Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

奥田 英信、生島 靖久、三重野 文晴 『開発金融論』

 
 会社の前任者に強く推薦されて購入。途上国の金融部門についての主だったトピックが、マクロ経済との連関、企業金融、マイクロファイナンス、インフラファイナンスに至るまで、幅広く取り上げられています。一般向けの本というよりは学術書ですが・・・。


 そんな中で自分が気になった点を幾つかそのままピックアップ↓

そもそも「開発金融論」とはどのような学問領域?
⇒この本によれば、「金融論と開発経済学の複合領域」。金融理論のアプローチを開発途上国の経済開発に適用したもので、金融理論と途上国の経済開発の実態とを結び合わせるもの。

アセアン型開発政策・金融システムの特徴は?
⇒実物面では、外資主導による輸出産業育成によって急速な経済発展を達成した。金融面では、金融自由化政策が推し進められ、韓国や日本で見られたような国内での政策的な資金誘導よりは、規制緩和による海外市場からの資金調達が志向された。この外資系金融機関・海外金融市場への依存度の高さは、地場金融機関の未発達と相まって、アジア金融危機の遠因ともなった。

東アジアの企業金融の特徴は?(各国の実証研究から)
⇒①所有の集中度の高い企業ほど負債比率が低い(エージェンシーコストが小さい)、②企業グループ・財閥においては、流動性の高い負債を選考する傾向がある、③一般的に外資系企業は負債比率が低い

途上国にとって外部からの公的資金が選択される理由は?
⇒①発展の初期段階において外部性が強い(高い社会的便益を生み出す)インフラ整備を民間資金だけでまかなうことは困難であり、②発展に伴って途上国側の情報開示が進むなど情報の非対称性が解消されるまでは、開発ニーズを公的資金に頼ることが必要となる。

途上国における近年の外国資金・国際収支の変化は?
⇒①債務性資金(銀行貸付、債券など)から非債務性資金(直接投資)へのシフト、②直接金融型の民間資金の拡大、③労働者送金の増加、④経常収支の黒字化、の4点。


ちなみに章立ては以下のとおり。

第1部 経済発展に対する金融セクターの役割
第2部 途上国の開発金融システムの基本デザイン:地場銀行、証券市場、外国銀行
第3部 途上国の資金調達:企業金融・農村金融のあり方
第4部 開発途上国における対外ファイナンス:外国資金・対外債務


 途上国金融に関心のある方、途上国開発に携わるかたは一読の価値あり、です。

                                    (2006年発行、日本評論社)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/F/Foomin/20190829/20190829194256.jpg