塩野 七生 『ローマ人への20の質問』
作家の塩野氏が、古代ローマの社会や風俗についての質問20に答えていく、対話形式で編集された新書。『ローマ人の物語』を執筆中の2000年に発行されたものであり、同書とはまた違う、よりソフトな切り口で古代ローマを見せてくれる本。
とくに古代ローマ人と現代日本人との共通点に関するパートは読んでいて面白い。塩野氏の考える共通点は、①お風呂好き、②温泉好き、③部屋の内装(家具は少ないが床天井材や壁画に凝る)、④肉より魚が好き、⑤企業化(製品や技術に関するアイデアの実用化)の才能、の5点。特に5つ目の「企業化」については、教育科目、建築 、肖像彫刻、哲学、文学様式、言語など、今日の西欧文化に脈々と受け継がれている多くの要素が古代ローマからきている、とする専門家の言を紹介している。
また古代ローマがラテン語とギリシャ語のバイリンガル制を採用したことについては、当時既にギリシャ語が言語として成熟した域にあり、また東方では政治・経済・社会の支配言語として人々の生活に根ざしていたことを挙げた上で、ローマ人の開放性と「優れた支配感覚」によるものであるとしている。「ローマ人のもっともすぐれた資質をあげよと言われれば、私ならば迷うことなく、自分たちローマ人だけですべてをやろうとしなかった点にある、と断言するでしょう。政治と軍事と国家規模の経済政策とインフラ整備は自分たちの任務としながらも、それ以外のすべては被支配者たちに任せたのがローマ人でした」とも。
また古代ローマがラテン語とギリシャ語のバイリンガル制を採用したことについては、当時既にギリシャ語が言語として成熟した域にあり、また東方では政治・経済・社会の支配言語として人々の生活に根ざしていたことを挙げた上で、ローマ人の開放性と「優れた支配感覚」によるものであるとしている。「ローマ人のもっともすぐれた資質をあげよと言われれば、私ならば迷うことなく、自分たちローマ人だけですべてをやろうとしなかった点にある、と断言するでしょう。政治と軍事と国家規模の経済政策とインフラ整備は自分たちの任務としながらも、それ以外のすべては被支配者たちに任せたのがローマ人でした」とも。
(2000年、文春新書)