Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

日本

網野 善彦 『「日本」とは何か』

歴史学者の網野氏が、講談社「日本の歴史」シリーズの第一弾として、これまでの学術的成果をもとに、日本という国のルーツを論じた本。 網野氏は本書を通じて、いわゆる進歩史観的な従来の日本の捉え方に絶えず疑問を投げかける。第二章では、日本列島がいわ…

粟屋 憲太郎 ほか 『戦争責任・戦後責任 日本とドイツはどう違うか』

立教大学教授(当時)の粟屋氏らのグループが、異なる経緯を辿った日本とドイツが、それぞれ戦争責任をどう自覚し果たしてきたか、被害者への謝罪や補償をどう行ってきたか、両者の比較を通じて検証する本。 アジア諸国に対する日本の戦争責任は、もっぱら(…

門田 隆将 『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日』

ジャーナリストの門田氏が、東日本大震災の被害を受けて福島第一原発の吉田所長とそのチームがどう行動したのか、当時の様子を追ったルポルタージュ。 冒頭で断りが入るように、本書は原発の是非について論じるものではなく、「考えられうる最悪の事態の中で…

渡邉 充 『天皇家の執事 侍従長の十年半』

1996年から2007年まで宮内庁で侍従長を務めた渡邉氏が、現在の今上天皇・皇后両陛下の公務や生活、人となりについて、多くのエピソードを交えて紹介する本。 本書冒頭で紹介される、平成10年の天皇誕生日に際しての天皇陛下発言:「この(日本国憲法の)規定…

野村 進 『千年、働いてきました 老舗企業大国ニッポン』

なぜ日本には数百年も続く老舗企業が多いのか、ジャーナリスト/拓殖大学教授の野村氏が、多くの国内老舗企業経営者へのインタビューを交えつつ、その実相を紹介する本。 日本は他国と比べ、いわゆる「老舗企業」の数が多いとされる。本書によれば、573年に…

マッキンゼー・アンド・カンパニー責任編集 『日本の未来について話そう 日本再生への提言』

マッキンゼー社が取りまとめた、50名以上の内外の識者による東日本大震災以後の日本のあり方についての提言集「Reimagining Japan: The Quest for a Future That Works」の邦訳編集版。ビル・エモットやジョン・ダワー、エズラ・F・ヴォーゲルといったおなじ…

山崎 朋子 『サンダカン八番娼館』

1972年初版の後ベストセラーとして現在も版を重ねる『サンダカン八番娼館』の文庫新装版。山崎氏が天草で出会った元からゆきさんから聞き取った記録『サンダカン八番娼館』、彼女らの足跡を東南アジアにたどった続編『サンダカンの墓』の両方を収録。重いテ…

ビル・エモット、ピーター・タスカ 『日本の選択』

元「Economist」誌東京支局長のエモット氏、日本在住の市場アナリスト・タスカ氏による、日本の進路についての対談集。どちらも英国人というバックグラウンドを反映してか、対談における両者の指摘は、基本的に自由主義と市場主義の思想に沿った、当事者であ…

戸部 良一 ほか 『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』

戸部防衛大学校教授ら戦史・組織論の研究者グループによる、先の大戦で示された日本軍の組織特性についての共同研究。タイトルが示すとおり、戦史上の失敗から、現代日本の組織一般にも通じる教訓を導き出す内容。 本書で取り上げられているのは、ノモンハン…

共同通信社社会部編 『沈黙のファイル 「瀬島龍三」とは何だったのか』

山崎豊子『不毛地帯』のモデルとも言われる元大本営作戦参謀・瀬島龍三氏の半生を切り口として、太平洋戦争、シベリア抑留、戦後賠償など戦後日本史の暗部を抉った共同通信社社会部のチームによるルポルタージュ。 戦中の大本営陸軍部作戦部作戦課は、同情報…

保阪 正康 『陸軍省軍務局と日米開戦』

戦前・戦中の陸軍省において国防政策立案・議会交渉・国防思想普及を担った同省軍務局幹部を中心に、開戦前2ヶ月の政府・軍中枢の動向を追った、ノンフィクション作家の保阪氏によるドキュメント。 開戦にあたって、当時の陸海軍が、明確な根拠や冷静な判断…

堀 栄三 『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』

1943年10月から終戦まで大本営陸軍部情報部に勤務、米軍のルソン島上陸や本土決戦計画を的中させるなど名情報参謀として知られた堀氏が、戦後40年経って初めて自身の参謀としての体験を述べた回顧録。 堀氏の経歴も情報参謀の仕事も良く知らないまま読んだ本…

魚住 昭 『野中広務 差別と権力』

ノンフィクション作家の魚住氏による、一時「影の総理」とまで言われた野中元官房長官の半生を描いたルポルタージュ。2006年に文庫化されたばかりだが、既に古典の域に達していると言っていい。 唐突だが、高村薫の『レディ・ジョーカー(http://blogs.yahoo…

薮中 三十二 『国家の命運』

2010年秋に刊行された前外務事務次官による本書、日本ではベストセラーになっている。民主党政権の外交失策ぶりを眼にして、外交において求められる知恵と戦術は何か、改めて外交のプロたる外交官の言葉が求められているのかもしれない。 まだ顧問として外務…

高橋 哲哉 『靖国問題』

なぜか今になって靖国神社についての本を読んだりしている。小泉政権以降の首相が参拝しなくなって世間をにぎわすことはあまりなくなったが、問題が人の眼に触れなくなっただけで、靖国神社の問題の本質は今も変わらない。 高橋氏は本書で「感情の問題」「歴…

藤原 正彦 『国家の品格』

近年日本でも幅を利かせる欧米型の「論理と合理」にかえて、日本古来の「情緒(懐かしさ、もののあわれ)」や「形(武士道精神)」の価値観を取り戻すべき、と説く数学者の藤原氏による2005年発売のベストセラー。昔の本棚の整理していて出て来たもので、再…

松岡 環 編著 『南京戦 閉ざされた記憶を尋ねて』

日本や中国の近代史について勉強しているうちに引っかかり、改めて調べてみようと思った「南京大虐殺」。アマゾンで文献を検索するうち、「元兵士102人にインタビューした結果をまとめた」という本書に行き当たった。 日本の市民グループが、当時南京に入っ…

塩野 七生 『日本人へ 国家と歴史編』

塩野氏は、「文芸春秋」誌上で「日本人へ」と題した歯に衣着せぬコラムを続けておられる。その論評をまとめた新書が2冊でた。本書はそのうちの一冊。 ローマ帝国のリーダーを議会内閣制の閣僚に仕立ててみた「夢の内閣・ローマ編」など、思わず苦笑いしてし…

保阪 正康 『あの戦争は何だったのか 大人のための歴史教科書』

こちらも2005年のベストセラー。特に若い世代にとって、知っているようで意外と知らない太平洋戦争の「仕組み」をざっくり教えてくれる。 統帥権と統治権、軍令と軍政、大本営、参謀本部、軍令部、恩賜の軍刀。耳にしたことはあるものの、正確な定義を知らな…

山口 彊 『ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆』

先月飛行機のなかで「Economist」誌を読んでいたら、まるまる1ページ使って山口氏の訃報が報じられていた。日本人のobituaryが載ることは珍しいので「誰だろう」と読み始め、眼が釘付けになった。現代の日本人の中で「二重被爆者」という言葉をご存知の方は…

塩田 潮 『新版 民主党の研究』

これまで①本の紹介、②印象に残ったパート、③読後の感想、という3パート方式でこのブログを書いてきたものの、思ったようには筆致がはかどらなかったため 苦笑、当面の間もとの雑文形式に戻してみたいと思います。逆に読みづらくなってもしれませんが、しばし…

カレル・ヴァン・ウォルフレン 『日本/権力構造の謎』

社会人になってから、「学生時代にこそ読んでおけばよかった」と思わされる本に出会うことが、しばしばあります。この本もそのうちの一つ。ある特定の集団の社会や政治について議論するとき、えてして外部者のほうが本質を突く主張を展開するもの。文庫本裏…

ジェラルド・カーティス 『政治と秋刀魚 日本と暮らして45年』

日本の政治・外交、日米関係を専門とするコロンビア大学教授カーティス氏による新著。同氏初の日本語での著作。40年以上に及ぶ日本との関わりを通じて、同氏が日本の政治や外交について考えたことがコンパクトに盛り込まれた単行本。 ある個人や集団が第三者…

瀬川 拓郎 『アイヌの歴史 海と宝のノマド』

先月北海道に旅行したときに、旭川市博物館で見つけた面白そうな本。思わず手にとってしまいました。 「アイヌ」と聞いて、「自然と共生しエコロジカルな社会を形成していた北海道の先住民」というイメージを自然と思い浮かべる人は、自分を含めて多いはず。…

飯倉 晴武 『日本人のしきたり』

正月行事、豆まき、大安吉日、Etc.. 知っているようで案外知らないさまざまな「しきたり」について、「なぜそう決まっているのか」を含めて項目ごとに簡潔に教えてくれる本。 著者は、元宮内庁書陵部主席研究官で奥羽大学文学部教授の飯倉先生。 会社の大先…