK広島取材班 『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』

NHK広島取材班と『デフレの正体』の藻谷氏が、マネー資本主義に替わる処方箋の提示を試みた新書。 「里山資本主義」は、NHK広島取材班が編み出した造語。取材班の井上氏は、以前本ブログでも紹介した「マネー資本主義」の番組を手がけており、金融が実体経済…

加藤 洋輝・桜井 駿 『決定版 FinTech 金融革命の全貌』

NTTデータ研究所の加藤氏・桜井氏が、IT技術を駆使した新たな金融サービス(フィンテック)を概説した本。 フィンテックの入門書はこの本以外にもたくさん出ているが、構成が分かりやすそうなだったので手にとってみた。読んだのは少し前だが、備忘録として…

マイケル・ルイス 『ライアーズ・ポーカー』

元ソロモン・ブラザーズの債券セールスマン・ルイス氏が、同銀行に勤務した経験とモーゲージ債の勃興を描いたノンフィクション。 ルイス氏の『世紀の空売り』があまりにも面白かったので、同氏の処女作である本書も手に取ってみた。かつて「ウォール街の帝王…

マイケル・ルイス 『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』

元投資銀行員のライター・ルイス氏が、サブプライムローンの破綻に賭けた男たちを描いたノンフィクション。 以前から評判を知っていたが読んでおらず、債券を勉強していた最近になって読んでみた。読み始めてすぐに、もっと早く読まなかったことを後悔。巻末…

ニーアル・ファーガソン 『マネーの進化史』

ハーバード大学の歴史学教授・ファーガソン氏が、金融制度の発達の歴史を、種の進化になぞらえて解説した本。 本書は、信用制度(通貨と信用)、債券市場、株式市場、保険、不動産市場、国債金融市場から成る6章から成っている。それぞれの金融制度がどのよ…

加賀 隆一 編著 『プロジェクトファイナンスの実務』

国際協力銀行のプロジェクトファイナンス部長(当時)である加賀氏を中心に、実際に同業務に携わる実務者たちが、その概要と実務上のポイントについて解説した本。 当方は実際にプロジェクトファイナンスの組成や、そうしたプロジェクトに直接関わったことは…

アラン・グリーンスパン 『波乱の時代』

1987年から2006年まで史上最多の5期に渡ってFRB議長を努めたグリーンスパン氏の回顧録。上巻は、グリーンスパン氏の生い立ちからFRB議長を5期務めるまでの文字通りの回顧録であり、下巻は、こうした経験をもとに国際経済上や主要課題や今後の見通しに対する…

NHK取材班 『マネー資本主義 暴走から崩壊への真相』

同名の「NHKスペシャル」(2009年)で放映された内容を、取材の経緯や関係者インタビューの詳細を含める形で書籍化したもの。 ①金融危機の主役となった投資銀行の関係者、②「超金余り」を演出した政策立案者、③ハイリスク商品に手を出した機関投資家、④証券…

ジャック・アタリ 『国家債務危機 ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』

『21世紀の歴史(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/19050159.html )』等で知られるアタリ氏が、過去の歴史を紐解きながら、世界の公的債務問題に対する現状と対策をまとめた単行本。原著は2010年5月発行。 『21世紀の歴史』で見られた、関連する過去の歴史…

ポール・クルーグマン 『クルーグマン教授の経済入門』

1994年に第1版が発行された、当時MIT教授のクルーグマン氏による、アメリカ経済の諸問題の解説書。生産性、所得分配、雇用と失業、貿易赤字、インフレ、ヘルスケア、財政赤字、金融政策、ドル、貿易、日本問題。既に第1版発行から15年以上が経過したが、米国…

藻谷 浩介 『デフレの正体 経済は人口の波で動く』

日本政策投資銀行で地域振興に長年携わってきた藻谷氏が、各地での講演内容をもとに書き下ろした新書。「内需が拡大しないのは不景気のせいだ」という俗説を廃し、経済に本当の意味で影響を与えるのは生産年齢人口(現役世代の数)であると主張する。 日本の…

斎藤 貴男 『経済学は人間を幸せにできるのか』

小泉改革批判で知られるジャーナリストの斎藤氏が、経済と経済学の課題について、中谷巌、佐和隆光、八代尚弘、井村喜代子、伊藤隆敏、金子勝の各氏にインタビューした結果をまとめた本。各氏の思想的背景や経済の実際問題についての率直な意見が語られてい…

高橋 洋一 『日本経済のウソ』

日本経済の低迷はデフレによるものであり、その元凶は日銀にある、と明快に説明する本。 「実は日本の景気が悪いのは、サブプライムローン破綻の余波というより、2006-07年の金融引き締めが原因です」と言い切る。日銀がよくデフレの原因としてあげる低成長…

浜田 宏一、若田部 昌澄、勝間 和代 『伝説の教授に学べ!本当の経済学が分かる本』

タイトルが若干走りすぎている気もするが、リフレ派の浜田氏による痛烈な日銀批判。一般的なデフレの理解にも役立つ。 冒頭から、「日本銀行総裁への公開書簡」のなかで「言ってみれば、いまの日本銀行は、金融システム安定化や信用秩序維持だけを心配して、…

猪木 武徳 『戦後世界経済史-自由と平等の視点から』

ヨーロッパ行きの飛行機の機内というのは読書をする環境にはもってこいである。何しろパリまで12時間。昼間に搭乗しようものなら、流行の映画を見て、酒を飲んで、機内食を食べて、PCのバッテリーが切れるまで仕事をして、まだ時間が有り余る。というわけで…

ジャン=ピエール・ボリス 『コーヒー、カカオ、コメ、綿花、コショウの暗黒物語』

われわれが普段何気なく口にするコーヒーやチョコレート。その原料となるコーヒー豆やカカオ豆がどのように生産・取引されているのか。グローバリゼーションの陰で生産者がどのような苦痛を被ってきたのか。利益が一部の多国籍企業や投資ファンドに集中する…

白川 正明 『現代の金融政策 理論と実際』

現日本銀行総裁の白川氏が京大教授時代に著した中央銀行の金融政策についてのテキスト。単行本で445ページと分厚さがありますが、各章の記述は明快。 「そもそも中央銀行とは何か」から、今後の中央銀行の役割についての展望まで。これ一冊に目を通せば、金…

中谷 巌 『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』

一橋大学名誉教授、小泉構造化改革のブレーンとして知られた中谷氏による「懺悔の書」。同氏は、若き日にハーバード大学に留学、「古きよきアメリカ」の文化と気風に影響を受け、帰国後は日本の構造改革の理論的支柱として活躍。 この本は、資本主義の行き過…

日本経済新聞社 編 『実録・世界金融危機』

日本経済新聞で2008年12月に掲載された特集をベースに大幅に加筆修正された、現行の世界金融危機についての検証本。構成は少々粗いですが、危機の遠因と引き金、米国政府の対応策などについてコンパクトにまとめた、日経ならではの文庫本。危機の全体像を手…

ポール・クルーグマン 『世界大不況からの脱出』

プリンストン大学教授、ニューヨークタイムズ紙コラムニストのクルーグマン氏による新著。初版はアジア通貨危機後に出版され、今回出版された第二版は、2008年のリーマンショック後の危機に対する考察について大幅に加筆されたもの。 クルーグマン氏は、今回…

ポール・クルーグマン 『良い経済学 悪い経済学』

昨年ノーベル経済学賞を受賞、「ニューヨーク・タイムズ」の辛口コラムニストとしても知られる国際経済学者・クルーグマン氏が1990年代前半に公表した論文・エッセイをまとめた文庫本。「出版年が古い」と侮るなかれ。289ページの文章は、世界経済・米国経済…

榊原 英資 『間違いだらけの経済政策』

元財務官で早大教授の榊原氏による新著。マクロ経済理論の限界や、ミクロの構造改革、農林水産業の振興、資源エネルギー分野での政府の役割強化、円高志向への転換などの必要性について、同氏の主張を簡潔にまとめた本。 1.マクロ経済理論の限界 榊原氏は…

真屋 尚生 『保険の知識』

最近、ふと生命保険も自宅の火災保険も障害保険も、何も保険らしい保険に加入していないことに気づき 苦笑、まずはこの新書を手にとって見ました。いつもおなじみ日経文庫。 版を重ねているだけあって、「そもそも保険とは何か」から始まり、各種商品の特徴…

C・シャヴャニュー、R・パラン 『タックスヘイブン グローバル経済を動かす闇のシステム』

フランスの経済ジャーナリスト・シャヴァニュー氏とサセックス大学国際関係学部のパラン教授による共著。 知っているようで詳しく知らない「タックスヘイブン」。バミューダ諸島やケイマン諸島、マネーロンダリングや租税忌避、といったキーワードが思い浮か…

堀之内 朗、武内 浩二 編著 『債券取引の知識』

債券取引の基礎知識について凝縮された日経文庫、第二版。第一版の著者である堀之内氏が「まえがき」で述べているように、ありそうでない「債券に関する簡単な入門書」になっています。 自分も債券市場関連の案件に仕事でかかわっているので、今さらながら基…

箭内 昇 『メガバンクの誤算 銀行復活は可能か』

もと長銀(日本長期信用銀行)の役員・箭内さんによって書かれた、2002年当時の日本の大手銀行のウィークポイントについて分析した新書。 タイトルにあるメガバンクのみならず、批判の対象は銀行業界の対異質そのものにも向かいます。2002年から現在までの6…

統合リスク管理研究会 『銀行員のための統合リスク管理入門』

金融機関のリスク管理について勉強中。というわけでアマゾンで古書を購入。少々古いですが、あくまで概念を勉強するための入門書、ということで。 ・統合リスク管理とは何か? ⇒これまで一部の部門・分野でしか発達してこなかったリスク管理の取り組みを金融…