Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

佐藤 智恵 『世界最高MBAの授業』

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 世界トップのビジネススクールで教えられている授業の内容を、各スクール卒業生の日本人が振り返るダイジェスト形式で紹介する本。

 本書によれば、ビジネススクールのカリキュラムは、ハードスキル(会計や財務等の専門知識)、ソフトスキル(リーダーシップやコミュニケーションといった人を導くためのスキル)、新興国や企業内での実習の3つに大きく分けられる。本書で紹介される授業の多くはソフトスキルに関するもので、卒業生たちはこうした授業を通じて自分や他者に対する考え方を大きく変化させ、卒業後のキャリア選択にも影響が及んだという。本書は、授業をそのまま再現するような構成になっており、あたかもそのクラスに同席しているかのような感覚で、教授からの質問やクラスメイトからの問題提起について考えさせられる。印象に残った内容を書いておく:

・生徒が泣きながらマイノリティの告白をした倫理とリーダーシップの授業。リーダーシップとは、存在する正しい答えを客観的に選択することではなく、自分の信念を確立し、それをさらけ出すことによって(ときには泣いたっていい)、人を動かすこと。

ケロッグ校の名物教授でバクスターの元CEO・クレーマー教授は、リーダーには、セルフ・リフレクション(自分自身の優先順位を理解し自省する力)、バランス(物事を多角的に見る力)、自分本来の自信(自分自身をありのまま受入、日々改善する力)、真の謙虚さ(他人を尊重する力)の4つの力が必要だという。
 同教授は、人生を変える行動として、1日20分のセルフ・リフレクション、昨日と比べて何が改善できるか毎日考えること、自分の時間の使い方を毎週振り返ること、を推奨している。セルフ・リフレクションとは、自分に取って大切なことを毎日、優先順位を付けて1位から10位まで書き出すこと。これにより、自分で自分の人生を能動的に導くことができるという。

・ビジネスのイノベーションには失敗がつきものだが、それは人生でも同じ。失敗できる環境をどれだけ自分に用意することが出来るかが成功の鍵。

ビジネススクールの選ばれた優秀な人たちの中では、どう自分を差別化するかを考える必要がある。日本では「オールラウンドプレイヤー」が重宝されるが、自分が最も得意なところで、インパクトを出し、やりきればいい」というメンタリティをもつことが大事。

・すべての習性、クセには、その背景となる心理的な「セオリー」がある。自分をしばる過去のセオリーを明らかにすることで、周りの評価を気にせず、自分の内面を素直に語れるようになり、自分なりのリーダーシップを築くことができる。

・ハーバードでの「世の中にはこんなに優秀な人がいるんだ」というショック療法のような経験により、優秀な人から学び、力を借りるスキルを持つことができる。職場の同僚や部下などどんな立場の人でも自分より優秀な点があり、それを見つけて学ぶこともリーダーシップのひとつ。
 
 海外トップのMBAへの留学を夢見る人は多いと思うが、実際には資金面などのハードルはかなり高い。ほんの「さわり」だけであっても、その一端を垣間みることができるのは有用だ。自分の場合、特に上記の「セルフ・リフレクション」のやり方が印象深く、さっそく実践させて頂いている。

(2013年、東洋経済新報社

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