Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

アジア

井出 穣治 『フィリピン 急成長する若き「大国」』

元IMF職員としてフィリピンに関わった日本銀行の井出氏が、フィリピンの近年の経済・社会について包括的に紹介する新書。 近年(少なくともCOVID-19の発生前まで)アジアの中でも急激な経済発展を遂げていた、かつての「アジアの病人」フィリピン。他のアジ…

ブラッドレー・マーティン 『北朝鮮「偉大な愛」の幻』

米国人ジャーナリストのマーティン氏が、文献調査や現地取材、亡命者からの聞き取りによって、北朝鮮の内実を解き明かす本。 時系列でいうと、金日成の生い立ちからから建国、金正日への権限委譲、金正日によって軍事独裁国家になるまでの北朝鮮を描く。執筆…

高杉 良 『勇者たちの撤退 バンダルの塔』

1970年代にイランの石油化学プラント事業に賭けた、日本企業の男たちの戦いと葛藤を描いた小説。 小説ではあるが、関係者への取材をもとに事実にきわめて近い形で描かれており、高度成長期にイランへの投資事業に熱意を投じた登場人物たちの熱がそのまま伝わ…

マハティール・ビン・モハマド 『マハティールの履歴書 ルック・イースト政策から30年』

マレーシア元首相・マハティール氏の自伝の一部に、日経「私の履歴書」の同氏連載を合わせて一冊にした本。 自伝の原著は分厚い本だが、出版社の都合により、邦訳は一部を抜粋した形にならざるを得なかったとのこと。それでも主要な章を抜き出し、同氏の生い…

リュック・フォリエ 『ユートピアの崩壊 ナウル共和国』

かつてリン鉱石輸出によって栄えながら、その枯渇と放漫な財政運営によって破綻した南太平洋の島国・ナウルの歴史を描いたノンフィクション。 ナウルに初めて外国人がやってきたのは1798年。1896年にリン鉱石が見つかり、イギリス・ドイツ資本によって1907年…

NHKスペシャル取材班 『続・インドの衝撃 猛烈インド流ビジネスに学べ』

前回紹介した「インドの衝撃」の続編として2008年7月に放映されたNHKスペシャルの内容を単行本化したもの。今回は、インド国内の貧困層向けビジネス、インド企業による日本の製薬企業の買収を通じてみるインド流経営の実態、世界に股をかける印僑パワーの3点…

NHKスペシャル取材班 『インドの衝撃』

2007年に放映されたNHKスペシャル「インドの衝撃」の内容を単行本化したもの。現代インドの多様な側面のうち、経済発展を支える人材育成、11億人の消費パワー、外交大国としての政治力の3点を取り扱う。 21世紀はアジアの世紀である、と言われて久しい。その…

山際 素男 『破天 インド仏教徒の頂点に立つ日本人』

全インド仏教徒の指導者として、不可触民解放と仏教復興に尽力する日本人・佐々井秀嶺氏の半生を綴った伝記。 当方はインドや仏教の方面についてとんと疎いこともあって、先日インドフリークの同僚から本書の存在を教えてもらって初めて佐々井氏の存在を知っ…

赤松 明彦 『楼蘭王国 ロプ・ノール湖畔の四千年』

歴史学者の赤松氏による、楼蘭に関する最新の研究成果を紹介する新書。 地名としての「楼蘭」は、ロプ・ノール湖の西、タリム盆地の東の入り口に位置したオアシス都市とその地域一帯のことを指す。紀元前2世紀には「楼蘭王国」の名が『史記』に登場する。同…

蓮池 透 『奪還 引き裂かれた二十四年』

「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」の元副代表・蓮池透氏が、実弟の拉致被害者・薫氏の拉致から帰国までの24年間にわたる苦闘を綴った手記。 本書によれば、警察庁や外務省は各失踪事案が発生した直後から北朝鮮による拉致を確信していたようだが、外交事…

読売新聞中国取材団 『メガチャイナ 翻弄される世界、内なる矛盾』

現代中国の膨張と矛盾、その世界各地での影響をルポした読売新聞の連載をまとめた新書。 現代中国の爆発的なエネルギーについては今更語るまでもないが、本書を読んで改めてほうと思ったエピソード; ・中国企業はテロのリスクを承知で、アフガニスタンでも…

ハン・ウォンチェ 『脱北者』

北朝鮮から中国への脱出を図った北朝鮮の技術者・ハン氏が、はじめて強制送還されてから三度目の脱北を果たすまでの体験を記したエッセイ。村上龍氏が『半島を出よ』を執筆するきっかけの一つが、本書を読んだことだったという。 北朝鮮で優秀な技術者として…

ソマリー・マム 『幼い娼婦だった私へ』

カンボジアの性的被害者救援組織アフェシップ(http://www.afesip.org/ )の創立者・マム氏の自叙伝。自らも8年間を売春宿で過ごしたマム氏の半生は、壮絶の一言に尽きる。 カンボジアの社会に根付く男尊女卑・歪んだ所有欲の風潮は相当に根深いもののようだ…

スーザン・L・シャーク 『中国 危うい超大国』

米国における中国研究の第一人者・シャーク教授による現代中国論。共産党の組織と権力、不安定な統治構造、台湾・米国・日本との対外関係の背景、爆発的な経済成長の光と影。偏った視点から現代中国を論じる本は数あれど、ここまで本質的かつ包括的に現代中…

フィリップ・ショート 『ポル・ポト ある悪夢の歴史』

クメール・ルージュの指導者ポル・ポトの決定的評伝。ポル・ポトの出生から青年期の思想形成、政権期の党指導部の動向、晩年の変節に至るまで。カンボジアの大地にどのようにして「キリング・フィールド」が生じたか、本書を読めばかなりのことが分かる。 本…

ユン・チアン、ジョン・ハリデイ 『マオ 誰も知らなかった毛沢東』

休日に区の図書館をぶらぶらしていて見つけた『マオ』。学生時代にいちど手に取ったものの当時は時間がなくて読めなかったのだが、今回ようやく読破。2005年の発刊いらい、世界中で議論を巻き起こしてきた毛沢東伝。 高校の世界史の授業では、毛沢東を、大躍…

大泉 啓一郎 『老いてゆくアジア 繁栄の構図が変わるとき』

初めて「アジアの高齢化」という問題に気づいたのは、つい2年前、職場の同僚がとある国連のレポートを紹介してくれたときだった。考えてみれば当たり前のことで、経済成長期に裾野の広いピラミッド型の人口構造を有した国ほど、後の世代が負担しなければなら…

エズラ・F・ヴォーゲル 『アジア四小龍 いかにして今日を築いたか』

『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者、ハーバード大学教授(当時)による東アジア新興国(シンガポール、香港、韓国、台湾)の工業化プロセスについての分析。1991年の出版からはや17年が経過しましたが、今読んでみてもやはり興味深い内容となっていま…

坪井 善明 『ヴェトナム新時代  「豊かさ」への模索』

ベトナム研究で知られる坪井さんの新刊。コンパクトな新書のなかに、ベトナム戦争の傷跡、ホーチミン再考、市場経済改革・一党独裁制の課題、少数民族の問題、日越関係の展望など、密度の濃い情報が詰まっています。 昨年度に公私にわたって2度も訪れたベト…

奥田 英信 『ASEANの金融システム 直接投資と開発金融』

先ほどご紹介した『開発金融論』の共著者の一人でもある一橋大学の奥田先生による、ASEANの金融システムについての分析。初版の本の帯にはこう書かれています。 「1997年のアジア経済危機以来、その妥当性が問われている「外資主導工業化」と「金融自由化政…

黒田 勝弘 『”日本離れ”できない韓国』

産経新聞ソウル支局長兼論説委員の黒田さんの著書。黒田さん曰く「韓国の中の日本」を探ることが本書の趣旨。 個人的にはすごく興味ありつつも「近いしいつでも行けるだろう」と思ってまだ行っていない国・韓国。そういえば「朝鮮半島のことをあまりよく知ら…