Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

池上 彰 『わかりやすく<伝える>技術』

①本の紹介
NHKこどもニュース」のキャスターで知られた池上氏によるプレゼン技術向上のためのノウハウ本。

②印象に残ったパート
 聞き手に「地図」を与えることがもっとも重要、と池上氏。新聞やTVニュースでいうところの「リード」。「こういうことがありました」と、冒頭でまず示す。「『それはなんだろう?』と考えることによって、そのニュースの本質がみえてくる」
 また、競争のはげしいテレビの世界では「わずか20秒で面白いコメントをきちんと言える。そういう人だけがテレビの世界で生き残っていきます」といい、しゃべり上手な人の共通項を挙げる:「まず、ズバリ一言で本質を突いたことを言えて、それを補足することが上手な人」「第二に、奇抜ではないけれどもありきたりでない、違う視点から『へえ!』という新しい視点を提示してくれる人」
 最後に、伝えることの上達の秘訣を「自分の発言、説明に、『もうひとりの自分』が突っ込みを入れる」ことと語る。「あなたも、話が上手にならなくても、たどたどしくてもいいですから、人の心をつかむ話し手になってください。あなたらしい、個性的な話し方を生み出してください。そのためには、『自分はどうして話が下手なのだろう』という自問自答を繰り返すこと、謙虚な気持ちを忘れないことです。」

③読後の感想
 結論を一番最初に持って来、明快な論旨の文章を書いたりプレゼンをしたりすることの重要性は重々承知しているつもりだったが、その上で聞き手・読み手に話題の本質をつかんでもらうための「リード」を持ってくることの重要性、改めて認識させられた。言い換えれば、聞き手・読み手にとってのその話題の「立ち位置」を示す、ということと理解した。
 また、社会や組織の中における自分の立ち位置を明確に認識することは重要だ、と改めて感じた。もちろん自分は池上さんほど社会の中で有名なわけでもなんでもないが、「職場の中での立ち位置」とか「サークル内での立ち位置」とか、常日頃から考えておかないことには、その場の中で的を得た発言や立ち振る舞いはできないなあ、と思わず自分の日常に置き換えて考えてしまった。もちろん、池上さんのテレビや論壇での立ち位置は、ご自身でも認識されているとおり、難しい事象を子どもでも分かるように噛み砕いて説明すること。
 この本では他にも「内容の『見える化』」や「話の『柱と枝』作り」など、とにかく聞き手・読み手にとっての分かりやすさを追求するための技術・ヒントが紹介されている。自分の周りの上司・同僚を見ても、必要に応じて周りの人を巻き込みながら質の高い仕事をしていると思われる人ほど、論旨の通った分かりやすい話ぶりを普段からしている、と今日職場を見渡してみて思った。云うは易し、行うは難し。


                                 (2009年発行、講談社現代新書


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