Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

2010-01-01から1年間の記事一覧

斎藤 貴男 『機会不平等』

ジャーナリスト・斎藤氏による、1990年代以降の政府・与党の構造改革路線に対し警鐘を鳴らすルポルタージュ。2000年発行の単行本を文庫化。 小泉政権が登場する前の2000年の時点で、財界や学会の動向や介護・教育・労働の現場をつぶさに調べ警鐘を鳴らした斎…

岡田 尊司 『アスペルガー症候群』

急速に認知されつつあるアスペルガー症候群の症状、要因、対処方法について体系的に解説した新書。著者は精神科医の岡田氏。 特定のこだわりを持ち、対人関係は不器用、というアスペルガー症候群の症状については、ビル・ゲイツやアインシュタインらの例を挙…

西尾 道徳、西尾 敏彦 『図解雑学 農業』

一昨年、農業について一から勉強しようと思い、何気なく書店で手に取ったのがこの本。タイトルに「雑学」と書いてあることだし、じつはあまり内容に期待せずに購入したものの、良い意味で裏切られた。 農業の歴史と形態、主な作物・家畜の品種紹介、水稲や主…

松岡 環 編著 『南京戦 閉ざされた記憶を尋ねて』

日本や中国の近代史について勉強しているうちに引っかかり、改めて調べてみようと思った「南京大虐殺」。アマゾンで文献を検索するうち、「元兵士102人にインタビューした結果をまとめた」という本書に行き当たった。 日本の市民グループが、当時南京に入っ…

北川 勝彦、高橋 基樹 編著 『アフリカ経済論』

北川・高橋両氏によって編纂されたアフリカ経済の現状と展望についての教科書。「歴史のなかのアフリカ経済」「現代アフリカの産業と社会」「国際経済とアフリカ」「アフリカ経済の課題と展望」の4部構成から成り、既存のアフリカ文献が往々にして経済につ…

白井 早由里 『マクロ開発経済学 対外援助の新潮流』

もとIMFの慶大教授・白井氏が、近年の研究や対外援助の潮流を踏まえ、マクロ経済学上の開発の問題について論点をまとめた本。この分野における近年の研究者や世界の援助機関の考え方について手っ取り早く勉強しようと思えば、日本語の文献の中ではこの本が最…

クワメ・エンクルマ 『新植民地主義』

ガーナ初代大統領クワメ・エンクルマは、前回紹介した『祖国のための自伝(http://blogs.yahoo.co.jp/s061139/33097418.html )』を含む6冊の本を著しており、本書は4冊目にあたる。本書では、アフリカ諸国に君臨する欧米巨大資本の経済的支配の実態が描かれ…

クワメ・エンクルマ 『わが祖国への自伝』

先日日本を訪れていたガーナ高官と夕食をともにした際に、「ニジェールやギニア、象牙海岸といった周りの国々と比べて、ガーナの政治・社会が安定しているのは何故だと思うか」と不躾な質問をしたところ、「建国者のスピリットだ」という答えが返ってきた。…

ハン・ウォンチェ 『脱北者』

北朝鮮から中国への脱出を図った北朝鮮の技術者・ハン氏が、はじめて強制送還されてから三度目の脱北を果たすまでの体験を記したエッセイ。村上龍氏が『半島を出よ』を執筆するきっかけの一つが、本書を読んだことだったという。 北朝鮮で優秀な技術者として…

ソマリー・マム 『幼い娼婦だった私へ』

カンボジアの性的被害者救援組織アフェシップ(http://www.afesip.org/ )の創立者・マム氏の自叙伝。自らも8年間を売春宿で過ごしたマム氏の半生は、壮絶の一言に尽きる。 カンボジアの社会に根付く男尊女卑・歪んだ所有欲の風潮は相当に根深いもののようだ…

ポール・R・シーリィ 『あなたもいままでの10倍速く本が読める 常識を覆す速読術「フォトリーディング」』

今流行りの「フォトリーディング」手法の解説本。1行ずつ読んでいくのではなく、見開きのページを眼でスキャンしていくフォトリーディングは、「本を読む」という作業の常識を覆してくれる。自分も公式セミナー(http://www.lskk.jp/kouza/photo/1.html )を…

チヌア・アチェベ 『Things Fall Apart』

19世紀後半、白人の植民地支配に抗うナイジェリア・イボ族の男の生きざまを描いた、「アフリカ文学の父」アチェベの代表作。学生時代の英語の授業の課題図書として読んで以来8年ぶりに手にとってみた。 主人公は、冒頭「His fame rested on solid personal a…

C・N・パーキンソン 『新版 パーキンソンの法則 先進国病の処方箋』

先日職場の先輩が事務仕事に追われている自分を見て「パーキンソンの法則やな」とつぶやいて以来、職場ではやっている「パーキンソンの法則」。一昔前の世代の方にはなじみがある言葉ではないだろうか。本書は、多彩な経歴を持つ政治学者のパーキンソン氏が…

スーザン・L・シャーク 『中国 危うい超大国』

米国における中国研究の第一人者・シャーク教授による現代中国論。共産党の組織と権力、不安定な統治構造、台湾・米国・日本との対外関係の背景、爆発的な経済成長の光と影。偏った視点から現代中国を論じる本は数あれど、ここまで本質的かつ包括的に現代中…

フィリップ・ショート 『ポル・ポト ある悪夢の歴史』

クメール・ルージュの指導者ポル・ポトの決定的評伝。ポル・ポトの出生から青年期の思想形成、政権期の党指導部の動向、晩年の変節に至るまで。カンボジアの大地にどのようにして「キリング・フィールド」が生じたか、本書を読めばかなりのことが分かる。 本…

ユン・チアン、ジョン・ハリデイ 『マオ 誰も知らなかった毛沢東』

休日に区の図書館をぶらぶらしていて見つけた『マオ』。学生時代にいちど手に取ったものの当時は時間がなくて読めなかったのだが、今回ようやく読破。2005年の発刊いらい、世界中で議論を巻き起こしてきた毛沢東伝。 高校の世界史の授業では、毛沢東を、大躍…

塩野 七生 『日本人へ 国家と歴史編』

塩野氏は、「文芸春秋」誌上で「日本人へ」と題した歯に衣着せぬコラムを続けておられる。その論評をまとめた新書が2冊でた。本書はそのうちの一冊。 ローマ帝国のリーダーを議会内閣制の閣僚に仕立ててみた「夢の内閣・ローマ編」など、思わず苦笑いしてし…

山崎 将志 『残念な人の思考法』

本屋の店頭で見かけた面白そうな新書。自分ではうまくやったつもりが全然うまくいかなかった仕事が最近続いていたこともあり(まさに「残念な人」状態 笑)、そのまま購入。 アクセンチュアから独立した経営コンサルタントの山崎氏が、がんばって仕事をして…

真山 仁 『マグマ 小説国際エネルギー戦争』

真山氏の小説を最近ずっと読んでいる。本作、「国際エネルギー戦争」は少々大げさだと思うが、原子力や水力の陰に隠れて陽のあたることが少ない地熱発電のメカニズムや電源としての可能性に正面から切り込んでおり、なかなか読み応えがあった。 とある地熱発…

真山 仁 『レッドゾーン』

『ハゲタカ』『ハゲタカII』に続く第3弾。主人公・鷲津のかつての右腕・アランの死の謎が、ようやく明らかになる。 今回、鷲津のバイアウトの対象になるのは、自動車業界の雄・アカマ自動車。日本産業界の象徴であるこの大企業に対し、中・米の投資ファンド…

浜田 宏一、若田部 昌澄、勝間 和代 『伝説の教授に学べ!本当の経済学が分かる本』

タイトルが若干走りすぎている気もするが、リフレ派の浜田氏による痛烈な日銀批判。一般的なデフレの理解にも役立つ。 冒頭から、「日本銀行総裁への公開書簡」のなかで「言ってみれば、いまの日本銀行は、金融システム安定化や信用秩序維持だけを心配して、…

保阪 正康 『あの戦争は何だったのか 大人のための歴史教科書』

こちらも2005年のベストセラー。特に若い世代にとって、知っているようで意外と知らない太平洋戦争の「仕組み」をざっくり教えてくれる。 統帥権と統治権、軍令と軍政、大本営、参謀本部、軍令部、恩賜の軍刀。耳にしたことはあるものの、正確な定義を知らな…

竹内 一郎 『人は見た目が9割』

本棚に眠っていたのを何気なく手にとってみた5年前のベストセラー。社会人になって改めて読んでみると、みごとコミュニケーションの本質を突いていることが分かる。 米マレービアン博士の研究によれば、人が他人から受け取る情報の割合は「顔の表情:55%、…

真山 仁 『ハゲタカ II』

最近読んだ『ハゲタカ』がかなり面白かったので、続編の『ハゲタカ II』を思わず買ってしまった。聞くところによれば、『ハゲタカ』と『ハゲタカ II』はもともとひとつの長編で、真山氏が書きたかったテーマは『ハゲタカ II』で完結する、という。 今回、主…

ピーター・F・ドラッカー 『知の巨人 ドラッカー自伝』

学生時代の2005年2月、日経「私の履歴書」欄を読むのを毎日楽しみにしていたのを、今でも覚えている。米国・日本はもちろん世界中の経営者に影響を与え続けた「知の巨人」ドラッカー。その波乱万丈の人生は、よく同欄に掲載される国内の経営者の自伝とは趣が…

岩崎 夏海 『もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』

いよいよ50万部を超えたらしい今年上半期のベストセラー「もしドラ」。あまりの評判に、書店でついつい手を取ってしまった。 とある事情で高校野球のマネージャーを務めることになった主人公・みなみが、ドラッカーの『マネジメント』を片手に、野球部の「経…

クラウス・ブリンクボイマー 『出口のない夢 アフリカ難民のオデュッセイア』

ドイツ人の著者が、かつてガーナからヨーロッパに移住した経済難民・ジョンとともに、当時の足跡をたどるルポルタージュ。 5年ほど前に西アフリカに住んでいたとき、「生活に窮して小舟でヨーロッパ大西洋に向けて出発し、消息を絶つアフリカ人の数が増えて…

フィリップ・ゴーレイヴィッチ 『ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実』

フリーライターのゴーレイヴィッチ氏が、1994年ジェノサイド直後のルワンダを訪れ、関係者への取材を丹念に重ねて綴ったノンフィクション。ルワンダのジェノサイドを取り扱った本は数あれど、関係者へのインタビューと人間心理への洞察の深さにおいては類を…

武内 進一 『現代アフリカの紛争と国家 ポストコロニアル家産制国家とルワンダ・ジェノサイド』

JETROアジア経済研究所の武内氏による、現代アフリカの紛争の原因は「ポストコロニアル家産制国家」の解体にあるとする論考。 「ポストコロニアル家産制国家」は、①家産制的な性格、②暴力的な性格、③国際関係で獲得した資源を国内統治に利用、④市民社会の侵…

山形 浩生 『新教養主義宣言』

文筆家・翻訳家の山形氏の処女作で、情報、メディア、経済、文化、さまざまな話題について同氏が書き溜めた論考集。同氏の『訳者解説』がかなり面白かったので、この本も購入。単行本として発売されたのは1999年のことだが、内容は古びるどころか、2010年の…