岡田 尊司 『アスペルガー症候群』
特定のこだわりを持ち、対人関係は不器用、というアスペルガー症候群の症状については、ビル・ゲイツやアインシュタインらの例を挙げて具体的に書かれているものの、対処方法のほうはあまり具体的ではなく、「ソーシャル・スキルズ・トレーニング」「言語療法」「薬物療法」「作業療法」「カウンセリング」などの項目が羅列されているのみ。当事者が「どうしよう」と思って手に取る本というよりは、アスペルガー症候群についてどこまで分かっていて、どこが分からないのか、現時点の研究成果を一般向けに総ざらいした本だといえる。
ちなみに、本書に記載されているアスペルガー症候群の描写は、まさに当方にもあてはまる。場の雰囲気を読めないせいで、職場でひんしゅく?を買うこともしばしば。思い返せば、子どもの頃から人付き合いは苦手だった。スポーツは苦手で、教室でも部屋の隅っこが指定席。しかし、社会人生活を続けていくためには、過去のことを思い返していちいち落ち込んでいても仕方がない。余裕の続く限りは、トライアンドエラーで学んでいくしかないのだろう。前向きに解釈すれば、アスペルガー症候群の人は、「自分は対人関係が不器用なんだ、」と客観的に理解することで、普通の人よりも謙虚な気持ちをもって人と付き合っていくことができる人たちなのかも。
(幻冬舎新書、2009年)