Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

ピーター・F・ドラッカー 『知の巨人 ドラッカー自伝』

 学生時代の2005年2月、日経「私の履歴書」欄を読むのを毎日楽しみにしていたのを、今でも覚えている。米国・日本はもちろん世界中の経営者に影響を与え続けた「知の巨人」ドラッカー。その波乱万丈の人生は、よく同欄に掲載される国内の経営者の自伝とは趣が異なり、異彩を放っていた。読者からのあまりの反響の大きさに単行本化されたらしく、その文庫版を先日書店で見つけた。

 オーストリア帝国の大物官僚の家に生まれたドラッカー。早熟の秀才は、新聞記者や証券マンといったさまざまな職歴を経て、米国で企業コンサルタントの職に就く。そこからの活躍はあえて語るまでもない。後の妻・ドリスとロンドンでのまったく偶然に再開するシーンも、まるで映画の一コマを見ているようで印象深い。
 若干29歳にして刊行した『経済人の終わり』は、ナチズムの危うさを説き、かのチャーチルから書評を得た。歴史、政治、経済、哲学。実社会への限りない好奇心は、(本人はあまり自覚していなかったかもしれないけれど)凄まじい勉強量・常人の域を超えた深い思索を可能にし、切れ味鋭い洞察を生んだ。分権化、目標管理、知識労働者、民営化、みな彼が作った造語。1974年の従業員退職所得保障法(エリサ法)もドラッカー氏が起草したもの。歴史に名を残す人は、若いときから凄まじい量・質の蓄積・発信をしているものなのだ、と2005年当時に奮起させられたのを覚えている。

 ドラッカーが没して既に5年が経つ。しかし、同氏が残した足跡は今もなお、世界の知識人・経営者に大きな影響を与え続けている。 



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