Foomin Paradise (読書ブログ)

経済や歴史、フィクションを中心に読んでいます。500冊までもう少し。

山田 昌弘、白河 桃子 『「婚活」時代』

 現代の晩婚化・非婚化の要因と実態に切り込み、「婚活」時代の到来を訴えるジャーナリストの白河氏によるルポに、家族社会学者の山田教授による社会学的な分析を加えた新書。
 例によって気になったキーワードを幾つか↓


1.「オットセイ型」社会 : 彼女が結婚できない理由

 白河氏は、95%の人が一度は結婚を経験したかつての日本を「オシドリ型社会」、大勢の女性が一部の魅力的な男性に群がる現代の社会を「オットセイ型社会」と呼んでいる。
 たいして魅力的ではない男性との結婚を強いられることが少なくなった現代。他方で、「男はいるが、いい男はいない」、「もともと魅力的な男性は一定数しかいない」という冷徹な現実が世の女性の目の前に浮き上がってきた格好。
 「女性たちよ、狩りに出よ」が本書のメッセージのひとつ。


2.盲目な「ファンタジー」 : 彼が結婚できない理由

 白河氏は、女性の男性への経済力へのこだわりを「現実に立脚」しているとする一方、男性の女性への外見と年齢へのこだわりを「ファンタジー」とばっさり切って捨てている。
 一方、山田氏は「女性が考えているほど、女性を美人度で選んでいるわけではない」と、もう少し冷静な意見。
 「男性たちよ、自分を磨け」というのが本書のもうひとつのメッセージ。


3.「タスク婚」 : ライフスタイルのすり合わせ

 白河氏が最近取材したカップルは、「タスク婚」といって結婚の計画についてのタスクリストを嬉々として作っていたという。経済的な制約を踏まえて、お互いの仕事上のキャリアプランや出産や育児休暇のタイミングについて、価値観をすり合わせていく作業。「それができないと、結婚はできなかったり、うまくいかなかったりすることになる(山田氏)」時代が来ている。
 山田氏によれば、①経済環境の変化、②自己実現意識の高まり、③交際機会の拡大、から若年層の晩婚化・未婚化は進展する一方。
 結婚に何を求めるのか、パートナーに求めるものは何なのか。個人の価値観がいっそう多様化するなか、平たく言ってしまえば、「何でもお互いに話し合うカップルが幸せにゴールインできる」、ということか。
 
                            (ディスカヴァー携書、2008年3月発行)


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