Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

山崎 将志 『残念な人の思考法』

 本屋の店頭で見かけた面白そうな新書。自分ではうまくやったつもりが全然うまくいかなかった仕事が最近続いていたこともあり(まさに「残念な人」状態 笑)、そのまま購入。
 
 アクセンチュアから独立した経営コンサルタントの山崎氏が、がんばって仕事をしているのに結果が出ない「残念な人」は何がまずいのか、ご自身の考えを明らかにした本。
 結論は、「プロローグ」の18ページ目にいきなり載っている:「仕事の成果=プライオリティ(の正しさ)×能力×やる気」。「プライオリティ」は、「前提条件」や「考え方」、「価値」に言い換えられる。
 このセンテンスを見たとき、思わず唸った。当たり前のようだが、高校・大学とずうっと一人でがんばってしまう癖が身についていたせいか、ついつい仕事がうまく行かないと自分の「能力」や「やる気」が足りないせいだと思い、余計にがんばって空回りすることが多かったように思う。しかし、それはそもそも仕事の「前提条件」や「考え方」を、上司やクライアントとすり合わせる作業を怠っていたからだ、と考えれば腑に落ちる(まあ能力ややる気のほうも十分とはいえなかったが)。仕事に取り掛かる前に十分上司やクライアントと「考え方」や「前提条件」をすりあわせているか。仕事に取り掛かってからも、蛸壺にはまらずに、こまめに方向性に間違いがないか確認しているか。多くの関係者がいるときほど、ややこしい仕事であるほど、こうした作業は重要になってくる。
 一事が万事、そうである。(特に自分も陥りがちだが)ついつい目先の作業効率を重視するあまり、一呼吸置いてこうした「プライオリティ」について自らに質したり上司やクライアントに相談したり時間を怠ってしまいがちである。自分が優秀だと思い込んでいる人ほど、そうである。その結果、自己完結の世界のなかではいくらロジックと体裁が整った成果品を作り上げたとしても、他者にはまったく評価されなかったりする。完全にマスターベーションの世界である。これが積み重なっていけば、その人の信用は地に落ちてしまう。

 他にも、「二流は積み上げ式で考え、一流は市場全体で考える」「残念なビジネスパーソンは、タイミングでまずつまずく」など、思わず身につまされる名言が本全体にあふれている。
 特に前者のセンテンスには思わず考えさせられた。当方のような凡人は、とにかく目先の仕事で手がいっぱいいっぱいになり、それらをどう効率的に片付けるか、どう良いクオリティに仕上げていくか、そればっかり考えてしまう。以前の上司からは(さすが管理職だが)、いつも「○○におけるこの案件の位置づけを良く考えろ」と言われていた。○○は、時と場合に応じて、業界全体のトレンドであったり、クライアントの組織の方針であったり、案件をはさんだ時系列のストーリー(背景・展望)であったり様々だったが、とにかく広い視野からの助言で、いつも立ち止まって目の前の仕事の「位置づけ」を考えさせられたものだった。それはとりもなおさず、時と場合に応じて適切な「プライオリティ」を検討するために必要な時間であったように思う。
 
 今の自分の仕事に対する考え方の浅さ、至らなさを身に沁みて感じさせられた、とても貴重な新書。凡百のビジネス書に勝る。

(日経プレミアシリーズ、2010年)


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