Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

2009-01-01から1年間の記事一覧

長倉 洋海 『フォト・ジャーナリストの眼』

世界の紛争地でシャッターを押し続けるフォト・ジャーナリスト・長倉氏による回想録。戦乱時のエルサルバドルでゲリラとともに行動した経験や、今は亡きアフガニスタン北部同盟のマスード将軍とともに過ごした日々、フィリピン人の出稼ぎ労働者への取材体験…

あだち 充 『タッチ』

いわずと知れた1980年代ののベストセラー・コミック。これまでちゃんと読んだことがなかったので、このゴールデンウィークの間に改めて全巻読破。上杉達也・和也兄弟の甲子園への挑戦を、幼なじみの浅倉南をめぐる恋愛模様とともに描きます。 スポーツの才能…

ヴィカス・スワラップ 『ぼくと1ルピーの神様』

2008年アカデミー賞受賞『スラムドッグ$ミリオネア』の原作小説。インドの外交官スワラップ氏の処女作で、現在までに37カ国語に翻訳されているとのこと。映画を見に行く時間がなかなか取れなさそうなので原作の小説を買って週末に読んでしまいました。さす…

レフ・トルストイ 『人生論』

ロシアが誇る19世紀の文豪・トルストイが、生命や死について彼自身の考えをつづった論文。『戦争と平和』を読み始める前に読破。彼が晩年、人間が持つ理性の力をかたくななまでに信じていたことが分かります。 1.「人間の生命の根本的な矛盾」 トルストイ…

アーネスト・ヘミングウェイ 『誰がために鐘は鳴る』

20世紀アメリカ文学の巨匠・ヘミングウェイの長編小説。買ったまま未読だったものを休日中に読破。 舞台は1930年代のスペイン内戦。アメリカから来た共和政側の義勇兵・ロバートが、爆破工作の協力者であるゲリラの隠れ家にかくまわれていた女性・マリアと恋…

ローワン・ジェイコブセン 『ハチはなぜ大量死したのか』

2006年秋から2007年春にかけ、北半球から4分の1のミツバチが消えた。CCD(Colony Collapse Disorder、蜂群崩壊症候群)の原因について迫る、米国バーモント州在住のジャーナリスト・ジェイコブセン氏によるノンフィクション。 4つの付録「アフリカ化したミツ…

アルバート・カミュ 『ペスト』

フランスのノーベル文学賞受賞作家・カミュの長編小説。学生の時代に購入しておきっぱなしにしていたものを読破。 ペストに襲われた架空の北アフリカの町を舞台に、主人公の医師リウーをはじめとする町の人々が隔絶された町の中でいかに不条理の象徴たるペス…

塩野 七生 『ローマ亡き後の地中海世界』

『ローマ人の物語』で知られるローマ在住の作家・塩野氏による新著。西ローマ帝国崩壊後の千年間の地中海史を、上・下巻にわたって描きます。 上巻が300ページ強。下巻が400ページ弱。まず、これだけの枚数で1000年間の地中海史を描ききった手腕に素直に拍手…

中田 豊一 『人間性未来論 原型共同体で築きなおす社会』

近代化がもたらす「人間性の喪失と共同体の衰退」について、途上国の共同体が持つ「豊かな人間性」と対比させながら論じるエッセイ。著者は、途上国での開発支援を担うNGO・シャプラニールの代表理事などを務める中田氏。 「援助者の側がまず克服しなくては…

林 俊行 編 『国際協力専門員 技術と人々を結ぶファシリテータたちの軌跡』

JICA(国際協力機構)に所属する海外技術協力の専門家「国際協力専門員」12名によるエッセイ集。彼らが仕事を始めるに至ったきっかけ、技術協力の現場での仕事の内容、同業者に伝えたい「心がけ」について、濃いメッセージが350ページにわたって記されていま…

中谷 巌 『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』

一橋大学名誉教授、小泉構造化改革のブレーンとして知られた中谷氏による「懺悔の書」。同氏は、若き日にハーバード大学に留学、「古きよきアメリカ」の文化と気風に影響を受け、帰国後は日本の構造改革の理論的支柱として活躍。 この本は、資本主義の行き過…

日本経済新聞社 編 『実録・世界金融危機』

日本経済新聞で2008年12月に掲載された特集をベースに大幅に加筆修正された、現行の世界金融危機についての検証本。構成は少々粗いですが、危機の遠因と引き金、米国政府の対応策などについてコンパクトにまとめた、日経ならではの文庫本。危機の全体像を手…

ポール・クルーグマン 『世界大不況からの脱出』

プリンストン大学教授、ニューヨークタイムズ紙コラムニストのクルーグマン氏による新著。初版はアジア通貨危機後に出版され、今回出版された第二版は、2008年のリーマンショック後の危機に対する考察について大幅に加筆されたもの。 クルーグマン氏は、今回…

ポール・クルーグマン 『良い経済学 悪い経済学』

昨年ノーベル経済学賞を受賞、「ニューヨーク・タイムズ」の辛口コラムニストとしても知られる国際経済学者・クルーグマン氏が1990年代前半に公表した論文・エッセイをまとめた文庫本。「出版年が古い」と侮るなかれ。289ページの文章は、世界経済・米国経済…

NHK「新シルクロード」プロジェクト 編著 『新・シルクロード 激動の大地をゆく 上』

NHKのドキュメンタリーには、「さすが」と思わされる珠玉の作品が幾つもあります。最近では、今年はじめに完結した「沸騰都市」が秀逸。 今回紹介するのは、2007年に放映された「新シルクロード 激動の大地をゆく」の単行本の上巻。中央アジア、コーカサ…

ダウド・ハリ 『ダルフールの通訳 ジェノサイドの目撃者』

紛争真っ只中のダルフール地域において、CNNやBBCの取材クルーの通訳兼コーディネータとして活躍、世界に同地域の惨状を知らせる活動を続けるダウド・ハリ氏の回顧録。出身の村が政府系民兵に略奪されたエピソード、取材同行中に政府軍に身柄を拘束さ…

岩村 暢子 『変わる家族 変わる食卓 真実に破壊されるマーケティング常識』

広告代理店アサツーディ・ケイのプロジェクトを通じ、1960年以降生まれの主婦を対象として日本の家庭の食卓について調査を続けている岩村氏による同調査の報告。調査の対象となった食卓の数は2331。 『美味しんぼ』で紹介されていて思わず買ってしまった本で…

小菅 正夫 ほか 『戦う動物園 旭山動物園と到津の森公園の物語』

先月、うわさの旭山動物園に行ってきました。冬に行くのは初めてだったのですが、オオカミの遠吠えを生まれて初めて聞いたり、散歩するペンギンを間近で見たり、新しい発見や驚きがたくさんありました。雪がしんしんと降るなか、ペンギンやホッキョクグマは…

榊原 英資 『間違いだらけの経済政策』

元財務官で早大教授の榊原氏による新著。マクロ経済理論の限界や、ミクロの構造改革、農林水産業の振興、資源エネルギー分野での政府の役割強化、円高志向への転換などの必要性について、同氏の主張を簡潔にまとめた本。 1.マクロ経済理論の限界 榊原氏は…

瀬川 拓郎 『アイヌの歴史 海と宝のノマド』

先月北海道に旅行したときに、旭川市博物館で見つけた面白そうな本。思わず手にとってしまいました。 「アイヌ」と聞いて、「自然と共生しエコロジカルな社会を形成していた北海道の先住民」というイメージを自然と思い浮かべる人は、自分を含めて多いはず。…

山田 昌弘、白河 桃子 『「婚活」時代』

現代の晩婚化・非婚化の要因と実態に切り込み、「婚活」時代の到来を訴えるジャーナリストの白河氏によるルポに、家族社会学者の山田教授による社会学的な分析を加えた新書。 例によって気になったキーワードを幾つか↓ 1.「オットセイ型」社会 : 彼女が結…

竹中 平蔵 『闘う経済学 未来をつくる〔公共政策論〕入門』

慶應の竹中教授による「政策と経済学の隙間を埋める」試みとして書かれた本。郵政民営化担当大臣等の公職にあった当時の回顧録としても読める内容。 「経済学の理論・知見をいかに実際の政策に生かすか」、竹中氏が長年突き詰め実践してこられた考えの一端を…

塩野 七生 『痛快!ローマ学』

最近、学生時代に買ったものの読みきれていなかった本を次々に消化中。 今回取り上げるこの本は、2002年に出版されたローマ在住の作家・塩野氏による古代ローマ史ガイド。ローマの黎明期から帝政期、パクスロマーナの確立まで。同氏による大著『ローマ人の物…

桃井 和馬 『観光コースでないアフリカ大陸西海岸』

フォトジャーナリストの桃井氏によるアフリカ西海岸10カ国のルポルタージュ。会社の同僚に借りっぱなしにしてあったものを読了。 タイトルを見てあまり期待しないで読み始めたものの(すみません)、アフリカ各国の社会経済、人々の暮らしがさまざまな側面か…

高橋 作太郎 『アメリカ精神の英語』

元東京外語大学副学長の高橋先生による「アメリカ精神を知るため」の英文テクスト集。 高校時代に父親にもらったものをずっと持ち続けておりオバマ大統領の就任式をCNNで見ていてちょうど本棚の隅に視界に入り、文字通り「アメリカ精神を知るため」に、読ん…

クロード・ランズマン 『SHOAH(ショアー)』

ヘブライ語で「絶滅、破滅」を意味する「ショアー」をタイトルに冠するランズマン監督の映画の全テクスト。ナチス・ドイツのホロコーストが主題。映画は、体験者に対するインタビュー記録のみで構成されており、実に9時間半にも及ぶ長さとのこと。 この本は…

ジョン・パーキンス 『エコノミック・ヒットマン』

1970年代に米国コンサルタント会社・メーン社に勤めたパーキンス氏によるノンフィクション。世界銀行やUSAID(米国援助開発庁)が実施する調査・融資案件に携わった経験をもとに、電力・道路・通信などの分不相応なインフラ案件を途上国政府から米国企業に発…

飯倉 晴武 『日本人のしきたり』

正月行事、豆まき、大安吉日、Etc.. 知っているようで案外知らないさまざまな「しきたり」について、「なぜそう決まっているのか」を含めて項目ごとに簡潔に教えてくれる本。 著者は、元宮内庁書陵部主席研究官で奥羽大学文学部教授の飯倉先生。 会社の大先…

綱本 将也、ツジトモ 『GIANT KILLING』

「サッカー監督マンガ」という新しいジャンルを開拓したに違いない、凄いマンガが出てきました。週末にマンガ喫茶であっという間に全巻読破。 イングランド・FAカップで伝説を作ったJリーグ最年少監督・達海猛が、弱小クラブ「ETU(イースト・トーキョー・…

佐高 信 『わたしを変えた百冊の本』

『日本官僚白書』などで知られる評論家・佐高氏が自身の読書遍歴についてつづった本。 佐高さんは大学卒業以来、毎年160冊のペースで本を読み続けていたらしい。1982年に『就職ジャーナル』誌で語られたところによると、「佐高の最大の武器は読書量である」…