Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

C・N・パーキンソン 『新版 パーキンソンの法則 先進国病の処方箋』

 先日職場の先輩が事務仕事に追われている自分を見て「パーキンソンの法則やな」とつぶやいて以来、職場ではやっている「パーキンソンの法則」。一昔前の世代の方にはなじみがある言葉ではないだろうか。本書は、多彩な経歴を持つ政治学者のパーキンソン氏が発見した組織にまつわる各種の「法則」を、ユーモアあふれる筆致でまとめた本。

 「パーキンソンの第一法則」は、「役人の数は、仕事量が増えようが減ろうが、はたまたまったくなくなってしまおうが、そんなことにかかわりなくひたすら増え続ける」。人員増加の動機付け要因は、「1.役人は部下を増やしたがる。しかし、ライバルは望まない。2.役人はお互いに仕事を作り合う」、である。これは自分の職場(公的機関)を見ていてもよく分かる。なぜだかポストの数だけはどんどん増えていく。ポストができれば仕事をひねり出す必要が出てくる―そして大して必要性でもない仕事のために若手が振り回され、全然事情を把握していない上司や他部署の人間との調整に多くの時間と労力を費やすはめになる。結果、「忙しくて人が足りない」ということになり、また職員の数は増えていく。この悪循環を止めるためには、とにかく仕事の必要性を徹底的に吟味することである。
 行政の構造的な問題の8割方は、この法則によって説明できると思う。こんな賢明な本が、自分が生まれる前に既に出ていたとは。今遅まきながら話題になっている「行政改革」や「事業仕分け」は、まさにこの問題に切り込むものである。

 「パーキンソンの第二法則」は公的機関の予算に関する「金は入れば入っただけ出る」というもの。その他にも、「原子炉のコストといった莫大かつ専門的な事柄では発言者が限られる一方、自転車置き場の設置といった誰にでも分かることについては議論が噴出するという「些事こだわりの法則」など、現実社会の本質をついた思わずドキリとさせられる法則の数々が記されている。既に古典の域に入りつつある本だが、現代にも通じる本質的な文章に満ちている。

(邦訳:上野 一郎 訳、1981年、ダイヤモンド社
 原著:C. Northcote Parkinson "Parkinson The Law" 1979, Houghton Mifflin Co.)