Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

真屋 尚生 『保険の知識』

 
 最近、ふと生命保険も自宅の火災保険も障害保険も、何も保険らしい保険に加入していないことに気づき 苦笑、まずはこの新書を手にとって見ました。いつもおなじみ日経文庫。
 版を重ねているだけあって、「そもそも保険とは何か」から始まり、各種商品の特徴、生保・損保業界の最近の動向にいたるまで、保険に関する必要な情報をもらさずコンパクトに伝えてくれます。


1.損害保険の生命保険の違い

 簡単に言えば、法律の問題。そもそも日本の商法が、損害保険契約と生命保険契約を対置させていることに起因するらしい。その分類は現行の保険業法でも生きている。そしてその分類の背景には、企業が主な加入者であった「企業保険」としての損害保険と、個人が主な加入者であった「家計保険」としての生命保険とを同一の業者に扱わせることで、利益率の高い企業向けサービスが優先され個人向けサービスがないがしろにされる可能性への危惧、「消費者保護の思想・施策の萌芽」があった。

 
2.公的保険の種類

 冒頭で「何も保険に入っていない」と書きましたが、それはあくまで「民間保険」の話で、「共済」や「公的保険」にはしっかり入っていました・・・。
 当たり前ですが、年金保険や医療保険といった「公的保険」もりっぱな保険。その他にも介護、雇用、労災の各種保険が公的なセーフティネットとして用意されています。しかし少子高齢化をはじめとする社会構造の変化に対応し切れていない面も。保険ごとの個別の論点はまた別の機会に譲ります。


3.「かんぽ」の沿革

 郵貯と並んで郵便局が扱っていたあまりにも有名な金融商品、簡易(生命)保険。始まりは1916年、国の直営事業として始まった。その理由は、①事業の基礎を強固にするため、②社会政策的な観点から非営利事業とするため、③既設機関を利用することで経費を節約するため、④郵便局ネットワークを使って事業を普及させるため。社会保険的な性格を持ち合わせていたといえる。郵便・郵貯との兼業、地域密着型という利を生かして、圧倒的な保険資金額を有するに至った。
 ただしその簡易保険も、戦後の経済成長に伴う民間生命保険の充実によって、徐々にその公的な意義は薄れていく。郵政民営化によって簡易保険会社も民営化され、今後は既存の民間との競合・差別化が大きな課題となっている。


 ちょうどこの本を読み終えた頃(少し前になりますが)、損保ジャパンらによる損保業界再編のニュースが入ってきました。少子高齢化、IT・金融技術の発達、顧客ニーズの多様化。保険商品と保険業界を取り巻く情勢はまさに日替わりで変化しているようです。
 まずはともかく自分が加入している保険について把握することから始めねば・・

                            (日経文庫、第2版 2004年発行)


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