行成 薫 『名も無き世界のエンドロール』
2013年初めに出たばかりの本で、当方全然知らなかったのだが、同僚から勧められて読んでみた。物語の中心に据えられている計画の名前は「プロポーズ大作戦」。その実は、互いのつながりだけを支えにして生きた男女の、自分が存在した証をこの世に残したいという、暴力的なまでの心の叫びだ。計画じたいは成功に終わるが、単純なハッピーエンドなどでは全然ない。個人的には、メインキャラが天涯孤独の3人の男女というあたりも含めて、どことなく村上龍の『コイン・ロッカー・ベイビーズ』を彷彿とさせるものを感じた。ただしこちらの描写は単純な時系列ではなく、過去と現在をやたら行き来し、そして文中に多くの伏線が盛り込まれていて、ミステリー小説の趣もある。またマコト亡き後のエピローグで、城田がマコトの名を継いで生きて行こうとするくだり、三人が存在した証は少なくとも完全には掻き消えることはないと暗示するシーンによって、一抹の希望がもてる終わり方になっている(ちなみに最後の最後、別の轢き逃げ被害者として唐突に警官が口にした「シロタ」は、城田(キダ)が、自らの存在を葬るためにIDを事前に売った相手だったりするのだろうか? 気になる・・・)。本書は行成氏の処女作だったようだが、なかなか面白かった。次回作にも期待。
(集英社、2013年)