Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

飯倉 晴武 『日本人のしきたり』

 正月行事、豆まき、大安吉日、Etc.. 知っているようで案外知らないさまざまな「しきたり」について、「なぜそう決まっているのか」を含めて項目ごとに簡潔に教えてくれる本。
 著者は、元宮内庁書陵部主席研究官で奥羽大学文学部教授の飯倉先生。
 会社の大先輩から「せめて日本のことは知っていないと」と諭されて購入しました 苦笑。 
 

1.神仏の共存

 現在の日本では、結婚などの慶事のときは神式、葬式など弔事のときは仏式でというように、両者が共存している。
 仏教が伝来したのは538年、豪族たちを中心に急速に普及していく。しかし日本固有の神への信仰は廃れることなく、奈良時代以降の「神仏習合」や「本地垂迹説」のように両者を融合させる思想も登場するなど、むしろ両者が共存する形で現在に至っている。たとえばお彼岸やお盆はもともと仏教行事だが、日本古来の祖先神信仰が結びついて生まれた習慣。


2.春のお彼岸と秋のお彼岸

 春分の日をはさんで前後約3日ずつの1週間が「春のお彼岸」。昼夜の長さが同じで太陽が真西に沈むため、仏教の西方・極楽浄土にちなんでこの日に仏事を行うようになった。お寺では読経・説法などを行い、檀家の人々は墓参りをしたり団子などの菓子を仏前に供えたりする。
 秋分の日をはさむ1週間が「秋のお彼岸」で、同じく先祖をしのぶ期間。


3.お盆

 祖先供養の時期である「お盆」、7月15日を中心とするが、その時期は地域によって旧暦(7月)、新暦(8月)のいずれかとなっている。
 13日の夕方には、祖先の霊が迷わずに帰ってこれるように家や寺の門前で「迎え火」を燃やす。仏壇の前や野外に「盆棚」を設け、仏壇から位牌を取り出して置く。果物・野菜などの季節ものやボタ餅、きゅうりで作った馬やナスで作った牛がそえられ、朝昼晩の3回にわたって水とご飯が供えられる。
 期間中は僧侶を招いてお経を読んでもらうなど盛大に祖先の供養を行う。とくに新仏の出た家は「新盆」として特に手厚く供養する。「盆踊り」もこの時期。
 16日には「送り火」を燃やす。盆棚に供えた野菜や果物を川や海に流す「精霊流し」も行われる。この一種として「灯篭流し」を行う地域もある。
 

 その他にも、「門松、何のために立てるのか」「しめ飾り、何のために飾るのか」「ねぎ付きの年越しそば、なぜ食べるのか」などなど、若い世代にとって「言われてみれば良く知らない」知識が満載。手元に置いておきたい一冊。


                              (青春新書、2003年発行)


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