Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

ローワン・ジェイコブセン 『ハチはなぜ大量死したのか』

 2006年秋から2007年春にかけ、北半球から4分の1のミツバチが消えた。CCD(Colony Collapse Disorder、蜂群崩壊症候群)の原因について迫る、米国バーモント州在住のジャーナリスト・ジェイコブセン氏によるノンフィクション。
 4つの付録「アフリカ化したミツバチのパラドックス」「ミツバチを飼う」「受粉昆虫にやさしい庭づくり」「ハチミツの治癒力」も面白い。
 

1.現代農業の急所

 「果実」を扱う全ての農業において、ミツバチの役割は決定的に重要である。全ての果実は、受粉というプロセス抜きには生まれない。過去1億5000万年にわたって、地球上の植物の大部分は生殖を昆虫に頼ってきた。年々ハイテク化が進む農業においても、ミツバチと養蜂家の役割は依然として大きい。ジェイコブセン氏はこのことを「驚くべき急所」と書いている。たとえば2000年代に急速に産出高を増やしたアーモンド(果実の種)の木も、ミツバチがいなければその価値を失う。


2.犯人は「複合汚染」か

 「現代のミツバチは、彼らの祖先が一度も経験したことのなかったような重圧にさらされている」とジェイコブセン氏は言う。「ミツバチヘギイタダニ、アカリンダニ、ハチノスムクゲケシキスイ、アフリカ化したキラーミツバチ、アメリカフソ病菌、ありとあらゆる種類の真菌類やウイルス。さらには、農薬、抗生物質、栄養不良、都市化、グローバル化、そして地球温暖化」。ミツバチに過重労働とストレスを強いる現代の「工業化された」農業のあり方にも警鐘を鳴らす。
 自分はCCDについては詳しくないが、ウェブでいくつかの記事を確認する限りでは、CCDの原因については科学者の間でも統一された見解がないようである。しかし、人間の経済活動が自然環境システムに与える負荷がミツバチという種の存続を脅かしつつあることに間違いはないように思える。
 
(原著:Rowan Jacobsen "Fruitless Fall" 2008.
邦訳:中里 京子 訳、2009年1月発行、文藝春秋


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