Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

北川 勝彦、高橋 基樹 編著 『アフリカ経済論』

 北川・高橋両氏によって編纂されたアフリカ経済の現状と展望についての教科書。「歴史のなかのアフリカ経済」「現代アフリカの産業と社会」「国際経済とアフリカ」「アフリカ経済の課題と展望」の4部構成から成り、既存のアフリカ文献が往々にして経済についての十分な記述を欠いているなか、この分野を扱った文献としてはなかなか良くまとまっている。
 終章では、アフリカ経済に対する処方箋として、アフリカ諸国の政府向けとして「持続的開発のための基盤(経済インフラ)構築」、「(教育や保健など)人間開発」「広汎な地域経済協力」「ガバナンスの改善」、国際社会向けとして「輸出振興支援」「債務救済」「援助の改革」を挙げている。「輸出振興支援」については、先進諸国の関税および非関税障壁を取り除くこと、WTOルールの中で自国産業育成のための貿易政策決定権を賢明に使いこなすことを求めている。これらの処方箋は全体的に妥当なもので、開発援助一辺倒ではない、貿易や投資の促進とあわせた外国による多面的な関わりが、今後のアフリカにとっては決定的に重要である。第6章、平野氏の言:「農業革命の推進力は、市場競争による技術拡散ではなく、政策的努力による技術普及である。開発行政の原点をここに見出すことができるが、アフリカにはこれが決定的に欠けている」、も的を得ている。

ミネルヴァ書房、2004年)

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