Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

清水 義次 『リノベーションまちづくり 不動産事業で街を再生する方法』

 「都市再生プロデューサー」として現代版家守によるまちづくりに取り組んでいる清水氏が、リノベーションまちづくりの方法を豊富な具体例をもとに紹介する本。

 「リノベーションまちづくり」は、遊休化した建物や公共施設、地域の人材をといった潜在資源を活用することで、産業衰退や雇用の喪失、中心市街地の空洞化といった都市・地域の課題を解決することを目指すもの。その中核は、意思決定者である当該地域の不動産オーナー(民間・公共)とテナントになる民間事業者をつなぐ「家守」であり、彼らは、当該地域の隠された需要を見つけ、プロジェクトを企画し、その舞台となる不動産を運営する。「家守」は、志を同じくする3、4人が資金を出し合って株式会社を設立することが多く、建築や不動産、事業や金融、学識経験者など、バックグランドは様々である。

 こうしたリノベーションまちづくり事業は、民間事業として成立することを前提とし、公共の補助金には一切頼らないことが重要になる。補助金が入れば、それにつられて事業規模が大きくなり、地方では竣工時から空きビル化してしまうこともあり得る。民間事業として成立させ、継続的な収益を上げ、やがて税金の形で還元することが王道であり、清水氏は「収益性もない事業に補助金を投入すること、それが、間違っているのです」と言い切る。具体例として、本書では、北九州の小倉家守プロジェクト、神田RENプロジェクト、そして公共施設を使った大型の事例として歌舞伎町喜兵衛プロジェクト、3331アーツ千代田、紫波町オガールプロジェクトが紹介される。こうした豊富な事例紹介により、供給重視の従来型開発に対する強烈なアンチテーゼとしての本書の説得力は増している。

学芸出版社、2014年)
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