Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

真山 仁 『ハゲタカ II』

 最近読んだ『ハゲタカ』がかなり面白かったので、続編の『ハゲタカ II』を思わず買ってしまった。聞くところによれば、『ハゲタカ』と『ハゲタカ II』はもともとひとつの長編で、真山氏が書きたかったテーマは『ハゲタカ II』で完結する、という。

 今回、主人公の鷲津が狙いを定めるのは繊維業界の老舗・鈴紡と電機業界の大御所・曙電機。前者の買収は政府に横槍を入れられしくじるも、後者の買収は日米政界を巻き込んだ策略が功を奏し、みごと成功する。その鍵になるのが、鈴紡買収劇の中で手に入れた、日米政界のスキャンダルを封じた秘密文書「ベル・ボックス」。米国軍事ファンド・プラザグループの会長・カッツェンバックとの一騎打ちシーンも見ものである。

 物語終盤まで、鷲津はかつての右腕・アランの死の呪縛から逃れられずにいる。アランの故郷・ボストンで、アランの父から鉄拳を喰らい、ようやく目が覚める。「政彦、私が君を許さないと言ったのは、君がアランの死のために破滅的になっていると私の友人たちが嘆くのを聞いたからだ。信念の人だった君がサムライの魂を忘れ、ただ暴利を貪り、自ら好んで破滅への道を走り続けていると聞いたからだよ」。理屈や金の力もさることながら、最終的にビジネスの出来を左右するのは、やはり人の意志の強さである。
 
講談社文庫、2007年)


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