ダンビサ・モヨ 『Dead Aid』
①本の紹介
ハーバードとオックスフォードで経済学を学んだ気鋭のエコノミスト・モヨ氏による開発論。政府にアカウンタビリティの欠如と腐敗をもたらず既存の開発援助は不要、債券発行やＦＤＩを通じた内外の金融市場からの資金調達によって代替されるべき、と唱える。
ハーバードとオックスフォードで経済学を学んだ気鋭のエコノミスト・モヨ氏による開発論。政府にアカウンタビリティの欠如と腐敗をもたらず既存の開発援助は不要、債券発行やＦＤＩを通じた内外の金融市場からの資金調達によって代替されるべき、と唱える。
②印象に残ったパート
第3章「Aid is not working」で、Moyo氏は「democracy can hamper development as democratic regimes find it difficult to push through economically beneficial legislation amid rival parties and jockeying interests」「look to the history of Asian econoies, (China, Indonesia, Korea, Malaysia, Singapore, Taiwan and Thailand) to see how this is borne out」と必ずしも民主主義が発展のための必要条件ではなりえないことを示し、逆に「On the contrary, it is economic growth that is a prerequisite for democracy」と経済発展が民主主義の必要条件である、と主張する。
また同じ章で、開発援助ワーカーの心理を「One of the most depressing aspects of the world aid fiasco is that donors, policymakers, governments, academicians, economists and development specialists know, in their heart of hearts, that aid doesn't work, hasn't worked and wont't work.」とばっさり切り、それでもなお自らの仕事を維持するために援助を続けるのだ、と言う。
第4章「The silent killer of growth」では、援助資金が、他の資金と比べて内外のステークホルダーへの説明責任に欠けるため政府内の腐敗・汚職を助長するだけでなく、①援助資金は貯蓄や投資よりも一時的な消費に向かいやすい、②資金流入によりインフレを招きやすい、③現地通貨高を招き輸出セクターに打撃を与える、といった理由から被援助国のマクロ経済にも悪影響を与える、とする。
後半の第5章から第10章は同氏による「aid-free solution to development」のための記述であり、より透明性・説明責任の高い債券やＦＤＩといった資金調達、貿易の活性化、国内の小規模融資・貯蓄サービスの充実、が主な具体策として挙げられる。開発援助を切り捨て、これらの代替策を取り入れるためには、政治的な意思が不可欠だが、ドナーやアフリカの政治家には期待できず、鍵は先進国政府に影響力を持つ先進国市民「Western citizens」にある、という。
第3章「Aid is not working」で、Moyo氏は「democracy can hamper development as democratic regimes find it difficult to push through economically beneficial legislation amid rival parties and jockeying interests」「look to the history of Asian econoies, (China, Indonesia, Korea, Malaysia, Singapore, Taiwan and Thailand) to see how this is borne out」と必ずしも民主主義が発展のための必要条件ではなりえないことを示し、逆に「On the contrary, it is economic growth that is a prerequisite for democracy」と経済発展が民主主義の必要条件である、と主張する。
また同じ章で、開発援助ワーカーの心理を「One of the most depressing aspects of the world aid fiasco is that donors, policymakers, governments, academicians, economists and development specialists know, in their heart of hearts, that aid doesn't work, hasn't worked and wont't work.」とばっさり切り、それでもなお自らの仕事を維持するために援助を続けるのだ、と言う。
第4章「The silent killer of growth」では、援助資金が、他の資金と比べて内外のステークホルダーへの説明責任に欠けるため政府内の腐敗・汚職を助長するだけでなく、①援助資金は貯蓄や投資よりも一時的な消費に向かいやすい、②資金流入によりインフレを招きやすい、③現地通貨高を招き輸出セクターに打撃を与える、といった理由から被援助国のマクロ経済にも悪影響を与える、とする。
後半の第5章から第10章は同氏による「aid-free solution to development」のための記述であり、より透明性・説明責任の高い債券やＦＤＩといった資金調達、貿易の活性化、国内の小規模融資・貯蓄サービスの充実、が主な具体策として挙げられる。開発援助を切り捨て、これらの代替策を取り入れるためには、政治的な意思が不可欠だが、ドナーやアフリカの政治家には期待できず、鍵は先進国政府に影響力を持つ先進国市民「Western citizens」にある、という。
③読後の感想
ときに自己満足に陥りがちな援助ワーカーの心理をきっちり捉え、本当に援助は必要なのか明確な問題提起がされており、開発援助に携わる者・目指す人は必ず一読すべき。欧米の開発経済学者がリードしてきた開発援助論の世界にアフリカ人エコノミストとして一石を投じた点も評価できる。本書については賛否両論が百出しているが、個人的にはポール・コリアーの以下の書評が一番的を得ている、と思う。
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/reviews/dead-aid-by-dambisa-moyo-1519875.html
確かに援助がアフリカ政府の不透明さを助長してきた面はあるが、アフリカ諸国が完全にドナーの資金抜きで自国の開発を推し進められるかどうかは依然定かではないし、また現状では公的部門にしか成しえない技術協力（農業技術普及や医療・保健サービスの体制構築など）の意義も消えてはいまい。
ただ、本書をきっかけに、開発援助業界に対する眼がより厳しくなったのは良いこと。「援助がなくなるような世界が一番良い世界」であることを、改めて肝に銘じたい。
ときに自己満足に陥りがちな援助ワーカーの心理をきっちり捉え、本当に援助は必要なのか明確な問題提起がされており、開発援助に携わる者・目指す人は必ず一読すべき。欧米の開発経済学者がリードしてきた開発援助論の世界にアフリカ人エコノミストとして一石を投じた点も評価できる。本書については賛否両論が百出しているが、個人的にはポール・コリアーの以下の書評が一番的を得ている、と思う。
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/books/reviews/dead-aid-by-dambisa-moyo-1519875.html
確かに援助がアフリカ政府の不透明さを助長してきた面はあるが、アフリカ諸国が完全にドナーの資金抜きで自国の開発を推し進められるかどうかは依然定かではないし、また現状では公的部門にしか成しえない技術協力（農業技術普及や医療・保健サービスの体制構築など）の意義も消えてはいまい。
ただ、本書をきっかけに、開発援助業界に対する眼がより厳しくなったのは良いこと。「援助がなくなるような世界が一番良い世界」であることを、改めて肝に銘じたい。
（2009年1月発行、Penguin Books、未邦訳）
