Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

ヨーロッパ

大木 毅 『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』

戦史・軍事史事著述家の大木氏が、最新の史料に基づいて第二次大戦中の独ソ戦を解説した新書。 独ソ戦は、スターリンの錯誤、ヒトラーとドイツ軍の楽観により始まった。当初ドイツの電撃戦は成功に見えたが、ソ連軍の抵抗と補給路の延伸より、ドイツ軍は徐々…

塩野 七生 『ローマ人への20の質問』

作家の塩野氏が、古代ローマの社会や風俗についての質問20に答えていく、対話形式で編集された新書。『ローマ人の物語』を執筆中の2000年に発行されたものであり、同書とはまた違う、よりソフトな切り口で古代ローマを見せてくれる本。 とくに古代ローマ人と…

塩野 七生 『ローマ人の物語 XI~XV』

『ローマ人の物語』全15巻のうち、ローマの衰亡期にあたる、マルクス・アウレリウス帝の治世から西ローマ帝国滅亡直後までを描く。 第XI巻『終わりの始まり』は、五賢帝の最後マルクス・アウレリウス(161年即位)から皇帝セプティミウス・セウェルス (211…

塩野 七生 『ローマ人の物語 V~X』

『ローマ人の物語』全15巻のうち、初代アウグストゥスから五賢帝の四人目アントニウス・ピウスまで初期帝政下のローマを描く。X巻は、ローマ人が後世に残した数々のインフラに特記して解説する。 第VI巻『パクス・ロマーナ』は、カエサルの遺志を次いで帝政…

塩野 七生 『ローマ人の物語 I~V』

作家・塩野氏による古代ローマの通史『ローマ人の物語』。学生のときに途中まで読んで挫折していたものを、ちまちま読み続けてようやく読破。単行本で全15巻とさすがに大著なので、建国から帝政移行までのI~V巻、帝政下で世界国家を実現したVI~X巻、その衰…

平野 千果子 『フランス植民地主義の歴史 奴隷制廃止から植民地帝国の崩壊まで』

フランスにおける奴隷制の廃止と植民地主義の推進が、「文明化」の名の下に同時に行われた矛盾について論じた本。 平野氏によれば、帝国主義時代のフランスにおける「文明化」という言葉は、市民革命の理念の伝播であり、様々な思想的意味合いを許容するもの…

ミュリエル・ジョリヴェ 『移民と現代フランス フランスは「住めば都」か』

社会学者のジョリヴェ氏が、フランスにおける移民の実状と苦悩を、多くのインタビューや取材をもとに描き出した本。 数々のインタビューを終えて、ジョリヴェ氏は、仏国内の移民への批判に対し、「移民はフランス人のパンをむさぼり食ってなどいない」「闇で…

山口 昌子 『原発大国フランスからの警告』

元産經新聞のパリ支局長である山口氏が、福島第一原発後のフランスメディアの反応や、フランスの原子力事業と当局による安全面の取り組みについて紹介する新書。 フランス原子力安全院のトップによる「原発事故は決して排除できない。これがわれわれのあらゆ…

米原 万里 『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』

露語通訳・エッセイストとして知られた米原氏のノンフィクション。同氏が小中学生だった1960年代に一緒に学んだ、プラハのソビエト学校時代の3人の親友たちの軌跡を、ソ連崩壊後に追いかけ、当時は知り得なかった彼女たちの真実にたどり着く。『不実な美女…

V・E・フランクル 『夜と霧』

ユダヤ人の精神学者であるフランクル氏が、戦時中にドイツの強制収容所に収監された体験を綴った体験記。 収容時の消毒室で、学術書の原稿の保持を侮蔑とともに却下されたときに「それまでの人生をなかったことに」する心理的反応を自らが示したエピソードに…

三島 憲一 『現代ドイツ 統一後の知的軌跡』

ドイツ思想史を専門とする三島氏が、統一ドイツの知的・文化的論争の系譜をたどった新書。 本書は、ドイツ統一が与えた衝撃と人々の苦悩を紹介するところから始まる:「文化の相違ははっきりしていた。能率と迅速さと正確さを尊び、なによりも論争を好む西側…

坂井 榮八郎 『ドイツ史10講』

ドイツ近代史を専門とする坂井氏が、ローマ帝国時代以降のドイツ史を、10章の講義形式でまとめた新書。 個人的にドイツ史の中で昔から釈然としなかったのが、神聖ローマ帝国(862~1806)の位置づけで、特に中世のドイツは領邦制が主軸にあったとされる一方…

白井 さゆり 『欧州激震』

前著『欧州迷走』から1年後、世界経済危機とギリシャ粉飾決算をきっかけとして顕在化した欧州諸国の財政危機についての現状をまとめた単行本。 2008年の世界経済危機に伴い各国政府が財政出動を行った結果、(もともと赤字基調だった国は特に)財政状態が悪…

白井 さゆり 『欧州迷走』

米国の住宅バブルに端を発した2008年の金融危機が、欧州にどのような影響を及ぼしたか、研究者の白井氏が主要各国の背景と当時の現状をまとめた単行本。白井氏は当時パリに滞在しており、欧州の「迷走」を実地で目撃した。けっして学術書の類ではないが、当…

柴田 三千雄 『フランス史10講』

フランス近代史の研究者・柴田氏によるフランス史の概観。ガリア、フランク王国の時代から、絶対王政、革命、ナポレオン戦争、ド・ゴールを経て現代に至るまで。高校時代に世界史を習ったことのある人であればすんなり読める。 中世フランスにおいて、シャル…

軍司 泰史 『シラクのフランス』

1995年から1999年にかけて共同通信記者としてパリに駐在した軍司氏による現代フランスの政治・経済・社会を描いたルポルタージュ。欧州統合の試練と大規模スト、核武装と独自外交、エリート達の「一元思考」、コアンビタシオン、移民問題と極右政党、アメリ…

藤井 良弘 『EUの知識 第15版』

上智大学教授の藤井氏によるEUについての基礎知識をコンパクトにまとめた文庫、2009年に発効したリスボン条約にかかるアップデートを含む最新版。 最近仕事でEUの対外政策について調べ物をしているのだが、つい最近まで閣僚理事会と欧州委員会の区別も付いて…

塩野 七生 『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年』

高校のときに読んだ世界史の教科書には、やたらヴェネツィア共和国の名前が登場した。現在でこそ運河と観光業で有名な一都市に過ぎない小国のヴェネツィアが、なぜ中世の地中海史において卓越した存在感を発揮できたのか、経済にも歴史にも疎かった当時は理…

高岡 望 『日本はスウェーデンになるべきか』

福祉大国として知られる北欧の雄・スウェーデン駐在の高岡公使が、スウェーデン人とその社会・経済・外交について満遍なく解説した好著。同氏は2008年から同国に駐在されているそうだが、2年間で駐在先の国についてこれだけの論考をまとめられるかどうか、海…

西川 恵 『エリゼ宮の食卓―その饗宴と美食外交』

もと毎日新聞パリ支局の西川氏が、エリゼ宮(フランス大統領官邸)の宴を通じて、フランス外交の舞台裏に迫ったルポ。類書のない試みで、グルメ本としても外交本としても楽しめる。フランスでたまたま見つけた本だが、早くも2011年のマイベスト本3にノミネー…

太田 博昭 『パリ症候群』

海外法人の精神保健対策の第一人者として知られるパリ在住の精神科医・太田氏が、パリの地で精神的に不安定な状態となる人々の一群「パリ症候群」について記した本。フランス在留者の間で同氏はかなり有名人のようで、パリ日本人会のニュースレターにも同氏…

山田 文比古 『フランスの外交力 ―自主独立外交の伝統と戦略』

駐フランス公使(当時)の山田氏が、当時のアメリカ一極の世界において自主独立を貫いていたフランス外交について分析した新書。本書の執筆は2005年。政権の顔ぶれが変化した現在においても同国外交の基軸はほぼ変化しておらず、本書から学べることは多い。 …

リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー 『新版 荒れ野の40年 ヴァイツゼッカー大統領ドイツ終戦40周年記念演説』

1985年に当時の西ドイツ大統領ヴァイツゼッカー氏が国会で行った終戦40周年記念演説の全訳。 ドイツと日本の戦後処理の違いは学生時代からの疑問なのだが、改めてこの有名な原稿を読んでみると、歴史と真摯に向き合う「覚悟」の違いに、改めて驚かされる。日…

塩野 七生 『ローマ亡き後の地中海世界』

『ローマ人の物語』で知られるローマ在住の作家・塩野氏による新著。西ローマ帝国崩壊後の千年間の地中海史を、上・下巻にわたって描きます。 上巻が300ページ強。下巻が400ページ弱。まず、これだけの枚数で1000年間の地中海史を描ききった手腕に素直に拍手…

塩野 七生 『痛快!ローマ学』

最近、学生時代に買ったものの読みきれていなかった本を次々に消化中。 今回取り上げるこの本は、2002年に出版されたローマ在住の作家・塩野氏による古代ローマ史ガイド。ローマの黎明期から帝政期、パクスロマーナの確立まで。同氏による大著『ローマ人の物…

クロード・ランズマン 『SHOAH(ショアー)』

ヘブライ語で「絶滅、破滅」を意味する「ショアー」をタイトルに冠するランズマン監督の映画の全テクスト。ナチス・ドイツのホロコーストが主題。映画は、体験者に対するインタビュー記録のみで構成されており、実に9時間半にも及ぶ長さとのこと。 この本は…

堀内 都喜子 『フィンランド 豊かさのメソッド』

フィンランド・ユヴァスキュラ大学院で異文化コミュニケーションを学んだフリーライター・堀内氏によるフィンランドの社会・文化・人々の暮らしを描いたエッセイ。現在はフィンランド系企業に勤め、さらにフィンランドとのつながりを濃くしているところだそ…