Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

マーク・ピーターセン 『日本人の英語』

 日本在住歴の長い米国生まれの大学教授・ピーターセン氏が、ネイティブの視点から、日本人の英語に対する誤った認識を正す。
 さまざまな英語本にお目にかかってきたが、ここまで目からウロコが落ちた本も稀である。同氏は、日本人が書いた一般向けの英語の文法書に鼻から懐疑的で、英語という言語をいかに捉えるべきか、ネイティブの視点からバサバサ斬っていく。いわく、「(冠詞の)aというのは、その有無が一つの論理的プロセスの根幹となるものであって、名詞につくアクセサリーのようなものではない」「日本語で考えるときにも『a+名詞』と『名詞』とは異なる単語であることを認めるのがもっとも現実的」など。
 個人的に一番参考になったのは上述の冠詞についての章だが、その他にも前置詞のニュアンスの違いなど、ネイティブならではの感覚を教えてくれる:「outというのは三次元関係を表し、動詞に『立体感のあるものの中から外へ』という意味を与える。それに対して、offというのは二次元関係を表し、動詞に『あるものの表面から離れて』という意味を与える」「障害が物理的なものでなくても、それを『乗り越える動き』(get over)は水平軸を中心とする弧状を描き、またそれを『避ける動き』(get around)は垂直軸を中心とする弧状を描く」。日本人がついつい使ってしまいがちな副詞についても、「"Particularly, ....."と"Especially, ....."には、コンマで後に続く文から仕切られた、自立した「句」として働く慣用はない」と注意を促してくれる。
 巷に跋扈する怪しげな英語本に目を通すくらいなら、わずか700円の本書を購入することをおススメします。良書。

(1988年、岩波新書

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