Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

アーネスト・ヘミングウェイ 『誰がために鐘は鳴る』

 20世紀アメリカ文学の巨匠・ヘミングウェイの長編小説。買ったまま未読だったものを休日中に読破。
 
 舞台は1930年代のスペイン内戦。アメリカから来た共和政側の義勇兵・ロバートが、爆破工作の協力者であるゲリラの隠れ家にかくまわれていた女性・マリアと恋に落ちるラブストーリー。
 文庫で上・下巻計約900ページと分厚いものの、物語を流れる時間はわずか4日。ロバートがゲリラの隠れ家でマリアと出会い、苦しい状況のなかで爆破工作を強行、マリアに悲運の別れを告げるところまで。

 最期にロバートはこうつぶやく:「この世界は美しいところであり、そのために戦うに値するものであり、そしておれは、この世界を去ることを心からいやだと思う・・・この最後の数日のゆえに、おまえは、だれにも負けぬりっぱな生涯をもつことができたのだ。」

 ヘミングウェイの他の小説(『海流の中の島々』など)が持つ独特の虚無感、孤独感に慣れていた自分にとっては少し意外な締めくくりでした。
 ロバートとマリアの壮絶な恋愛の結末は悲劇的なものに終わりましたが、ヘミングウェイは、ロバートのこの独白を通して、己を取り巻く周りの世界が「美しい」ものにもなりうることを示したのではないかと思います。

(原著:Ernest Hemingway "For Whom the Bell Tolls" 1940.
 邦訳:大久保 康雄 訳、1973年発行、新潮文庫