Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

伊集院 静 『アフリカの王』

 ケニア南西・マサイマラ国立保護区の丘の上に、ホテルを建てる―
 実在のホテル「ムパタ・サファリ・クラブ」 
http://www.mpata.com/japanese/index.html
と、それを建てた一人の日本人を題材にした伊集院さんの小説。
 ケニア在住歴のある会社の先輩に借りて読了。

 主人公の黒田十三は、出版社の雑誌編集者の仕事でケニア・マサイマラ国立保護区に行き、アフリカの大地と風景、ナイロビに住む画家・ムパタの絵に魅了される。辞職後、建築家や調理人のサポートを得、「日本の友人達にこの壮大な景色を見せる」ために、オロロロの丘にホテルを建てることを決意する。


十三のナイロビでの同僚・吉元の言葉:
「一度アフリカに足を踏み入れた人間はアフリカの手に掴まえられてしまう。その手にいったん掴まえられた人間は、どんな場所に行っても、必ずもう一度このアフリカの地に戻ってくる」

十三、ケニア・マサイマラでの経験を東京で振り返って:
「あそこには男も女もなかった。自然の中に人間が住みうる場所で生きているだけだった。文明って奴は人間を縛り付けて、のろのろとはいずらせるために築かれたってことか・・・」

ホテル建設のスポンサー・泰平、十三からの再三の融資依頼を快諾して:
「この夢は、もうあんたのポケットの中から飛びでてるで。あの夜、ホテルに集まった連中はみな勝手にあんたの夢に乗っかってあそんどるんや。男の夢の値段は連中が決めることや。・・・・・ 見通しがつくもんに金を出したら、遊びやなくなる。それは商売人がやるこっちゃ。・・・十三君。遊びが一番しんどいのやで。」 
 

 読んでいて思わずケニアに行きたくなりました。マサイマラについては、観光化が進んでいることの功罪について議論がありますが、ともかくムパタサファリクラブをはじめとするこの地域の宿泊施設が、アフリカの自然や文化について世界の人々の理解が助ける一助となったことは明らか。
 アフリカのダイナミズムと、ひたすらに夢を追いかける男の生き様に触れてみたい方はぜひ。

                   (講談社文庫、2003年発行、元となる単行本は『アフリカの絵本』)


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