Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

浜田 宏一、若田部 昌澄、勝間 和代 『伝説の教授に学べ!本当の経済学が分かる本』

 タイトルが若干走りすぎている気もするが、リフレ派の浜田氏による痛烈な日銀批判。一般的なデフレの理解にも役立つ。

 冒頭から、「日本銀行総裁への公開書簡」のなかで「言ってみれば、いまの日本銀行は、金融システム安定化や信用秩序維持だけを心配して、その本来の重要な任務であるマクロ経済政策という『歌』を忘れたカナリヤのようなもの」と手厳しい。
 日銀が「日銀流理論」にしがみつき続ける理由としては、「本当によくわかりませんが、おそらく、失敗をしないようにという意識が年々、積み重なって出来上がった一種の伝統ではないか、と思います」「これはもしかすると自分たちの影響下にある短資会社の利害の問題のせいかもしれませんし、デフレで相対的に得をする富裕な人の利益を代表しているのかもしれません」と述べている。対談者の若田部氏は、「1つには1970年代の大インフレの記憶というか、残像が根強く残っているのかなという気もします」と付け加えている。
 日本経済に決定的な影響力を持つ組織でありながら、その内実については知られることが少ない日本銀行。「通貨と金融の調節」という専門的な事項を取り扱う組織だからなのか、国会やマスコミでおおっぴらに批判されることは少ない。いろいろと難しい向きもあろうが、ここはひとつ本書の「公開書簡」に対する「回答」が欲しい。日本銀行(と政府)がデフレをどのような問題として捉え、どのような対策を想定しているのか。「成長基盤強化」のための貸出制度(http://www.boj.or.jp/theme/seisaku/syudan/ope/ope_b02/index.htm
)だけでは物足りない。

 浜田氏らがデフレ脱却のために挙げる政策としては、インフレ・ターゲットの導入、長期国債社債の買いオペを通じた「広義の」金融緩和、財務省を通じた円売り・ドル買いの為替介入、ひいては日銀法の改正まで視野に入る。政府月例経済報告(http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei.html
)でも、政府の公式見解は依然として「デフレ」。「失われた20年」が「20年」で区切りを迎えるのか、「失われた30年」への序曲となるのか、現政権・日銀にとっては、今が道の分かれ目である。
 
(2010年、東洋経済新報社



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