浦沢 直樹 『MONSTER』
現代漫画界の巨匠・浦沢氏が世に放ったスリラー・サスペンス。西ドイツ・チェコなどを舞台に、かつて命を救った連続殺人鬼・ヨハンのルーツを、日本人の天才外科医・天馬が暴いていく様子を描いた長編。
雑誌掲載時にリアルタイムで読んでいたものの、今回再度全編を通読。
以前は、後半が若干間延びしていたことと、ヨハンの「怪物」たるルーツが冷戦下のチェコスロバキア秘密警察の兵士養成計画にあった、という「いかにも」な結末に、少々残念な思いを抱いたのも事実。
しかし今回再読してみて、それらのマイナス要因を差し引いたとしても、浦沢直樹が本作で見せた構成力に、改めて感嘆せざるを得なかった。前半部で周到に撒かれた複線が、最終巻で収束し、全ての謎が明らかになって行く様は見事。
本作の見所のひとつは、「人は、何にだってなれるんだよ」というフランツ・ボナパルタの言葉に象徴されるように、人はどこまで「怪物」になれるのか、「怪物」を前にして人は何ができるのか、ヨハンとニナという対照的な双子の描写を通じて浮き上がってくる人間心理の深層。読者の代理人として登場する天馬が、物語の最後に選んだ行動とは。未読の方は、休日の空き時間を利用してぜひ。下手なサスペンス小説よりは、よほど楽しめます。
雑誌掲載時にリアルタイムで読んでいたものの、今回再度全編を通読。
以前は、後半が若干間延びしていたことと、ヨハンの「怪物」たるルーツが冷戦下のチェコスロバキア秘密警察の兵士養成計画にあった、という「いかにも」な結末に、少々残念な思いを抱いたのも事実。
しかし今回再読してみて、それらのマイナス要因を差し引いたとしても、浦沢直樹が本作で見せた構成力に、改めて感嘆せざるを得なかった。前半部で周到に撒かれた複線が、最終巻で収束し、全ての謎が明らかになって行く様は見事。
本作の見所のひとつは、「人は、何にだってなれるんだよ」というフランツ・ボナパルタの言葉に象徴されるように、人はどこまで「怪物」になれるのか、「怪物」を前にして人は何ができるのか、ヨハンとニナという対照的な双子の描写を通じて浮き上がってくる人間心理の深層。読者の代理人として登場する天馬が、物語の最後に選んだ行動とは。未読の方は、休日の空き時間を利用してぜひ。下手なサスペンス小説よりは、よほど楽しめます。