Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

スティーヴン・ホーキング 『ホーキング、未来を語る』

 ブラックホール特異点定理や蒸発理論で知られる理論物理学者・ホーキング氏による宇宙研究の解説書。ベストセラー『ホーキング、宇宙を語る』の続編にあたる。CGを利用した図表や平易な解説が多く、前著に比べても読みやすい。9年前に発行された本ではあるが、内容の多くは現在の物理学の潮流を理解するうえで大いに参考になる。

 自身がペンローズ氏とともに発表した特異点定理については、「時間は洋梨のかたちをしている」と題した明瞭な図とともに、詳細な解説が付されている。これを1965年、同氏がわずか23歳のときに発表したというのは、(物理学の世界では特に珍しいことではないのかもしれないが、)彼の頭脳の凄さを示すエピソードである。同定理は今や物理学・宇宙研究の定説となっている。

 終章「ブレーン新世界」では、超ひも理論を中心に、物質と宇宙をめぐる謎がまとめられている。超ひも理論は10あるいは11次元の存在を前提としているが、視覚で認知できない余次元の存在をイメージするのは正直難しい。量子レベルで細かく折りたたまれた小さな小さな次元か、あるいは無限に拡がる極度に大きな次元か。いずれにしても余次元はまだ実際には確認されておらず、あくまで仮説上の存在にしか過ぎない(大型ハドロン衝突型加速器LHC、ヨーロッパに建設されている)等での研究成果が期待されている)。もし余次元が限りなく大きいものだと仮定すると、われわれが認識する次元は薄い膜(ブレーン)によって表現され、(標準理論では説明できない)重力はブラックホール等によって生じるこれらブレーン間の揺らぎとして見ることができる(しかしこれはもうSFのパラレルワールドの世界である。ある日突然空間が歪んで違うブレーンの物質/生命が現れる可能性だってある 笑)

 同氏は、ケンブリッジ大の職を辞した現在も量子力学相対性理論との接点で研究を続けており、2010年9月には新著”The Grand Design”でその成果を一般向けに出版している(読みたいのは山々だが、英語で理論物理学の本を読むのは骨が折れそうである)。

(邦訳:佐藤 勝彦 訳、角川書店、2001年
 原著:Stephen Hawking, "The Universe n a Nutshell" 2001.)

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