Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

佐々木 俊尚 『グーグル Google 既存のビジネスを破壊する』

 IT業界の報道で有名なジャーナリスト・佐々木氏によるグーグル社についての報告。これも本棚を整理していて出てきた本で、初版は2006年だが、同社のコアビジネスの概要を的確に捉えており参考になる。
 
 163ページの図「グーグルのビジネス構造」はとても分かりやすい:「Google AdWords(広告主向けのクリック課金広告サービス。事前に登録したワードで検索が行われると、検索結果ページに広告リンクが表示される)」や「Google AdSense(一般個人・企業向けのコンテンツ連動型広告配信サービス。ウェブ上で広告スペースを提供するとウェブ内容に応じた広告が自動的に配信され、クリック数に応じて収入を得ることができる)」に代表される検索エンジンを活用したウェブ広告事業が、検索サービスや各種無料ソフトといったその他の事業を収益面で支えている。2010年12月4日付の「The Economist」誌によれば、2009年の同社の収益約65億ドルのほぼ全てが検索関連のウェブ広告事業(http://www.economist.com/node/17633138
)。近年エネルギー関連事業にも手を拡げ話題を呼んでいるが、その収益構造は上場以来殆ど変化していない。佐々木氏は本書で「収益構造を見る限り、グーグルは、『巨大な広告代理店』になりつつある」と述べているが、まさにその通りの状況が続いている。
 
 また、この事実は、とりもなおさず、同社の検索エンジンに対して世界のインターネットユーザーが変わらず大きく依存していることを示してもいる。佐々木氏は本書の「あとがき」で、「グーグルは・・・すべてをつかさどる強大な『司祭』になろうとしている。それは新たな権力の登場であり、グーグルにすべての人々はひれ伏さなければならなくなるかもしれない」、と述べた。2006年当時はこのくだりを半信半疑で読んでいたが、その後5年を経て、中国や欧米の政府と同社との間の係争を見るにつけ、佐々木氏の懸念はもはや現実のものであることを改めて認識した。「人類が使う全ての情報を集め整理する」という同社の理念を疑いなく信じるか、批判的な眼をもって「新たな権力」に相対するか、考える時間はもうあまり残されていない。

(2006年、文春新書)

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