Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

ヴィカス・スワラップ 『ぼくと1ルピーの神様』

 2008年アカデミー賞受賞『スラムドッグ$ミリオネア』の原作小説。インドの外交官スワラップ氏の処女作で、現在までに37カ国語に翻訳されているとのこと。映画を見に行く時間がなかなか取れなさそうなので原作の小説を買って週末に読んでしまいました。さすがアカデミー賞受賞作、「面白い」の一言に尽きます。
 
 主人公はムンバイのスラムに住む18歳の少年ラム・ムハンマド・トーマス。彼はある重大な目的を携えて、賞金10億ルピーのクイズ番組「十億は誰の手に?」に出演。ただのウェイターに過ぎない彼が、歴史や政治、文化に関する12問の難題に次々答え、見事10億ルピーを獲得するが、彼の不正を疑う番組制作者に告発されてしまう。警察に連行されたラムのもとに現れた女性弁護士。彼女の前で、ラムは自身の波乱万丈の過去を語り出す。

 ラムがムンバイに来た理由、クイズ司会者の隠された過去、女性弁護士の意外な正体、そしてラムがなぜ12問の問題に答えることができたのか。見事なストーリー構成のもと、物語の謎が少しずつ明らかにされていきます。貧富の格差や腐敗、宗教間の対立といったインド社会が抱える問題。そして、その社会をしたたかに生き抜くラムをはじめとする登場人物たちの知恵と勇気。
 過酷な人生をくぐり抜けてきたラムは、物語の最後でこう言いいます:「運は自分が作り出すものだってわかったんだ」
   
(原著:Vikas Swarup "Q and A" 2005.
 邦訳:子安 亜弥 訳、2009年2月、ランダムハウス講談社文庫)

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