Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

草野 厚 『日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか』

 
 タイトルに釣られてついつい買ってしまいました。新書のネーミングって大事ですね~ 
 
 草野さんは、日本戦後外交や政策過程論が本職の政治学者。最近はODAがらみの著書も多く、開発援助業界に関する力学についてはかなりお詳しい方。と思われます。自分はお会いしたことはないですけど・・・ 一昨年末に出版された『解体・国際協力銀行政治学』では90年代末に国際協力銀行JBIC)がいかに政治の力学に翻弄され、利益のない統合に迫られたか、生々しい記録がつづられています。オススメです。

 さてこの本ですが、本当に入門書。タイトルどおりに、ODAおよび自衛隊による国際協力活動の必要性について書かれていますが、草野さん自身の主張は冒頭の2、3割程度。残りの7、8割は、現在のODAの実施体制や国内で議論となっている論点の整理など、ODAに関する、基礎知識を紹介する構成になっています。

 日本政府や関係機関のホームページを見れば大体分かる情報が多い印象も受けますが・・・ただ現在の開発援助業界で数少ない「論客」である草野さんの思考の基礎を知ることができるという意味では、関係者にとって有益な本かもしれません。ODA縮小の歯止め、環境案件重視、自衛隊によるPKO参加の促進(多国籍活動については慎重に)といった同氏の主張が、簡潔な理由とともに紹介されています。
 
 自分はまさにこの業界で働いていますが、「日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか」というこの本のタイトルに対する答えを自分の言葉で表現する機会は・・・紙面の都合で、また今度☆

                                    (朝日新聞社、2007年)