Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

朽木 ゆり子 『マティーニを探偵する』

 「カクテルの王様」と呼ばれるマティーニhttp://apl.suntory.co.jp/wnb/cocktail/recipe/martini/index.html
)。その起源や変遷、アメリカ文化での位置づけを丁寧に追ったのが本書。
 マティーニじたいはジンとベルモット(フレーバーワインの一種)を混ぜるだけのシンプルなレシピだが、そのシンプルさ故に、両者の割合をどうするか、シェイクで混ぜるのかステアで混ぜるのか(実はステアの法が面倒くさい)、どのタイミングでベルモットを入れるのか、添えるのはオリーブかレモンの皮か、好みによってスタイルは千差万別。かのチャーチル卿は「ピッチャーにジンを注ぎ、同時に部屋の向こう側にあるベルモットの瓶を一瞥する」、限りなく生のジンに近い辛口のスタイルを好んだという。
 マティーニの起源は、カリフォルニア州マーティネス市を起源とする説(その中でも諸説ある)が有力。本書を読めばわかるように、マティーニが近代アメリカ文化に対し与えてきた影響はかなり大きい。アーネスト・ヘミングウェイイアン・フレミングといった小説やさまざまな映画に登場している。ヘミングウェイの『武器よさらば』では、恋人とともに戦場から逃げてきた湖畔のホテルで主人公が、万感の思いをこめてマティーニを味わう。
 カクテルやアメリカ文化に興味のある方は、新たな切り口として「カクテルの王様」マティーニについて調べてみるのも一興かと。
 
集英社新書、2002年)

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