Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

佐藤 優 『外務省ハレンチ物語』

 新入職員を省内で手にかける首席事務官や公費を使って家事補助員を囲う公使など、外務省職員の呆れる生態を暴露した一応「フィクション」。帯のキャッチコピーも「個人名除いてほぼ実話」。読んでみると、登場するキャリア外交官の呆れる性癖には思わず失笑、フィクションとはいえ、今は外務省から離れているとはいえ、ここまでリアルに描写してしまって大丈夫か佐藤優、と思わず余計な心配をしてしまう。
 
 とはいえ、外務省という組織の異常さは、テリー伊藤氏の『お笑い外務省機密情報』をはじめ既に各所で明らかにされており、決して目新しいものではない。この異常な省風?が今日に至るまで保持されているのは、佐藤氏が指摘するように、外務省と政治家、メディアをつなぐ「負の連帯」によるところが大きい。仮に告発しようと考える政治家や記者がいたとしても、ただでさえ同省の「情報力」に一日の長がある上、国外でハメを外して在外公館にうっかり弱みを握られていたりして、なかなか大々的に表沙汰にはならないのだろう。同省が持つ情報力を活かすためには「多少の狼藉は見逃すか」という冷徹な判断があるのかもしれない。

 今思い返せば、民主党政権が発足当初に掲げた旗のひとつは「脱・官僚」だった。今や「事業仕分け」も完全に政治ショーと化してしまった感があるが、いっとき話題になった外交官の高すぎる在外俸や給与外所得の件はどうなったのだろうか。米・中・朝鮮半島などの花形部署はともかく、仕事らしい仕事をしていない部局や在外公館ざらにあると聞く。農水省厚労省など他省庁に比べれば、外務省の組織・業務にはまだヴェールに包まれている部分が多い。明らかに正当性のない既得権益の排除を含め、開示可能な情報は徹底的に開示させて、省全体のスリムダウンを図るべきだろう。

徳間書店、2009年)


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