Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

塩田 潮 『新版 民主党の研究』

 これまで①本の紹介、②印象に残ったパート、③読後の感想、という3パート方式でこのブログを書いてきたものの、思ったようには筆致がはかどらなかったため 苦笑、当面の間もとの雑文形式に戻してみたいと思います。逆に読みづらくなってもしれませんが、しばしお付き合いください。

 さてこの本。2009年7月に書店に並んでいたのは知っていたもののそのときは購入せず、今年に入ってパリに立ち寄る用事があり、かの地に長く住む友人から「日本の現状が分かる近著を幾つか差し入れてほしい」と依頼があったため購入、行きの機内に持ち込んで読んでみた。
 わずか358ページの新書であり情報量が限られているものの、民主党の設立から2009年衆院選までの変遷、同党を率いる鳩山・菅・小沢各氏のプロフィールなど、コンパクトにまとめられていて「そもそも民主党ってどんな党だっけ」という素朴な疑問をもつ自分を含めた一般選挙民には持ってこいの内容。客観的な視点で淡々と筆が進められているのも好感が持てる。
 個人的には最近関わっている仕事のプロジェクトが関係者が同床異夢の状態でなかなか前に進まないことにいらいらしていたのだが、この本でまさに「リーダーたちの同床異夢」として、菅氏は「首相の座」、小沢氏は「政権交代」、鳩山氏は「政界再編」、と説明されていて、とてもしっくりきた。菅氏も厚生大臣時代の功績がクローズアップされがちだが、彼の色んな発言を読み解いてみると、確かに自分の権力固持を第一の行動原理においているように見える。
 
 結果として2009年の総選挙は圧勝したもの、その後の民主党政権の政策対応が総じて場当たり的な理由は、この辺りにありそうである。今後数十年この国をどのような方向に持っていきたいのか、具体的なビジョンが同党首脳陣から語られたことはない。何のことはない、とにかく政権を奪ることだけが、これまで唯一の行動原理だったのだから。先週の首相の施政方針演説も、「いのちを守りたい」という小学生でも分かるような理念の一点張りだった。小沢氏の政治資金管理問題についても、首相が「(検察と)戦ってください」などと軽はずみな発言を繰り返すなど、残念ながら、民主党が政策・政局とも熟達した与党となるにはもう少し時間がかかりそう、と思わされる。
 色々言い出すときりがないが、さらに言うなら、放っておいても次の衆院選まで4年間もあるのだから、社会保障・税財政改革や軍縮・非核外交など時間も手間もかかる大きな課題にじっくり取り組んでほしい。社会保障・税財政改革については、少子高齢化が進むこれからの時代、ある程度経済全体のパイが縮小することは避けられないのだから、選挙のための短期的な人気取り政策ではなく、長期的にどのような負担を国民が負わねばならないのか、それによって暮らしはどう変わるのか、しっかり説明することが、ツケを次世代に回し続けた自民党政権に替わって誕生した民主党政権の責務と思うが、現状いかがなものか。

                           (平凡社新書 2009年7月発行)

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